Noman Flight Research Group 無人航空機(ドローン)の研究会です

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アンチドローンシステムの高度な手法 GPS(GNSS)ジャミング、スプーフィング・ミーコニング

2023年8月31日  2024年4月6日 
GPS衛星 NAVSTAR
GPS衛星 NAVSTARのイメージアート

GPSの脆弱性を利用してドローンをハイジャックする手法

GPSジャミング(Jamming )、スプーフィング(Spoofing)・ミーコニング(Meaconing)と呼ばれるもので、ドローンを直接コントロールする電波に介入するものではないことが、ポイントです。すなわち、飛行コースをプログラミングされて、自動的に飛行しているドローン(ドローンがリアルタイムに電波でコントロールされていない場合の意味です)に対しても有効になる可能性があるということです。
ドローンを飛行させる場合、他のロケーションが必要なシステムと同様に、正確な位置情報を得るために、衛星システムに頼っているものが大半です。ドローンが自分の位置情報を知るために受信している電波をジャミング(妨害)や偽の位置情報を送り付けて、位置情報のスプーフィング(なりすまし)でドローンをだましてしまう手法です。この手法はドローンだけでなく、全地球航法衛星システム(GNSS)でナビゲーションされている物に使用されてしまう可能性があるものです。例えば、船舶、航空機などのナビゲーションやカーナビなどもです。位置情報を希望するものに変えてしまうということで。極端に言えばスマホのGPSをスプーフィングして現地に出かけることなくポケモンGOをどうにかするようなイメージをしてもらえるとわかりやすいかもしれません。
逆に、機体の位置情報を全地球航法衛星システム(GNSS)の情報に依存していない場合は効果がないとも言えます。

アンチドローンやドローンジャマーの全体についての詳細
不審ドローンを撃退するシステム~アンチドローンシステム~【教則学習・周辺知識】

そもそも全地球測位システム(GPS)とは

この衛星システムは全地球測位システム(GPS)は歴史が長く、現代の悪用を防ぐことが難しい問題のある技術と言われています。全地球航法衛星システム(GNSS)は、自律的な地理空間測位を提供する衛星ナビゲーション・システムの総称で、GPS、GLONASS、ガリレオ、北斗などの地域的なシステムが含まれます。また、GNSSに関連する概念として、PNT(Position, Navigation, and Timing)システムが存在します。

GPSは31機の衛星で構成されており、そのうち27機が常に稼働し、残りの4機は待機衛星として配置されています。さらに24基以上の衛星を追加することで、余分な測定データを提供し、GPS受信機の計算精度を向上させることが可能です。衛星の数が増えるにつれて、衛星の配置も均一でないように変更されました。この配置は、複数の衛星が故障した場合にも、精度が向上し、システムの信頼性と可用性が増すことが示されています。こうした変更により、常に地上から9機の衛星が観測可能であり、最低限必要な4機の衛星以上の冗長性が確保されています。

GPSについて詳しくは、以下にまとめています。
全地球測位システム Global Positioning System (GPS)【教則学習・詳細】


GPS(GNSS)に由来するドローンの脆弱性

GPSの情報をもとに、自分の位置を把握しているドローンはGPSからの情報を得ることができなくなると、飛行の安定性を大幅に低下させることになったり、飛行できなくなる可能性もあります。ドローンの飛行を妨げる目的で行われる、GPSやGNSS、PNTといったシステムに対する妨害(ジャミング)、スプーフィング、その他の形態の干渉は、その頻度と深刻さが増しています。また、人工衛星という宇宙ベースのシステムであるため、厳しい宇宙天気やサイバー攻撃からの影響を回避することは難しい状況です。参考までに、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの報告によれば、衛星航法が5日間失われると、英国は51億ポンド(約9,462億円)以上の損失を被るとされています。同様に、米国国立標準技術研究所によると、GPSの故障は米国経済に1日あたり10億ドル(約1150億円)、農家の作付け時期などでは1日あたり最大15億ドルの損失をもたらす可能性があるそうです。


ジャミング、スプーフィング・ミーコニング、およびその他のGPS障害モード

GPSの脆弱性は、衛星そのものよりも衛星からの信号に影響を受けやすいことも指摘されています。脆弱性はいくつかの要因によって引き起こされます。まず、電波干渉や太陽活動による電離層干渉などの意図しない干渉があります。さらに、ジャミングや偽造信号によるシステムのなりすまし、衛星への電磁パルス(EMP)攻撃などの意図的な干渉も存在します。太陽活動による電離層干渉や敵のEMP攻撃に対しては、現在のところ十分な防御手段がありません。過去の1859年のキャリントン・イベントと呼ばれる歴史に残る大規模な太陽風に類似する太陽嵐が発生すれば、GPS衛星ネットワーク全体が危険にさらされる可能性があります。人為的な脆弱性を3点以下に挙げてみます。

ジャミング(Jamming)

