航空機の飛行方式 計器飛行方式(IFR)と有視界飛行方式(VFR)【教則学習・詳細】
2023年2月6日
2023年2月12日
3.1 航空法全般【教則学習】で触れられている、計器飛行方式(IFR) と 有視界飛行方式(VFR) について詳しくまとめました。
計器飛行方式(IFR:Instrumental Flight Rules)と 有視界飛行方式(VFR:Visual Flight Rules)
航空機の飛行する方式には、
計器飛行方式(IFR:Instrumental Flight Rules)と 有視界飛行方式(VFR:Visual Flight Rules)と呼ばれる2つの飛行方式が存在します。
計器飛行方式(IFR)は一般的に高高度を飛行する、旅客航空機などが行っている飛行方式です。一方、有視界飛行方式(VFR)は比較的低空を飛行する、民間の小型航空機やヘリコプターでの航空写真撮影や遊覧飛行、報道活動や、ドクターヘリや防災ヘリなどの、緊急活動など、また無人航空機もこの飛行方式で飛行していると言えます。
計器飛行方式(IFR)は、計器のみに依存し行う飛行(計器飛行)だと、誤解されがちですが、必ずしも計器飛行(航空機の位置、姿勢、針路等の測定を計器のみに依存して行う飛行 ) とは限りません。計器飛行方式は計器飛行を行う方式ではなく計器飛行も用いて管制官の指示に従い飛行していくことを表しているという事です。
計器飛行方式(IFR)は、航空機の飛行経路や飛行の方法について常時航空交通管制の指示を受けつつ飛行すること表しています。視界が悪いコンディションで、IFRでは離陸から着陸まで管制機関の管理下で飛行することになります 。
有視界飛行方式(VFR)は、有視界飛行状態(VMC)と呼ばれる一定の気象条件下において、原則として航空交通管制の指示を受けずにパイロットが独自の判断で、他機や障害物を視認し、衝突を回避しながら飛行することを言います。ただし、特別管制空域または航空交通管制圏内を飛行するときは管制官の指示に従わなければいけません。
計器飛行方式(IFR)は、航空機の飛行経路や飛行の方法について常時航空交通管制の指示を受けつつ飛行すること表しています。視界が悪いコンディションで、IFRでは離陸から着陸まで管制機関の管理下で飛行することになります 。
有視界飛行方式(VFR)は、有視界飛行状態(VMC)と呼ばれる一定の気象条件下において、原則として航空交通管制の指示を受けずにパイロットが独自の判断で、他機や障害物を視認し、衝突を回避しながら飛行することを言います。ただし、特別管制空域または航空交通管制圏内を飛行するときは管制官の指示に従わなければいけません。
計器飛行方式(IFR)は、決まったルートを決まったようになぞって飛行し、 管制官から指示に従う飛行方式という事です。
IFR飛行中の航空機は、レーダー管制室の管制官からレーダー画面で常に監視されていますので、そのレーダー画面を見ながら
IFR飛行中の航空機は、レーダー管制室の管制官からレーダー画面で常に監視されていますので、そのレーダー画面を見ながら
「Turn left heading 300.」(左旋回して磁針路300度で飛行して下さい。)や、
「Climb and maintain flight level 180.」(上昇し、フライトレベル180で飛行してください。)など、詳細に指示を受けながら飛行していくことになります。
計器飛行方式で飛行する為のルートや高度などは、事前に定められており、仮想の空の道だとイメージすればわかりやすいかもしれません。
計器飛行方式で飛行する為のルートや高度などは、事前に定められており、仮想の空の道だとイメージすればわかりやすいかもしれません。
計器飛行方式(IFR) と 有視界飛行方式(VFR) の違い
種 類 | 有視界飛行方式(VFR) | 計器飛行方式(IFR) |
飛行 の 仕方 | 目視 で 飛行 | 管制官 の 指示で飛行 |
安全問隔 の 設 定 | パイロット | 管制官 |
衝突防止 の 責任 | バイロット の 責任 | 管制官 の 責任 IFR 機と VFR 機の間ではお互いパイロットの責任 |
航空法での定義
航空法第二条「定義」
15 この法律において「計器気象状態」とは、視程及び雲の状況を考慮して国土交通省令で定める視界上不良な気象状態をいう。
16 この法律において「計器飛行」とは、航空機の姿勢、高度、位置及び針路の測定を計器にのみ依存して行う飛行をいう。
17 この法律において「計器飛行方式」とは、次に掲げる飛行の方式をいう。
一 第十三項の国土交通大臣が指定する空港等からの離陸及びこれに引き続く上昇飛行又は同項の国土交通大臣が指定する空港等への着陸及びそのための降下飛行を、航空交通管制圏又は航空交通管制区において、国土交通大臣が定める経路又は第九十六条第一項の規定により国土交通大臣が与える指示による経路により、かつ、その他の飛行の方法について同項の規定により国土交通大臣が与える指示に常時従って行う飛行の方式
