6.1 運航リスクの評価及び最適な運航の計画の立案の基礎【教則学習】
2023年1月19日
2024年4月16日
6. 運航上のリスク管理 6.1 運航リスクの評価及び最適な運航の計画の立案の基礎
令和6年(2024年)4月14日(日)以降に無⼈航空機操縦士の学科試験を受験される方は下記の「第3版」をご覧ください。
6.1 運航リスクの評価及び最適な運航の計画の立案の基礎【教則学習(第3版)】
教則の本文を黒色に、独自に追記した補足説明や注釈を別色で記載しています。
6.1.1 安全に配慮した飛行
無人航空機の飛行にあたっては、法令等に基づく基準や要件に適合させるのは当然だが、様々な要素により、飛行中、操縦が困難になること、又は予期せぬ機体故障等が発生する場合があることから、運航者は運航上の「リスク」を管理することが安全確保上非常に重要である。
すなわち、運航者は行おうとする運航の形態に応じ、事故等につながりかねない危険性のある要素(ハザード)を具体的に可能な限り多く特定し、それによって生じる「リスク」を評価したうえで、「リスク」の発生確率を低減させたり、「リスク」の結果となる被害を軽減したりする措置を講じることで、「リスク」を許容可能な程度まで低減する必要がある。
このようなリスク管理の考え方は、特にカテゴリーⅢ飛行において重要となるが、その他の飛行においても十分に理解したうえで、安全に配慮した計画や飛行を行うことが求められる。
(1) 安全確保のための基礎
1) 安全マージン
飛行を行う際は、原則として飛行空域に安全マージンを加えた範囲で実施する。
● 飛行経路を考慮し、周辺及び上方に障害物がない水平な場所を離着陸場所と設定する。
● 緊急時などに一時的な着陸が可能なスペースを、前もって確認・確保しておく。
● 飛行領域に危険半径(高度と同じ数値又は 30mのいずれか長い方)を加えた範囲を、立入管理措置を講じて無人地帯とした後、飛行する。
2) 飛行の逸脱防止
飛行の逸脱を防止するためには、以下の事項を行うことが有効である。
● ジオフェンス機能を使用することにより、飛行禁止空域を設定する。
● 衝突防止機能として無人航空機に取り付けたセンサを用いて、周囲の障害物を認識・回避する。
3) 安全を確保するための運航体制
安全マージン
安全性を確保するために持たされている余裕やゆとり、幅のことを言います。
危険半径(高度と同じ数値又は 30mのいずれか長い方)
飛行している機体(飛行させる予定)の直下から高度分と同じ距離分の半径の円内を危険なエリアとして扱う事を示しています。
高度が30m以下の場合も危険半径は変わらず30mです。高度が30mを超えると高度=危険半径になります。通常は垂直に上昇するだけでなく上空で動き回ると思います。その移動エリアがある場合そのエリアの直下から危険半径をプラスしたエリアが危険なエリアになります。
ジオフェンス[Geo-fence]
GPSやRFID、Wi-Fi、Bluetoothなどを使い、特定の場所の周辺に仮想の境界線を設ける。ユーザーの所有するモバイル端末がその仮想境界内に出入りしたときに、アプリやソフトウェアでアクションを実行するといった活用ができる。例えば自店舗周辺エリアをジオフェンスとして設定し、ユーザーがジオフェンス内に入るとメッセージ送信やクーポンを表示する、といったアクション(広告)を自動で実施する事ができます。スマートフォンなどのモバイル端末へ向けた広告手法として注目されています。この技術を使えば、行動範囲としてあらかじめ設定したフェンスの外に子供が行くと自動的に親にメールを送信することもできます。このような、モバイルアプリでの活用の他に、運輸業界での車両管理や畜産業界での家畜の管理などでも活用されています。また、劇的に広い意味で言うとお掃除ロボット ルンバの脱走を避けるために設置するデュアルバーチャルウォールもジオフェンスと言えなくもないと思います。利用している技術は異なりますが、やってることは、ドローンのジオフェンス機能と同じ事だと言えます。