ジャミングは、GPS受信機の正確な位置情報やタイミングを妨害するために行われる電波干渉の一形態です。外部から発信される不正な電波(妨害電波)がGPS信号と干渉し、受信機が正確な信号を受け取ることを困難にします。ジャミング電波を受けると、GPS受信機が衛星からの正しい信号を正しく受信できなくなり、位置精度が低下したり、タイミング情報がずれたりする結果をもたらします。妨害電波を出すジャミング装置(妨害装置)は、海外では200ドル以下の価格で手に入り、簡単に手軽な装置で行うことができるため、航空機や船舶などのナビゲーションシステムに影響を与え、事故や誤誘導のリスクを高める可能性がありますが、容易に利用されているようです。妨害装置は多くの国で違法とされています(米国はもちろんですが日本でも違法です)、中国を含む一部の地域で大量に製造され、入手が比較的容易ですが、日本国内でもジャミング機器を安易に使用してしまうと電波法などに触れるだけでなくテロリストになってしまう危険もありますので注意が必要です。米軍は機器のテストや軍事演習の際にGPS妨害を実施しており、米国政府も衛星信号の妨害に関するテストや演習を行っているそうです。
また、昨今のウクライナ・ロシアでの無人機戦に伴いアンチドローンのシステムでGPSジャミングが行われており、モスクワ周辺では度々、カーナビが使用不能(GPSジャミングの為?)になってタクシーが困っているとかいないとか。ニュースで話題になっているようです。


スプーフィング(Spoofing)

スプーフィングは、日本語では「なりすまし」と訳されます。偽のGPS信号を発信し、受信機を欺く技術です。攻撃者は、正確なGPS信号を模倣して、受信機に誤った情報を提供することで、受信機が誤った位置やタイミングを報告するように仕向けます。スプーフィングによって、船舶や航空機などのナビゲーションシステムは誤った情報に基づいて操作され、誤った方向や目的地に案内される可能性があります。スプーフィング攻撃は、高度な知識と技術を必要としますが、成功すれば被害をもたらす可能性があります。また、スプーフィングは船舶のような長距離の移動にも影響を及ぼすため、特に脅威とされています。
GPS信号の偽装は、ジャミングよりも頻度は低いかもしれませんが、より深刻な問題を引き起こします。ジャミングでは正常なGPS信号を遮断してしまう為、デバイスが停止し、ユーザーは異常を認識できます。しかしスプーフィングによる偽装された信号では、デバイスが正常に動作しているように見え、ユーザーは偽装に気付かないことがあります。スプーフィングはジャミングよりも複雑であり、ユーザーは複雑なC/Aコードを再生成する必要があります。C/Aコードのレートは1秒あたり102.3万ビットで、各GPS衛星は独自の1023ビットのC/Aコードを送信し、ミリ秒ごとに繰り返す必要があります。

ミーコニング(Meaconing)

ミーコニングは、正当なGPS信号を傍受し、再送信することによって、スプーフィングでは必要な複雑なGNSS信号構造とC/Aコードの生成を回避し、相対遅延の変化を通じて受信機で本物のGNSS信号と誤解させます。これにより、受信機は実際の位置と異なる情報を騙されて出力する可能性があります。ミーコニングは、航行経路を操作するなどの攻撃に使用され、ナビゲーションの精度や安全性を脅かすことがあります。
これらの脆弱性は、GPSシステムが広く使用されているため、特に重要です。これらの攻撃を防ぐためには、高度な暗号化、認証、電波監視、信号の完全性チェックなどの対策が必要です。また、GNSS(全地球航法衛星システム)のアップデートやバックアップナビゲーションシステムの導入など、複数の手段を組み合わせてセキュリティを向上させることが重要です。

GPSのスプーフィングやミーコニングの手法を用いた実際の事例はいくつか存在します。以下にそのうちのいくつかを紹介します。

スプーフィング・ミーコニングの事例:

イランによる米国無人機の捕獲(2011年)

2011年に米軍の無人偵察機がイラン上空で消息を絶ち、1週間後に無傷でイラン人の手に渡ったという事件があました。イランは、米国の無人偵察機RQ-170 Sentinelをスプーフィング攻撃を使用して捕獲したと主張しました。イランは、偽のGPS信号を送信し、無人機を自国の領域に着陸させることに成功したと述べています。米国政府はこれを認めていませんが、この事例はスプーフィングの脅威を示すものとして注目されました。

イランのGPSスプーフィングが話題になった翌年、アメリカの大学でGPSスプーフィングに関する興味深い実験が行われました。

テキサス大学オースティン校の研究チームがUAVの "なりすまし "に初めて成功(2012年6月27日)

テキサス大学オースティン校の研究チームは、無人航空機(UAV)の受信するGPS信号を外部から操作することができることを初めて実証しました。この発見は、2015年までに数千機の民間ドローンを米国の領空で運用する新しい連邦指令の実施に大きな影響を与える可能性があります。この実験は、大学が所有する民間用ドローンを使用して行われました。

工学部のトッド・ハンフリーズ助教授と学生たちは、米国国土安全保障省に招かれ、ニューメキシコ州ホワイトサンズでの実証実験を試みました。研究チームは、小型ドローンと、助教授と学生たちが開発したハードウェアおよびソフトウェアを使用し、GPS誘導機に送信される航法信号を何度も操作しました。この技術は「スプーフィング」と呼ばれ、偽のGPS信号を発信し、UAVのGPS受信機を欺くことで、新たな航空路を飛行するもので、スプーフィングによってGPS受信機の位置と時刻の両方を操作できるため、GPSに依存する多くの機器やインフラが攻撃に対して脆弱になる恐れがあります。