二 第十四項の国土交通大臣が指定する空港等からの離陸及びこれに引き続く上昇飛行又は同項の国土交通大臣が指定する空港等への着陸及びそのための降下飛行を、航空交通情報圏(航空交通管制区 である部分を除く。)において、国土交通大臣が定める経路により、かつ、第九十六条の二第一項の規定により国土交通大臣が提供する情報を常時聴取して行う飛行の方式
三 第一号に規定する飛行以外の航空交通管制区における飛行を第九十六条第一項の規定により国土交通大臣が経路その他の飛行の方法について与える指示に常時従って行う飛行の方式
航空法第三十四条 定期運送用操縦士の資格についての技能証明(当該技能証明について限定をされた航空機の種類が国土交通省令で定める航空機の種類であるものに限る。第三十五条の二第一項において同じ。)又は事業用操縦士若しくは自家用操縦士の資格についての技能証明を有する者は、その使用する航空機の種類に係る次に掲げる飛行(以下「計器飛行等」という。)の技能について国土交通大臣の行う計器飛行証明を受けていなければ、計器飛行等を行つてはならない。
- 計器飛行
- 計器飛行以外の航空機の位置及び針路の測定を計器にのみ依存して行う飛行(以下「計器航法による飛行」という。)で国土交通省令で定める距離又は時間を超えて行うもの
- 計器飛行方式による飛行
(計器航法による飛行の距離及び時間)
航空法施行規則第六十六条 法第三十四条第一項第二号 の国土交通省令で定める距離は百十キロメートルとし、同号 の国土交通省令で定める時間は三十分とする。
(計器気象状態)
航空法施行規則第五条 法第二条第十五項 の国土交通省令で定める視界上不良な気象状態は、次の各号に掲げる航空機の区分に応じ当該各号に掲げる気象状態(以下「有視界気象状態」という。)以外の気象状態とする。
一 三千メートル以上の高度で飛行する航空機(第三号及び第四号に掲げる航空機を除く。) 次に掲げる条件に適合する気象状態
- イ 飛行視程が八千メートル以上であること。
- ロ 航空機からの垂直距離が上方及び下方にそれぞれ三百メートルである範囲内に雲がないこと。
- ハ 航空機からの水平距離が千五百メートルである範囲内に雲がないこと。
二 三千メートル未満の高度で飛行する航空機(次号及び第四号に掲げる航空機を除く。) 次に掲げる航空機の区分に応じそれぞれに掲げる気象状態
- イ 航空交通管制区(以下「管制区」という。)、航空交通管制圏(以下「管制圏」という。)又は航空交通情報圏(以下「情報圏」という。)を飛行する航空機 次に掲げる条件に適合する気象状態
- 飛行視程が五千メートル以上であること。
- 航空機からの垂直距離が上方に百五十メートル、下方に三百メートルである範囲内に雲がないこと。
- 航空機からの水平距離が六百メートルである範囲内に雲がないこと。
- ロ 管制区、管制圏及び情報圏以外の空域を飛行する航空機 次に掲げる条件に適合する気象状態
- 飛行視程が千五百メートル以上であること。
- 航空機からの垂直距離が上方に百五十メートル、下方に三百メートルである範囲内に雲がないこと。
- 航空機からの水平距離が六百メートルである範囲内に雲がないこと。
三 管制区、管制圏及び情報圏以外の空域を地表又は水面から三百メートル以下の高度で飛行する航空機(次号に掲げる航空機を除く。) 次に掲げる条件に適合する気象状態(他の物件との衝突を避けることができる速度で飛行するヘリコプターについては、イに掲げるものを除く。)
- イ 飛行視程が千五百メートル以上であること。
- ロ 航空機が雲から離れて飛行でき、かつ、操縦者が地表又は水面を引き続き視認することができること。
四 管制圏又は情報圏内にある空港等並びに管制圏及び情報圏外にある国土交通大臣が告示で指定した空港等において、離陸し、又は着陸しようとする航空機 次に掲げる条件に適合する気象状態
- イ 地上視程が五千メートル(当該空港等が管制圏内にある空港等であって国土交通大臣が告示で指定したものである場合にあっては、八千メートル)以上であること。
- ロ 雲高が地表又は水面から三百メートル(当該空港等がイの国土交通大臣が告示で指定したものである場合にあっては、四百五十メートル)以上であること。
(有視界飛行方式)
航空法施行規則第五条の二 有視界飛行方式とは、計器飛行方式以外の飛行の方式をいう。
(操縦者の見張り義務)
航空法第七十一条の二 航空機の操縦を行なっている者(航空機の操縦の練習をし、又は計器飛行等の練習をするためその操縦を行なっている場合で、その練習を監督する者が同乗しているときは、その者)は、航空機の航行中は、第九十六条第一項の規定による国土交通大臣の指示に従っている航行であるとないとにかかわらず、当該航空機外の物件を視認できない気象状態の下にある場合を除き、他の航空機その他の物件と衝突しないように見張りをしなければならない。
(計器飛行及び計器航法による飛行)
航空法第九十三条 航空機は、地上物標を利用してその位置及び針路を知ることができるときは、計器飛行又は計器航法による飛行を行なつてはならない。
(計器気象状態における飛行)