ドローンの飛行領域の管理で、利用されるジオフェンス機能は、機体メーカーやソフトによって違いがありますが、一般的にはドローンのコントロールで利用されるプログラムで、あらかじめ地図上で飛行可能エリアを設定する事によって、そのエリアの内側から出ようとすると、あたかもフェンスがあるようにドローンが通過できないようにします。また、逆に飛行禁止エリアを設定し、そのエリアに入れないようにすることや、設定したポイントから半径何メートル以上離れないようにするなどで、仮想のフェンスを利用した飛行領域の管理を行う事ができるようになっています。
ドローンの飛行領域の管理で、利用されるジオフェンス機能は、機体メーカーやソフトによって違いがありますが、一般的にはドローンのコントロールで利用されるプログラムで、あらかじめ地図上で飛行可能エリアを設定する事によって、そのエリアの内側から出ようとすると、あたかもフェンスがあるようにドローンが通過できないようにします。また、逆に飛行禁止エリアを設定し、そのエリアに入れないようにすることや、設定したポイントから半径何メートル以上離れないようにするなどで、仮想のフェンスを利用した飛行領域の管理を行う事ができるようになっています。
(2) カテゴリーⅢ飛行において追加となる重要事項について〔一等〕
1) 想定飛行空間と想定外飛行空間
想定飛行空間は、無人航空機の飛行の目的や、機体やシステムの性能、環境に応じて設定される飛行範囲である。機体や外部システムの異常・外乱の影響で想定飛行空間を外れて飛行してしまうことに備える空間として想定外飛行空間を設定する。
無人航空機の運航が正常に制御できている正常運航時は、標準運航手順に従って飛行を行う。機体や外部システムの異常・外乱の影響で想定飛行空間から外れてしまうおそれ、又は外れてしまった異常事態では、直ちに異常対応手順へと移る。想定外飛行空間は異常対応手順により想定飛行空間へと復旧するのに必要な飛行空間である。
飛行の地上リスクを検討する際には、想定飛行空間だけでなく、想定外飛行空間さらに安全マージンとしての地上リスク緩衝地域を合わせた範囲を検討し、そのリスクを一定の範囲まで低減するように計画する。飛行の空中リスクを検討する際には、想定飛行空間だけでなく、想定外飛行空間さらに任意で空中リスク緩衝地域を合わせた範囲を検討し、そのリスクを一定の範囲まで低減するように計画する。
隣接領域について、無人航空機が制御不能な形で侵入してしまった場合に高いリスクが想定される場合には、隣接領域に侵入しないための対策を検討する必要がある。
2) 安全確保措置に必要とされる安全性の水準、保証の水準
カテゴリーⅢ飛行は地上リスク、空中リスク共に高いことが想定されるため、飛行可否判断は安全確保措置により得られる安全性の水準(安全の増加)と、計画されている安全性の確保が確実に実施されることを示す保証の水準(証明の方法)の双方により評価されるべきである。
例えば、第三者への衝突の衝撃を抑える措置を計画する際、その措置の有効性は、衝突軽減の効果について安全性の水準と、その措置が必要な際に機能するかについて保証の水準の双方で、評価又は計画されるべきである。
安全確保措置に必要とされる安全性の水準、保証の水準は、いずれもその運航形態の持つリスクに応じて検討される。
6.1.2 飛行計画
(1) 飛行計画策定時の確認事項について
飛行計画では、無人航空機の飛行経路・飛行範囲を決定し、無人航空機を運航するにあたって、自治体など各関係者・権利者への周知や承諾が必要となる場合がある。離着陸場は人の立ち入りや騒音、コンパスエラーの原因となる構造物がないかなどに留意する。飛行経路の設定は高圧電線などの電力施設が近くにないか、緊急用務空域に当たらないか、ドクターヘリなどの航空機の往来がないかなどを考慮に入れる必要がある。着陸予定地点に着陸できないときに、離陸地点まで戻るほどの飛行可能距離が確保できないなどのリスクがある場合、別途事前に緊急着陸地点を確保しておくべきである。
飛行計画の全ての工程において安全管理が優先され、離陸前、離陸時、計画経路の飛行、着陸時、着陸後の状況に応じた安全対策を講じ、飛行の目的を果たす飛行計画の策定が求められる。
飛行計画策定時は、機体の物理的障害や飛行範囲特有の現象、制度面での規制、事前に予想しうる状況の変化などを想定した確認事項の作成が求められる。
予定される飛行経路や日時において緊急用務空域の発令など、一時的な飛行規制の対象空域の該当となっていないかなど計画策定時に確認する必要がある。