この研究チームによるデモンストレーションは、GPSスプーフィングによる無人機の操作が技術的に可能であることを初めて示した例となりました。国防総省航空政策アナリストのミルトン・R・クラリー氏は、「このデモンストレーションは、重要なインフラがスプーフィング攻撃からどれだけ脆弱であるかを示す一つの警鐘だ」と述べています。

ハンフリーズ助教授は、彼の研究チームは、2015年までに政府および商業用ドローンが米国空域で使用できるようにするための連邦航空局の規制の作成に関与しており、スプーフィングに関連する潜在的なリスクを早い段階で示すことが目的だったと説明しています。

ソース:Cockrell School Researchers Demonstrate First Successful "Spoofing" of UAVs 


翌年、ヨットへのGPSスプーフィングの実験が行われています。

米テキサス大学の研究チームが、豪華ヨットのGPSシステムを乗っ取って、ヨットの針路を変えさせることに成功したと発表。(2013年7月29日)

テキサス大学オースティン校の無線航法研究チームは、開発したGPSスプーフィング装置を用いて全長65メートルの豪華ヨットの航路を変更できるかどうかを調査し、この試みに成功しました。

航空工学・機械工学部のトッド・ハンフリーズ助教授率いるチームは、世界で初めて公に認められたGPSスプーフィング装置を用いて、個人所有ヨットのスプーフィング(偽信号を送ることによる航路の変更)に成功しました。スプーフィングは、偽のGPS信号を発信し、船のGPS受信機を操作する技術です。この実験の目的は、海上でスプーフィング攻撃を実行する難易度を評価し、船の操縦室のセンサーが脅威を特定できるかを調査することでした。

研究者たちは、この実験が航行攻撃の危険性を浮き彫りにし、GPSスプーフィングが船舶や他の輸送手段にとって深刻な脅威であることの証拠となることを期待し行われました。前年、ハンフリーズ助教授と学生グループは、GPS誘導の無人航空機(UAV)ドローンの初の公開捕獲を達成しました。

チームは6月に、モナコからギリシャのロードス島まで、地中海を航海している「White Rose」というヨットに招待されました。実験はイタリア沿岸から約30マイル離れた国際水域で実施され、大学院生の2人で、ヨットの上甲板から箱型の偽装装置を用いて、船の2つのGPSアンテナに対して微弱なGPS信号の偽信号を送信しました。この偽造信号は徐々に本物のGPS信号を圧倒し、最終的には船のナビゲーションシステムを制御することができました。

スプーフィングではGPS信号の遮断や妨害(ジャミング)とは異なり、船のナビゲーション機器に警報が発生しません。そのため、船のGPS機器からすると、偽の信号と本物の信号の区別がつかず、なりすまし攻撃が行われたのに気づく事が困難でした。操作を繰り返すことで、船は元の航路から数百メートルずれた平行な航路に誘導され、なりすましに成功しました。

この実験は、スプーフィング装置の性能と輸送業界の技術で検知できる性能との間に大きな差異があることを示すものであり、輸送業界の安全確保に対する投資の重要性を強調しています。ハンフリーズ助教授は、「この実験は、航空機などの他の半自律型車両にも適用されます。航空機は部分的に自動操縦システムに依存しており、この脅威にどのように対処するかについて検討する必要がある」と語っています。

ソース:UT Austin Researchers Spoof Superyacht at Sea


騙されることこそがスプーフィングの恐ろしさ

気づかないうちに危険区域侵犯の恐れも

近年、世界的な情勢不安から、GPSを利用した兵器システムへの妨害が特定地域で行われるケースがあり、その影響が民間航空機の運航にも及んでいます。直接ミサイルが飛び交うエリアを飛行することは無いとしても、一部で民間機の衛星航法にも障害が発生しているのです。

特に近時、中東上空を飛行する航空機において、GPS信号の改ざんと見られる事例が相次いでいます。テルアビブやカイロからの離陸時に偽信号を受信した複数機で、システムの機能停止や大きな位置ずれが生じていると報告されています。

問題なのは単に情報を取得できないこと自体ではなく、自機の位置が改ざんされることにあります。GPSジャミングでは位置情報を得られませんが、異常には気づきやすいでしょう。しかし偽情報によって誤った位置を示されるスプーフィングの場合、気づかずに飛行禁止区域への進入を試みるなど、より危険な事態も想定されます。

騙されることの方が単なる妨害よりも脅威であるといえ、関係機関には一層の注意喚起が求められています。

実際の事象は、テルアビブ発の、あるガルフストリーム機は完全なナビゲーション喪失に陥り、別のボンバルディア機は偽のGPS信号によりベイルート上空を飛行しているかのように示され危険な状況にさらされました。また30分以上にわたって静止したままの位置情報が偽装された事例も報告されています。詳しい事例をいくつか紹介します。

ガルフストリーム機の事例
2023年10月25日、テルアビブ発のガルフストリームG650機が完全なナビゲーション喪失状態に陥りました。管制官からのベクターにより何とか飛行を継続できたものの、FMSやIRS、GPSの位置情報がすべて機能しなくなるという極めて深刻な事態が発生しました。現在位置から225マイルも南を示すなどシステムの誤作動が著しく、大変厳しい状況下での操縦を強いられたと推測されます。