航空法第九十四条 航空機は、計器気象状態においては、航空交通管制区、航空交通管制圏又は航空交通情報圏にあっては計器飛行方式により飛行しなければならず、その他の空域にあっては飛行してはならない。ただし、予測することができない急激な天候の悪化その他のやむを得ない事由がある場合又は国土交通大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。
(計器飛行方式による飛行)
航空法第九十四条の二 航空機は、航空交通管制区若しくは航空交通管制圏のうち国土交通大臣が告示で指定する空域(以下「特別管制空域」という。)又は国土交通省令で定める高さ以上の空域においては、計器飛行方式によらなければ飛行してはならない。ただし、国土交通大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。
2 国土交通大臣は、特別管制空域ごとに、前項の規定による規制が適用される時間を告示
で指定することができる。
有視界気象状態 [VMC:visual meteorological condition]と
計器気象状態[IMC:instrument meteorological condition]とは
パイロットが目視により自分の判断で飛行(有視界飛行方式での飛行)ができる気象の状態を有視界気象状態 VMC(visual meteorological conditionの略)とよばれているいます。
有視界飛行方式(VFR) による飛行は有視界気象状態(VMC)で行わなければならないと定められています。この有視界飛行ができる気象条件とは、パイロットが目視により飛行するためには、十分な視界がつねに確保されていることが条件になっています。そのため航空機の飛行高度と飛行空域に応じ、飛行視程と雲の状態について次のように基準が設定されいます。気象状態がこの基準以上である場合を有視界気象状態といいます。
〔1〕3000メートル以上の高度で飛行する航空機についての基準は下記の通りです。
- 飛行視程が8000メートル以上であること
- 航空機からの垂直距離が上方および下方に300メートルの範囲内に雲がないこと
- 航空機からの水平距離が1500メートルの範囲内に雲がないこと
〔2〕3000メートル未満の高度で飛行する航空機についての基準は下記の通りです。
- 飛行視程が管制区・管制圏内では5000メートル以上、それ以外では1500メートル以上であること
- 航空機からの垂直距離が上方に150メートル、下方に300メートルの範囲内に雲がないこと
- 航空機からの水平距離が600メートルの範囲内に雲がないこと
〔3〕管制区・管制圏以外の空域と地表または水面から300メートル以下の高度で飛行する航空機についての基準は、飛行視程が1500メートル以上で、雲から離れて飛行でき、かつパイロットが地表または水面を引き続き視認できることである。
〔4〕飛行場で離陸または着陸しようとする航空機についての基準は、地上視程が5000メートル以上で、雲高が地表または水面から300メートル以上であることである。
上記の有視界気象状態(VMC)の基準に満たない気象状態を計器気象状態(IMC)といいます。視程と雲の影響による「視界上不良な気象状態」のことだという事ができます。
有視界気象状態(VMC)ではVFRおよびIFRによる飛行が可能ですが、計器気象状態(IMC)ではVFRによる飛行は許可されません。
計器飛行(IFR)を行う為の条件
計器飛行(IFR)を行うには、次のような条件があります。
航空機の適合性:IFR飛行に必要な設備を持った航空機を使用することが航空法で定められています。定められている設備は、下記のようなものです。
- ジャイロ式姿勢指示器
- ジャイロ式方向指示器
- ジャイロ式旋回計
- すべり計
- 精密高度計
- 昇降計
- ピトー管凍結防止装置付速度計
- 外気温度計
- 秒刻み時計
- 機上DME装置
- 利用すべき地上無線施設に対応する方向探知機、VOR受信装置または機上タカン装置
この内、航空運送事業の用に供する最大離陸重量が5700kgを超える飛行機以外の航空機は機上DME装置を装備する必要なし。
ジャイロ式姿勢指示器、精密高度計、ピトー管凍結防止装置付速度計は、航空運送事業の用に供する最大離陸重量が5700kgを超える飛行機は2組必要とされています。
飛行計画:IFR飛行には適切な飛行計画が必要とされています。この計画には、航空機の情報、飛行路線、高度、速度などの情報を事前に、航空管制当局に提出し、承認される必要があります。
パイロットの資格:IFR飛行をするには、適切な資格を持ったパイロットが必要です。この資格は、計器飛行証明と呼ばれるもので、航空従事者国家資格技能証明の内の1つです。 自家用操縦士や事業用操縦士などの操縦士としての技能証明だけでなく、計器飛行証明の資格も別途必要になるという事です。
航空管制との通信:IFR飛行中は、航空機と航空管制との通信が必須になります。この通信により、航空管制当局が航空機の状況を監視し、必要な指示を出すことができます。これには、ビーコンにより自動的に送出される位置、高度、速度などの情報の他、管制官とパイロットによる直接的な無線通信などがあります。
ー記事をシェアするー