緊急用務空域の発令
令和3年6月1日以降、災害等の規模に応じ、捜索、救助等活動のため緊急用務を行う航空機の飛行が想定される場合に、ドローン・ラジコン機等の飛行が原則禁止される『緊急用務空域』が新たに指定される様に法令が変更されました。この規制対象は 100g 以上の無人航空機に限らず、すべての機体が対象ですので注意が必要です。
緊急用務空域の発令があった場合 航空局のWEBサイトで発表されます。
以下にリンクします。
緊急用務空域の公示 現在の緊急用務空域の指定状況について
以下にリンクします。
緊急用務空域の公示 現在の緊急用務空域の指定状況について
(2) 事故・インシデントへの対応について
無人航空機の運航中に万が一事故やインシデントが発生した場合を想定し、事前に緊急連絡先を定義しておく。負傷者や第三者物件への物損が発生した場合は人命救助を最優先に行動し、速やかに消防署や警察に連絡する。
インシデント[incident]
インシデントという語は日本語においては航空・鉄道、医療、情報セキュリティの分野などで危機管理の用語としてよく用いられます。このインシデントという言葉は、使われる業界・領域によってニュアンスが変わってきます。
インシデント[incident]
インシデントという語は日本語においては航空・鉄道、医療、情報セキュリティの分野などで危機管理の用語としてよく用いられます。このインシデントという言葉は、使われる業界・領域によってニュアンスが変わってきます。
社会セキュリティに関する用語を定義するISOのISO22300、それを引用したJIS Q 22300:2013 ではインシデントとは
「中断・阻害、損失、緊急事態、危機に、なり得るまたはそれらを引き起こし得る状況」
と定義されています。
航空業界では、航空法第76条の2において、「航行中に他の航空機との衝突・接触の恐れがあった場合」と、「事故が発生するおそれがあると認められる国土交通省令で定める事態が発生したと認めたとき」には機長が国土交通大臣に報告することが義務付けられており、この報告義務が発生する事態を重大インシデントとして定義されています。
重大インシデントに関連する航空法と施行規則を以下に引用します。
インシデントの他にアクシデント[accident]なども事故・事件に関する語としてよく用いられますが、アクシデントは「不慮の事故」や「不意に発生する災難」といった意味の言葉で、事故・災難・損害が実際に生じてしまった状況に軸が置かれています。インシデントは、アクシデントに至りかねなかった手前の状況を表しています。
(3) カテゴリーⅢ飛行のリスク評価結果による追加点検について〔一等〕
と定義されています。
航空業界では、航空法第76条の2において、「航行中に他の航空機との衝突・接触の恐れがあった場合」と、「事故が発生するおそれがあると認められる国土交通省令で定める事態が発生したと認めたとき」には機長が国土交通大臣に報告することが義務付けられており、この報告義務が発生する事態を重大インシデントとして定義されています。
重大インシデントに関連する航空法と施行規則を以下に引用します。
航空法第六章 航空機の運航第七十六条の二 機長は、航行中他の航空機との衝突又は接触のおそれがあつたと認めたときその他前条第一項各号に掲げる事故が発生するおそれがあると認められる国土交通省令で定める事態が発生したと認めたときは、国土交通省令で定めるところにより国土交通大臣にその旨を報告しなければならない。航空法施行規則第六章 航空機の運航(事故が発生するおそれがあると認められる事態の報告)第百六十六条の四 法第七十六条の二の国土交通省令で定める事態は、次に掲げる事態とする。一 次に掲げる場所からの離陸又はその中止
- イ 閉鎖中の滑走路
- ロ 他の航空機等が使用中の滑走路
- ハ 法第九十六条第一項の規定により国土交通大臣から指示された滑走路とは異なる滑走路
- ニ 誘導路