ボンバルディア グローバル・エクスプレス機の事例
別の事例として、2023年10月16日にテルアビブ発のグローバル・エクスプレス機が偽のベイルート上空位置を示されるスプーフィングを受けました。管制からは禁制区域へ向かっているとの警告まで発せられるなど、極めて危険な状況にさらされました。偽の位置情報に翻弄されかねない重大性がある事案であると言えます。

カイロFIRでの事例
16日にはカイロFIR内を飛行していたボーイング777が、30分以上も偽のテルアビブ上空で静止しているかのようなGPS情報を受信する事態に見舞われました。同FIR内では複数回にわたるスプーフィング事例も報告されており、常に偽情報を警戒する体制が求められる状況です。

ボンバルディア機の事例
カイロFIR内を飛行中のボンバルディアグローバル7500機は、3回にわたってスプーフィングを受けました。最初は1基のGPSの機能停止でしたが、2回目にはGPSに加えて3基のIRSまで機能を失い、3回目には全GPSと全IRSの使用不能に陥りました。250マイル地点でスプーフィングが解除されたとのことですが、深刻な影響が続いたと予想されます。

レガシー機とチャレンジャー機
ヨーロッパからドバイへ向かっていたレガシー650は、バグダッドFIR内で航空機とiPadの全GPS機能を喪失しました。さらにIRSまで機能しなくなったため、自動操縦の異常をきっかけにレーダーベクター(レーダー誘導)の依頼を余儀なくされ、80マイルもの逸脱を生じておりました。またチャレンジャー604も、バグダッドで70-90マイルの大きな位置ずれを生じるといった事例が報告されています。

これらの事例から明らかなように、GPSスプーフィングは航空機のナビゲーション能力に重大な影響を及ぼします。
ガルフストリーム機やグローバルエクスプレス機のケースでは、管制指示により何とか飛行を続けられたものの、FMSやIRSなど主要システムの機能喪失に陥っており、より過酷な事態も十分に想定されました。
カイロFIRやバグダッドFIRでも複数の航空機が機能停止に見舞われており、自動操縦の異常から気づくケースもありましたが、最終的にはレーダーベクターに全面依存する事態となっています。

スプーフィングには大きく3つのエリアが確認されています。

ケース1: バグダッド周辺
影響を受ける地域は、主に北部バグダッドFIRです。特にイラクとイランの国境に平行するUM688航空路上や、北部テヘランFIR、バクーFIRも含まれます。バグダッド型のスプーフィングは、航路上を飛行する航空機に対するGPSスプーフィングを伴い、ナビゲーション障害が続くというものです。これは最初に報告されたスプーフィングのタイプで、2023年8月29日の初事例以降、同年9月に多数の追加報告が寄せられているようです。

ケース2: カイロ周辺
影響を受ける地域は、主にカイロFIR内(L560およびCVO VOR付近の場所)です。さらにニコシアFIR(キプロス)やアンマンFIR(ヨルダン)も含まれています。こちらの報告が最初に浮上したのは10月16日頃からです。報告の大半はカイロFIR内に集中しており、偽あるいは改ざんされたGPS位置情報が航空機に受信され、誤ってテルアビブ上空に位置しているように示されるという共通の状況が報告されています。発生場所は東地中海域の航路からヨルダンのアンマンへの進入空域に至るまで幅広く、テルアビブから100~212マイルの範囲で発生しているとされています。

ケース3: ベイルート周辺
影響を受ける地域は、主にテルアビブFIRおよびニコシアFIR(キプロス)、アンマンFIR(ヨルダン)です。こちらは偽の位置情報によってベイルート上空を飛行しているかのように示されたり、ベイルートへの僅かな進路変更が発生するというケースです。このタイプのスプーフィングにより、10月25日以降、テルアビブ発のSID出発時に逸脱した飛行経路をたどる事例が発生していると報告されています。

偽の位置情報に翻弄されることで、受入れ困難なリスクに晒されかねず、関係者には早急な対策が求められる状況だと言えますが、衛星航法に大きく依存している以上これらのトラブルを根本的に解決する方法はなかなか無いように思います。


参考:
13 November, 2023 GPS スプーフィング: パイロット QRH – ホットスポットと予想されること

GPS Spoofing Update: Map, Scenarios And Guidance
8 November, 2023 GPS スプーフィングの更新: マップ、シナリオ、およびガイダンス

Someone In the Middle East is Leading Aircraft Astray by Spoofing GPS Signals
Sep 28, 2023 フォーブス 中東の誰かがGPS信号を偽装して航空機を迷わせている



これらの問題を受けて欧州連合航空安全局 (EASA) では安全情報速報 (SIB)で、これらの問題への対処の推奨事項を公開しています。大まかに以下のようなものです。

推奨事項

特定された問題に対処するために、EASA は次の緩和策の導⼊を推奨します。これらの対策は、前述の⾶⾏情報地域に対して考慮されるべきであり、GNSS 妨害および/またはスプーフィングが確認された他の地域にも拡張する必要があります。