二 前号に掲げる場所又は道路その他の航空機が通常着陸することが想定されない場所への着陸又はその試み三 着陸時において発動機覆い、翼端その他の航空機の脚以外の部分が地表面に接触した事態四 オーバーラン、アンダーシュート及び滑走路からの逸脱(航空機が自ら地上走行できなくなつた場合に限る。)五 非常脱出スライドを使用して非常脱出を行つた事態六 飛行中において地表面又は水面への衝突又は接触を回避するため航空機乗組員が緊急の操作を行つた事態七 発動機の破損(破片が当該発動機のケースを貫通した場合に限る。)八 飛行中における発動機(多発機の場合は、二以上の発動機)の継続的な停止又は出力若しくは推力の損失(動力滑空機の発動機を意図して停止した場合を除く。)九 航空機のプロペラ、回転翼、脚、方向舵だ、昇降舵だ、補助翼又はフラップが損傷し、当該航空機の航行が継続できなくなつた事態十 航空機に装備された一又は二以上のシステムにおける航空機の航行の安全に障害となる複数の故障十一 航空機内における火炎又は煙の発生及び発動機防火区域内における火炎の発生十二 航空機内の気圧の異常な低下十三 緊急の措置を講ずる必要が生じた燃料の欠乏十四 気流の擾じよう乱その他の異常な気象状態との遭遇、航空機に装備された装置の故障又は対気速度限界、制限荷重倍数限界若しくは運用高度限界を超えた飛行により航空機の操縦に障害が発生した事態十五 航空機乗組員が負傷又は疾病により運航中に正常に業務を行うことができなかつた事態十六 物件を機体の外に装着し、つり下げ、又は曳航している航空機から、当該物件が意図せず落下し、又は緊急の操作として投下された事態十七 航空機から脱落した部品が人と衝突した事態十八 前各号に掲げる事態に準ずる事態
この様に、人的要因だけでなく、気象要因や機体故障など、事故だけではなく、事故には至らないものの、事故が発生する恐れがあったと認められるものも重大インシデントとして報告義務があります。これは、インシデントを報告させることで、情報を共有し、飛行の安全に生かすことも目的とされています。責任の追及だけが目的ではないという事です。
インシデントの他にアクシデント[accident]なども事故・事件に関する語としてよく用いられますが、アクシデントは「不慮の事故」や「不意に発生する災難」といった意味の言葉で、事故・災難・損害が実際に生じてしまった状況に軸が置かれています。インシデントは、アクシデントに至りかねなかった手前の状況を表しています。
(3) カテゴリーⅢ飛行のリスク評価結果による追加点検について〔一等〕
ジオフェンス機能による安全確保により第一種機体認証を得た機体の場合、カテゴリーⅢ飛行において確実に実施すべきジオフェンス設定(範囲や形状)の主な点検事項の例は、以下の通りである。
● 当日の他の航空機との空域調整結果が反映されていること
(4) カテゴリーⅢ飛行において追加となる安全確保について〔一等〕
第三者の上空で不測の事態が発生した際に、機体が直ちに落下することがない様に行う安全確保の例として、以下の事項が挙げられる。
● 必要最低限の数より多くのプロペラ及びモーターを有するなど、適切な冗長性を備えた機体を使用する
● パラシュートを展開するなど、落下時の衝撃エネルギーを軽減できる機能を有する機体を使用する
冗長性(じょうちょうせい)
一般的に「冗長」と言うとネガティブな意味、「無駄が多く不必要に長いこと」を指しますが、「冗長性」は工業系のコンピューターシステムや建築などの分野でも用いられる言葉で「予備や余裕」を表すポジティブな言葉です。
ここで言われている冗長性は、マルチコプターのローターの数を増やす理由の一つになっている物です。クワッドコプターのロータが一つ故障した場合、機体の最低限の機体性能を維持することが困難になりますが、ペンタコプターやオクトコプターのロータが故障した場合、故障したロータの機能を他の正常なロータが肩代りすることで、最低限の機体性能を維持することができます。これを、冗長性を持たせていると表現します。ただし、ローター数が増えることで、コストが増えたり、重量が増すことによって、飛行時間が短くなる可能性などがありますので、冗長性とコストや飛行時間、機体の落下時のリスクとの兼ね合いにもなります。これが、全てのマルチコプターがペンタコプターやオクトコプターでなく、クワッドコプターが存在している理由の一つです。
冗長性(じょうちょうせい)
一般的に「冗長」と言うとネガティブな意味、「無駄が多く不必要に長いこと」を指しますが、「冗長性」は工業系のコンピューターシステムや建築などの分野でも用いられる言葉で「予備や余裕」を表すポジティブな言葉です。