航空機操縦者に対する推奨事項の⼀部は、2つの異なるケースの特殊性により、現在ではジャミングとスプーフィングに対して分けられています。

  • ATM/ANS プロバイダーおよび空域利⽤者と連携して緊急時対応⼿順が確⽴され、特に重要な従来の航法インフラストラクチャーが確実に整備されるようにする。
    計器着陸システムは保持され、完全に動作します。
  • 適切かつ積極的な緩和措置を最優先事項として実施する。NOTAM の発⾏を含む。
    たとえば、影響を受ける地域および関連する制限(必要に応じて州レベルで決定される)を説明する。
  • 関連する国家電気通信当局と連携して、ATM/ANS サービスプロバイダーによる GNSS 劣化に関する情報収集プロセスの確⽴を促進し、関連する結果を航空会社や他の空域に速やかに通知する
  • GNSSジャマーの使⽤を制限するために国家レベルでの議論を開始する。
  • この SIB の内容が、ヘリコプター操縦者、ATM/ANS プロバイダー、航空機および機器の製造業者を含む航空オペレーターによって正式に考慮されていることを確認します。

ATM/ANS プロバイダーは、以下を⾏う必要があります。
  • 関連する CAA、国家電気通信当局と連携して、GNSS 劣化に関する情報を収集するプロセスを確⽴し、関連する結果を航空会社および他の空域利⽤者に速やかに通知する。
  • GNSS ベースのタイミングの損失または異常が CNS システムに及ぼす影響を評価します。
  • NOTAM を発⾏して空域ユーザーに関連情報を提供する(必要に応じて、州レベルで決定される)
  • GNSS ⼲渉に強い信頼性の⾼い監視範囲を提供します。
    重要な従来のナビゲーションインフラストラクチャの運⽤を維持する(計器着陸)システム、距離測定装置 (DME)、超短波全⽅向範囲(VOR)) 従来のナビゲーション⼿順をサポートします。
  • 緊急時対応計画に、⼤規模な災害が発⽣した場合に従うべき⼿順が含まれていることを確認するGNSS 妨害および/またはスプーフィング イベント。
  • ⾶⾏軌跡/ルートからの逸脱を防ぐために交通状況を注意深く監視してください。


ヘリコプターのオペレーターを含む航空オペレーターは、次のことを⾏う必要があります。
  • GNSS 機器や関連アビオニクスの中断、劣化、または異常な性能が観察された場合、特別航空報告 (AIREP) を利⽤して航空交通サービスに迅速に報告することの重要性を運航乗務員が認識し、訓練されていることを確認します。
    GNSS スプーフィングの疑い、GNSS ⼲渉の位置と継続時間)。
  •  運航乗務員にタイムリーな情報を提供して、妨害電波やなりすましに対する認識を⾼めるために、運航の種類に基づいて考えられるさまざまなシナリオを評価する。
  • GNSS の停⽌またはなりすましのトピックが運航乗務員の地上での繰り返しに含まれていることを確認します。
    関連する運⽤上のリスクと制限を評価します。
  • 影響を受けた地域で航空機を運航する前に、最⼩装備リストに従って、動作しない無線航法システムを搭載した航空機の派遣によってもたらされる運航制限を確実に考慮すること。
  • ⾶⾏計画と実⾏の段階で、代替の従来の到着および進⼊⼿順が利⽤可能であることを確認する(たとえば、増強を含む GNSS のみを備えた被災地域の⾶⾏場では、進⼊⼿順を⽬的地または代替として考慮すべきではない)。

FDM 要件の対象となり、必要なデータが利⽤可能な場合は、FDM プログラムを使⽤して GNSS スプーフィング イベントを特定して評価します。
  • スプーフィングについて: 航空機または機器の製造元に問い合わせて、⾃社製品のスプーフィング事例への対処⽅法と標準運⽤⼿順の推奨事項の実施⽅法について指⽰を求めてください。

ヘリコプターのオペレーターを含む航空オペレーター向けの GNSS 妨害に関する具体的な推奨事項
  • 運航乗務員および関連する運航運⽤担当者が次のことを確実に⾏うようにします。
    - GNSS 妨害の可能性を認識していること。
    - ⾶⾏中に従来のナビゲーション補助装置を使⽤して航空機の位置を確認する被災地に近い場所でオペレーションを⾏う。
    - ナビゲーション補助装置が、意図したルートとアプローチの操作に重要であることを確認します。
    - 必要に応じて⾮ GNSS 到着⼿順に戻す準備を整えておき、通知するこのような場合の航空交通サービス。そして、観察された異常を航空交通機関に報告 (AIREP) します。

ヘリコプターのオペレーターを含む航空オペレーターに対する GNSS スプーフィング特有の推奨事項
  • 運航乗務員および関連する航空運航担当者が次のことを確実に⾏うようにします。
     - GNSS スプーフィングの可能性を認識していること。
    - ⾮ GNSS 航法⼠と、推定位置不確実性 (EPU) の数値を含む、利⽤可能なすべての⾃動航法精度計算を使⽤して、航空機の位置を継続的に監視します。
    - GNSS 時間ソースと⾮ GNSS 時間ソースを監視します。
    - スプーフィング エリア付近の ATC 周波数を注意深く監視します。
    - 疑わしい場合の対処については、航空機の種類に応じたメーカーの指⽰を適⽤します。

スプーフィング、可能性のあるコマンドの例
⾮網羅的なリストは次のとおりです。
  1. HDG モードを選択し、⾶⾏コースを⼿動で調整する準備ができていること。
  2. 必要な限り ATC に検証ベクトルを要求する準備ができていること。
  3. IRS や IRS などの代替 PNT とクロスチェックし、代替 PNT に切り替える準備ができていること。
    利⽤可能な地上設備(Multi-DME および VOR/DME)。
  4. 影響を受けるエリア内の GNSS 信号を除外する準備ができていること。
  5. INS/IRS の⾃動更新を無効にする準備ができていること。
- 観察された異常を航空交通機関に報告 (AIREP) します。

航空機および機器のメーカーは次のことを⾏う必要があります。
  • 航空会社の製品を使⽤する際に、GNSS スプーフィングの疑いがあるイベントに対処する⽅法に関する指⽰を提供することにより、航空会社をサポートします。

出典:
欧州連合航空安全局 (EASA) の安全情報速報 (SIB) PDFファイル
06 November 2023

このようにドローンだけではなく衛星測位システムに依存したシステムでは全般的に危険性が指摘されており、軍事ドローンは当然ですが、使用する測位システムの冗長性を確保する何らかの手立てが必要になる可能性があり、衛星測位システムに依存しない自立航法での飛行が研究・実用化されています。民間のドローンに関しては、幸い短距離の飛行がメインになると想定されることから、測位衛星の電波の届かない屋内やトンネル内などでの使用が考えられるので、それらの分野のドローンから自立航法が実用化されつつあるようです。

GPSジャミングが影響しているエリアについて詳しくは以下にまとめています。
GPSジャミングマップ(GPS jamming map) 現在のジャミングを地図上に表示

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ノータムとは ノータム【NOTAM ( Notice to Airmen)】:航空従事者への通知 国が管理する航空当局(日本の場合は国土交通省航空局)が、航空従事者に対して発行する情報で、航空機の運航のために必要な情報を提供しています。 「NOTAM」ノータムは、 NO tice T o A ir M en の略称で、日本語に訳すなら「航空従事者へのお知らせ」という事です。航空情報の一つで、飛行場、航空保安施設、運航に関連する業務方式の変更、軍事演習のような危険の存在などについての情報で、書面による航空情報では時宜を得た提供が不可能な(端的にいえば間に合わない)場合にテレタイプ通信回線(CADIN及びAFTN)により配布されるものです。 ノータム【NOTAM (Notice to Air Mission)】:航空任務への通知 アメリカ連邦航空局(FAA:Federal Aviation Administration)は2021年12月2日から、NOTAM の頭字語を、Notice to Airmen から Notice to Air Mission に変更しました。この変更は名称によるジェンダー中立性を保つとともに、より広範囲な分野を包括する事を見据えてより正確な名称にするためのもので、小型無人航空システム (sUAS) 、無人気球など、他のいくつかの分野も含まれるためです。 女性もたくさん活躍している事や、無人機には人間が乗っていません(当然ですが)ので、旧名称の「Airmen」はないだろうという事です。したがって、航空任務への通知( Notice to Air Mission )という名称は、より実態に即した正確な名称に変更されたという事になります。 無人航空機のフライトプランのノータムへの掲載について詳しい説明を説明しています。 ノータムへの無人航空機のフライトプランの掲載   もよろしければご覧ください。 NOTAM の歴史 NOTAM は、附属書 15:国際民間航空条約(CICA)の航空情報サービスで指定されたガイドラインに基づいて、政府 機関および空港運営者によって作成および送信されます。1947年4 月4日に発効した CICA の批准に伴い一般的に使用されるようになりました。 航空の業界では、より歴史のある船舶のシステムや名称などの慣習が引き継

フォネティックコード「アルファー・ブラボー・チャーリー」通話表【教則学習・周辺知識】

アルファベットや数字を無線通信・電話(口頭)で正しく伝える方法 「アルファー」「ブラボー」「チャーリー」このような、暗号のような、呪文のような言葉を航空業界では使用されることが比較的多いので耳にする機会があるのではないでしょうか。これは、フォネティックコード(Phonetic Code)と呼ばれるアルファベットや数字を正しく伝える為の工夫です。スペリングアルファベットとも呼ばれ、アルファベットにどのような言葉を当てはめるかは、国際規格として定められています。ですから、通常は世界どこに行っても通用するものとされています。通信で使用されるだけでなく、共通の知識として前触れなくあられることがありますので、知っておいて損はないと思います。 第一次世界大戦後、音声を利用する双方向無線が開発され、普及する以前、低品質の長距離電話回線での通信を改善するために、電話のスペルアルファベット(Spelling Alphabet)が開発されたました。 アルファベットの「B」ビーと「D」ディーや「M」エムと「N」エヌのように、発音が似ているものを聞き間違えることなく伝えることを目的として、定められたアルファベットの通話表での置き換えます、航空機や船舶などの通信で主に利用されています。また、コールセンターなど対面できない際の電話での通話の間違いを防ぐためにも、利用されているようです。航空業界に関わり合いのある、旅行業界やホテル業界などでも利用されることがあるそうです。 このフォネティックコードを用いると、BとDは「ブラボー」と「デルタ」、MとNは「マイク」と「ノベンバー」になりますので、発音が似ているアルファベットも間違えずに伝えることが出来ます。 フォネティックコード表 アルファベット 読 み A ALFA アルファ B BRAVO ブラボー C CHARLIE チャーリー D DELTA デルタ E ECHO エコー F FOXTROT フォックストロット G GOLF ゴルフ H HOTEL ホテル I INDIA インディア J JULIETT ジュリエット K KILO キロ L LIMA リマ M MIKE マイク N NOVEMBER