ここで言われている冗長性は、マルチコプターのローターの数を増やす理由の一つになっている物です。クワッドコプターのロータが一つ故障した場合、機体の最低限の機体性能を維持することが困難になりますが、ペンタコプターやオクトコプターのロータが故障した場合、故障したロータの機能を他の正常なロータが肩代りすることで、最低限の機体性能を維持することができます。これを、冗長性を持たせていると表現します。ただし、ローター数が増えることで、コストが増えたり、重量が増すことによって、飛行時間が短くなる可能性などがありますので、冗長性とコストや飛行時間、機体の落下時のリスクとの兼ね合いにもなります。これが、全てのマルチコプターがペンタコプターやオクトコプターでなく、クワッドコプターが存在している理由の一つです。
6.1.3 経路設定
(1) 飛行経路の安全な設定について
飛行経路は、無人航空機が飛行する高度と経路において、障害となる建物や鳥などの妨害から避けられるよう設定する。障害物付近を飛行せざるを得ない経路を設定する際は機体の性能に応じて安全な距離を保つように心がける。
操縦者の目視が限界域付近となる飛行では、付近の障害物との距離差が曖昧になりやすいため、事前に飛行経路付近の障害物との距離を現地で確認し、必要と判断した場合は補助者を配置することが望ましい。
(2) カテゴリーⅢ飛行において追加となる経路設定の注意点について〔一等〕
カテゴリーⅢ飛行では、墜落を想定し可能な範囲で人が立ち入りにくい飛行経路を設定する。また、飛行経路上で異常運航と判断した際の緊急着陸地点や不時着エリアを予め設定する。
機体に備わるフェールセーフ機能の発動と安全対策は、事前に機能動作及び対策手順を確認する。
6.1.4 無人航空機の運航におけるハザードとリスク
無人航空機の運航において、「ハザード」は事故等につながる可能性のある危険要素(潜在的なものを含む。)をいう。「リスク」は無人航空機の運航の安全に影響を与える何らかの事象が発生する可能性をいう。発生事象のリスクは、予測される頻度(被害の発生確率)と結果の重大性(被害の大きさ)により計量する。
6.1.5 無人航空機の運航リスクの評価
無人航空機の飛行にあたって、リスク評価とその結果に基づくリスク軽減策の検討は安全確保上非常に重要である。
すなわち、運航形態に応じ、事故等につながりかねない具体的な「ハザード」を可能な限り多く特定し、それによって生じる「リスク」を評価したうえで、リスクを許容可能な程度まで低減する。リスクを低減するためには、①事象の発生確率を低減するか、②事象発生による被害を軽減するか、の両方を検討したうえで必要な対策をとる。例えば、機材不具合というハザードによる墜落というリスクに対しては、機材不具合の可能性を低減するために信頼性の高い機材を使用(上記①)したり、墜落時にパラシュートにより地上の被害を低減(上記②)したりなどの対策が考えられる。
リスクの評価、軽減、管理方法については、代表的なものとして ICAO(国際民間航空機関)のSafety Management Manual (Doc 9859)や Joint Authorities for Rulemaking of Unmanned Systems (JARUS)の Specific Operations Risk Assessment (SORA)等があり、これを理解しておくことは有用である。
ICAO(国際民間航空機関)の 安全管理マニュアル Safety Management Manual (Doc 9859)
有人航空機の安全管理マニュアルですので、全てが適応されるわけではありませんが、空物のくくりで共通点が多いので参考に薦められています。また、無人航空機分野での議論が行われていますが、ICAOの提唱する厳しい安全基準をそのまま適用することは、無人航空機の利用促進を阻害するのではないかとの議論もあるようです。ただ、これは安全管理マニュアルや、付属書19をないがしろにするのではなく、無人航空機に適した安全管理の基準が今現在、検討・研究されている途中の過程にあるという事ではないでしょうか。
安全管理マニュアルの無料で公開されている2013年の第3版です。最新のものでは、ないのですが、どのような物なのを見てみるのには役立つものだと思いますのでリンクします。