二等無人航空機操縦士 学科試験問題 模擬試験

無人航空機操縦者技能証明 学科試験(二等無人航空機操縦士)の学科試験とサンプル問題 新しいライセンス制度と詳細の発表が航空局よりありました。 無人航空機操縦士 学科試験のサンプル問題は下記PDFです。 操縦ライセンス制度 学科試験(二等)サンプル問題 https://www.mlit.go.jp/common/001493224.pdf <実施方法> 全国の試験会場のコンピュータを活用するCBT  (Computer Based Testing) <形 式> 三肢択一式(一等:70問 二等:50問) <試験時間> 一等:75分 二等:30分 <試験科目> 無人航空機に関する規則、無人航空機のシステム、無人航空機の操縦者及び運航体制、運航上のリスク管理 ※令和6年(2024年)4月14日(日)より、 学科試験の内容は、「無人航空機の飛行の安全に関する教則 (第3版)」に準拠します。 と発表されました。 詳細は「 【重要!!】無人航空機操縦士・学科試験の内容が、変わります 」にアップしました。 無人航空機の飛行の安全に関する教則 新しくできた無人航空機操縦者技能証明の制度で「一等無人航空機操縦士」「二等無人航空機操縦士」の国家試験の学科の教科書の基になるものです。この教則の内容や範囲から試験問題も作られるています。 令和5年(2023年)4月13日に改訂された、 無人航空機の飛行の安全に関する教則(第3版) は以下にリンクします。 https://www.mlit.go.jp/common/001602108.pdf 無⼈航空機操縦士の学科試験のための教則について詳しく解説を、以下でご覧ください。 「無人航空機の飛行の安全に関する教則」(第3版) 令和5年(2023年)4月13日【教則学習】 教則の読み上げ動画を作成しました 詳しくは 無人航空機の飛行の安全に関する教則 第3版 読み上げ動画 二等無人航空機操縦士 学科試験 模擬試験 「二等無人航空機操縦士」のサンプル問題に基づいて模擬テストを作りました。 回答終了後に 「送信」 をクリックして続いて出てくる 「スコアを表示」 をクリックすると採点結果が表示されます。発表によるとCBT式試験というコンピュータを利用した試験になるようですので、似た雰囲気ではないかと思います。メールアドレスの情報は収集しておりませんので気軽

「無人航空機の飛行の安全に関する教則」(第3版) 令和5年(2023年)4月13日【教則学習】

無人航空機操縦者技能証明の「一等無⼈航空機操縦士」と「二等無⼈航空機操縦士」の学科試験の土台となる教則 無人航空機の飛行の安全に関する教則が令和5年(2023年)4月13日に改訂 され(第3版)が公開されました。 無⼈航空機操縦士の学科試験のベースになる教則ですが、これまで、学科試験の内容は「無人航空機の飛行の安全に関する教則(第2版)」に準拠していましたが、 ※令和6年(2024年)4月14日(日)より、 学科試験の内容は、「無人航空機の飛行の安全に関する教則 (第3版)」に準拠します。 と発表されました。 詳細は「 【重要!!】無人航空機操縦士・学科試験の内容が、変わります 」にアップしました 教則の読み上げ動画を作成しました 詳しくは 無人航空機の飛行の安全に関する教則 第3版 読み上げ動画 試験の予約・実施スケジュールなど詳しくは下記、指定試験機関の日本海事協会サイトで確認してください 【重要!!】「無人航空機の飛行の安全に関する教則」の改訂に伴う無人航空機操縦士試験における学科試験の内容変更についてのお知らせ – 無人航空機操縦士試験案内サイト  令和6年(2024年)4月14日(日)より 以前に受験される方 については引き続き以下でご覧ください。 「無人航空機の飛行の安全に関する教則」 令和4年(2022年)11月2日第2版【教則学習】 令和5年(2023年)4月13日に改訂された(第3版)については以下にリンクします。 無人航空機の飛行の安全に関する教則(第3版) https://www.mlit.go.jp/common/001602108.pdf 第2版からの変更履歴【参照用】 https://www.mlit.go.jp/common/001602110.pdf 無人航空機の飛行の安全に関する教則(第2版)から(第3版)への変更内容 細かな表現の変更とともに、 「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅢ飛行)」及び「安全確保措置検討のための無人航空機の運航リスク評価ガイドライン」(公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構 福島ロボットテストフィールド発行)の発行に伴う カテゴリーⅢ飛行におけるリスク評価に関する記述の見直し が行われました。5章と6章が大きく変更されています。変更箇所は下記の項目です。 (第 5 章