安全管理マニュアルの元
安全管理マニュアルは、ICAOが作成した安全管理基準の文章「付属書19 ‐ 安全管理(
安全管理マニュアルは、ICAOが作成した安全管理基準の文章「付属書19 ‐ 安全管理(
Annex 19 - Safety Management)」に基づいて、作成されていますので、このAnnex 19も参考になる物だと思います。2016年に第2版が出ています。Internet Archiveで見ることができます。
付属書19 ‐ 安全管理(Annex 19 - Safety Management)とは
航空交通量の大幅に増加に対応するために、安全管理の見直しが検討され、この大幅な容量拡大を慎重に管理し、戦略的な規制とインフラの開発を通じて可能にするために、安全リスクに、積極的に対処する必要があると結論づけられました。
航空交通量の大幅に増加に対応するために、安全管理の見直しが検討され、この大幅な容量拡大を慎重に管理し、戦略的な規制とインフラの開発を通じて可能にするために、安全リスクに、積極的に対処する必要があると結論づけられました。
2010年に開催された安全ハイレベル会議で、国の安全管理責任とプロセスに関する新しい附属書が推奨され、ICAO理事会で2013年2月に附属書19「安全管理」として採択されました。新附属書は、他の6つのICAO付属書に含まれていた既存の包括的な安全管理規定を統合し、一冊の付属書に整理されたものでた。安全管理に関する附属書は、ICAOの新附属書としては30年以上ぶりに採択されたものでした。その後、2016年に改正され、採択されました。既存の原則に基づき、再編成が行われています。
JARUSは、世界各国の有志国の航空当局において、ICAO で対象外のものも含めた無人機システムに関する国際規則づくりについて議論するため発足した組織で、現在、63カ国と欧州航空安全機関(EASA)および欧州航空航法安全機構(EUROCONTROL)が参加しているそうです。
JARUSのオフィシャルサイトに公開されている文章です。
欧州コックピット協会[ECA:European Cockpit Association] (欧州のパイロットの団体)が公表しているSORAについての見解がわかりやすいと思いリンクしておきます。JARUSの見解ではなく、特定のステークホルダーの見解なので偏りがあるかもしれませんが、十分参考になりそうです。
Specific Operations Risk Assessment (SORA) | European Cockpit Association
リスクの評価、軽減、管理方法については、難しい内容の為、解説をするにはかなり大変なものだと思います。重要な項目でもあり慎重に学習すべきなので、詳細を改めて、まとめて行きたいです。まずは、学習のガイドになる参考文献がどのような物かをまとめました。
JARUSのオフィシャルサイトに公開されている文章です。
Specific Operations Risk Assessment (SORA)
下記の様に複数の文章が公開されています。
エグゼクティブサマリー 要旨
下記の様に複数の文章が公開されています。
エグゼクティブサマリー 要旨
特定運用リスク評価(SORA)に関するJARUSガイドライン
SORA付属書Aに関するJARUSガイドライン - 特定のUAS運用のためのシステム及び運用情報の収集と提示
SORA付属書Bに関するJARUSガイドライン - 本来の地上リスククラスを軽減するために使用する緩和策の完全性と保証レベル
SORA付属書Cに関するJARUSガイドライン - 戦略的緩和衝突リスク評価
SORA付属書Dに関するJARUSガイドライン - 戦術的緩和の衝突リスク評価
SORA付属書Eに関するJARUSガイドライン - 運用上の安全目標(OSO)の完全性と保証レベル
SORAに関するJARUSガイドライン付属書I - 用語集
欧州コックピット協会[ECA:European Cockpit Association] (欧州のパイロットの団体)が公表しているSORAについての見解がわかりやすいと思いリンクしておきます。JARUSの見解ではなく、特定のステークホルダーの見解なので偏りがあるかもしれませんが、十分参考になりそうです。