世界の時間とタイムゾーン・JST、UTCとズールータイム【教則学習・周辺知識】

協定世界時(UTC)、日本標準時(JST)、グリニッジ標準時(GMT)、国際原子時(TAI)、世界時(UT) 時間を表現するための基準が複数あります。これは、世界各国で、それぞれに昔から使用されていた、それぞれ文化にも深くかかわる時間の基準があり、これらを一度に切り替えることが難しかったためで、そのため、しばしば混乱が生じる場合がありました。人、物、そして、情報が世界を行きかう事により、徐々に世界中で統一した基準を用いるような流れになりました。また、科学技術の発展によって精度を増した基準の観測・利用方法が進みましたが、やはり全ての時刻を統一することは困難なため、複数の基準が存在しています。 観測データなど扱う場合必ず「何時(いつ)、when」測定した物なのかという情報は測定値とセットで扱われる大切な要素です。この要素が抜けたり、正しくなければ、データの価値がなくなってしまう場合もあります。 気象観測や、航空機の運航、コンピュータの時間など、昔より世界が狭くなってしまった現代、正確な時刻は当然、必要ですが、その時刻が、どの基準で示されているものなのかを意識しなければならいことも増えてきています。 Samuel P. Avery, 129 Fulton St, NY (wood engraving); Centpacrr (Digital image) ,  Public domain, via Wikimedia Commons 世界時が採用される前の「すべての国」の相対的な時間を示す1853年の「ユニバーサルダイヤルプレート」 グリニッジ標準時(GMT) G reenwich  M ean  T ime グリニッジ標準時(GMT)は、ロンドンのグリニッジにある王立天文台の平均太陽時で、真夜中から数えたものです。(真夜中が午前0時という事)過去には正午から計算されるなど、様々な方法で計算されていたようです。そのため、文脈がわからない限り、特定の時刻を指定するために使用することはできません。(時代によって時間が異なることがあります。)GMTという用語は、タイムゾーンUTC+00:00の名称の1つとしても使われ、イギリスの法律では、イギリスにおける市民時間(ローカルタイム)の基準となっています。 英語圏の人々はしばしば、GMTを協定世界時(UTC)の同義語として用いますが

無人航空機の飛行形態「カテゴリーⅢ、Ⅱ、Ⅰ」 と 飛行レベル「レベル1~4」

無人航空機の法改正が続きドローンの規制や、操縦資格など、新しい制度が、作られる過程で、様々な飛行ケースを表す言葉として、「カテゴリーⅢ、Ⅱ、Ⅰ」や「レベル1、2、3、4」といった用語を目にすることが、多くなりました。「ドローンを「レベル4」で初飛行」とニュースで大きく報じられました。このように「レベル4」がなぜ画期的な事なのか、またそもそもこのレベルとは、何を表しているのか、改めて整理してみたいと思います。余談になりますが、法改正のタイミングで、ニュースなどでも、同じタイミングで取り上げられていたこともあり、全く別なのですが、自動車の自動運転に関する自動運転レベル(こちらはレベル0~5で表される)などと、混同してしまいそうです。 無人航空機の飛行レベル は飛行する条件をリスクに合わせてレベル分けしたカテゴリで、レベルが上がるほど、安全性リスクが増すものです。そのため、飛行レベルの高い飛行を行う場合は、より安全性に配慮した飛行が求められることになります。したがって、自律飛行(自動運転)もリスクを伴うものですが、自動車の自動運転ほどの精密な位置制御が必要ないであろうドローンの場合、他のリスク要因(目視外の飛行)と比較してさほど高くならないという事でしょう。したがって、この飛行レベルは自律飛行(自動運転)について語られている物ではく、自律飛行(自動運転)についての要素は入っていません。きわめて極端に言えば、空には道路もなく、歩行者もいない。(落とさなければいいだけ)という事ができると思います。また、有人航空機では、オートパイロットなど自動操縦の技術がすでにあることも、自動運転のリスク認識が、高くない一つの要因かもしれません。 2023年3月24日に日本国内で初めてレベル4飛行が実施されたニュースが流れましたがこれらのニュースの見出しでも「自動ドローン」や「自動飛行」などの見出しがいくつかありました。確かに、あらかじめルートや高度をプログラムして飛行させれば、自動と言えるのでしょうが、レベル4飛行を報じるのにはやや適切でない印象をうけました。手動だろうが自動だろうがレベル4の飛行はあるわけですし、ましてやドローンが状況判断をして自律飛行しているわけでもないですし。問題にすべきポイントがズレて伝わってしまう可能性があると思います。改めて、 無人航空機の飛行レベルは、自動操縦の

自己紹介

ノーマン飛行研究会
2015年 首相官邸ドローン事件があった年、トイドローンを手にして以来ドローンと関わっています。JUIDAの無人航空機安全運航管理者、操縦技能証明とドローン検定協会の無人航空従事者試験1級 を取得しております。無線関連の第1級陸上特殊無線技士も取得しております。 できるだけ正確に学んだことを綴って行きたいのですが、もし間違いなどありましたらご指摘いただけると嬉しいです。 このサイトはリンクフリーです。報告の必要ありません。リンクして頂けると喜びます。
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