Specific Operations Risk Assessment (SORA) | European Cockpit Association
リスクの評価、軽減、管理方法については、難しい内容の為、解説をするにはかなり大変なものだと思います。重要な項目でもあり慎重に学習すべきなので、詳細を改めて、まとめて行きたいです。まずは、学習のガイドになる参考文献がどのような物かをまとめました。
6.1.6 カテゴリーⅢ飛行におけるリスク評価〔一等〕
無人航空機が制御不能な状態に陥った時、人と衝突し、重大な障害を引き起こす可能性がある。
運航者は、飛行計画上の地上又は水上の人が無人航空機により受けるおそれがある被害に関する安全リスク(地上リスク)の把握を行い、リスクに曝される第三者の人数及び衝突の際の人に与える衝撃を減らすための適切な措置の実施と、無人航空機が制御不能になった場合に備えて設定する緊急事態への対応手順及び計画の有効性について確認する必要がある。また、無人航空機と有人航空機との空中衝突に関する安全リスク(空中リスク)についても把握を行い、衝突を回避するための適切な措置等を実施することも必要である。
運航者は、無人航空機の運航における地上リスク及び空中リスクついてのリスク評価(安全な運航の計画、リスク分析と評価、リスク軽減策の実施、飛行の実施等)を行う必要がある。
(1) カテゴリーⅢ飛行の飛行経路によるリスク評価について〔一等〕
カテゴリーⅢ飛行を行う場合の飛行経路については、経路下にどれくらい第三者が存在する可能性があるのか、機体に不具合が発生した場合等に地上の第三者がどれくらいリスクに曝されるのか、経路上において有人航空機の飛行が想定されるのかなどを評価し、その結果に基づき、飛行経路を設定するとともにリスク軽減策を講じる必要がある。
(2) カテゴリーⅢ飛行の電波環境によるリスク評価について〔一等〕
カテゴリーⅢ飛行を行う場合であって、携帯電話事業者の無線通信ネットワークを利用して操縦を行うときは、電波環境についてのリスク評価を行い、その結果に基づき、携帯電話事業者が定める手続きを行った上で使用することとし、複数事業者のネットワークを使用することによる通信系統の冗長化や携帯電話事業者の通信可能エリアに飛行経路が確実に含まれるように設定するなど運航形態に応じた安全対策を講じる必要がある。カテゴリーⅡの目視外飛行を行う際にもリスクによっては同様の措置が求められる。
(3) カテゴリーⅢ飛行の使用機体の機能と性能によるリスク評価について〔一等〕
使用する無人航空機については、第一種機体認証を受けた機体を使用することに加えて、当該機体認証に係る無人航空機の使用の条件や無人航空機飛行規程の限界事項などの機体の機能及び性能が、行おうとする運航形態に応じたものになっていることについてリスク評価を行い、その結果に基づき、リスク軽減策を講じる必要がある。
(4) カテゴリーⅢ飛行の運航体制によるリスク評価について〔一等〕
カテゴリーⅢ飛行を行う場合にリスク評価を行うに当たって、その結果に基づき、リスク軽減策を講ずる必要があるが、当該リスク軽減策を講ずるために必要な運航体制を構築しなければならない。
例えば、操縦者については、一等無人航空操縦士の技能証明を受けていることに加えて、行おうとする運航形態に適切な者であることや緊急事態への対応等について訓練を受けていることが求められる。
また、操縦者だけでなく運航に必要な補助者等を含めた協力体制の構築も必要な場合も考えられる。
(5) リスク軽減策を反映した最適な運航の計画〔一等〕
運航者(運航に安全管理責任を持つ者、操縦者も含まれる。)は、無人航空機の運航における地上リスク及び空中リスクついてのリスク評価を行い、その結果に基づくリスク軽減策を運航の計画に適切に反映することにより最適な運航の計画を立案し、飛行の安全を確保する必要がある。
←5.4 安全な運航のための意思決定体制(CRM 等の理解)
「無人航空機の飛行の安全に関する教則」 令和4(2022)年11月2日第2版【教則学習】目次
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