ニュースに 度々登場する「無人機」について
軍事用の無人航空機(ドローン)
ニュースで語られている「無人機」とは、軍事用の無人航空機(ドローン)のこと言っていることが多いと思います。この軍事用無人航空機(ドローン)についてまとめました。民間で一般に使用されているものとは、目的が異なりますが、使用している技術は共通するものも多いですし、軍事用から民間に降りてくる技術が多いことを考えると、将来の民間の無人航空機の在り方を考える参考にもなると思います。
- 遠隔操作型(LOS通信)
- 遠隔操作型(衛星通信)
- プログラム型
- 徘徊型
- 自律型
機体搭載カメラの映像やセンサーなどの情報を見て(人間が)操作する遠隔操作するタイプと操縦者が存在せず自動(のように見える)飛行するタイプ(プログラム型、徘徊型、自律型)、の2つのグループに大きく分けることもできます。このタイプでプログラム型と自律型では振る舞いは表面的には同じように見えますが、そのメカニズムは全く別の物ですので、きちんと分けてられています。
遠隔操作型(LOS通信)
無線通信で操縦する際に操縦者と機体の間に障害物が無い状態で、無線の通信が可能となります。つまり地平線や、水平線の先 地球は丸いため水平線より遠くは地球の影になってしまうような遠距離や、山などの障害物がある場合では無線操縦ができなくなります。電波は回折するのである程度の障害物なら問題は無いのですが、基本的には見通し外のドローンを操作するのは困難になります。したがって、水平線は高い位置になるほど遠くになりますからドローンを高く飛ばせばその分、距離が離れても通信が可能になります。
ただし軍事用ドローンは敵がいる状況で使用する前提でのドローンですから、敵からの攻撃を考えた場合はこれが弱点になってしまいます。通信距離を延ばすために高度を高く取れば取るほど敵に発見されやすくなってしまうというトレードオフの関係になるということです。
ウクライナ空軍のバイラクタル TB2 地上管制局
ウクライナ国防省, CC BY 4.0 , via Wikimedia Commons
遠隔操作ではありますが人間が操作するため、ある程度の臨機応変な行動が可能で、偵察から攻撃まで幅広い用途で使用することが可能です。
ナゴルノ・カラバフ紛争とは
2020年9月下旬から11月上旬にかけて、アゼルバイジャンとアルメニアの間でナゴルノ・カラバフ自治州を巡る大規模な戦闘が発生し、44日間に及んで双方に6000人近い死者を出しました。戦闘の結果、アゼルバイジャンが領土の大半を奪還しました。アゼルバイジャンが勝利を収めた背景には、イスラエルやトルコから最新鋭のドローンを購入し、これを活用した戦術が成功したことがあります。特にイスラエル製の自爆ドローン「ハーピー」とトルコ製の攻撃ドローン「バイラクタル TB2」が大いに威力を発揮し、アルメニアのロシア製の防空ミサイル網を突破するとともに、地対空ミサイル「S300」、戦車「T72」を破壊しました。アゼルバイジャンのドローンの損失は少数にとどまりました。一方、アルメニアは旧ソ連製の旧式兵器に依存していました。ロシアが輸出に努める防空ミサイル網がドローンによって突破されたことは、ロシアにとって衝撃的でした。ドローンと従来兵器の融合運用が現代戦の鍵となっていることが浮き彫りとなりました。
遠隔操作型(衛星通信)
これらは直接電波が届かない場所でも運用が可能になるため、良いところばかりに見える衛星通信型ですが、すべての遠隔操作型ドローンがこれらに置き換わっていないのには理由があります。それは、衛星通信型は一般的に見通し線通信型に比べて航続距離が長くなる傾向にあり、機体サイズが大型になりがちの分、価格が高額になります。
衛星通信ドローンは長距離操縦が可能ですが、機体が大型化し高価になる傾向があります。一方、見通し線型は小型で低価格です。電波妨害への脆弱性は共通の弱点ですが、用途に応じて方式を使い分けられています。
関連することを以下にまとめてあります。
ドローンなのに無人航空機ではない、無操縦者航空機
プログラム型
このドローンは地上管制局がなく操縦者も介在しません。したがって電波が届かないという問題もなければ電波妨害を受ける危険性も遠隔操作型に比べると、少ないのが強みです。ただし事前に決められた通りの行動しかとれないため臨機応変な対応はできず、使い道も限られます。
逆に弱点は機体がミサイルより小さいので巡航ミサイルに比べて搭載できる爆薬の量が少ないため威力はその分減少します。また何よりジェットエンジンで時速900キロくらい出せる巡航ミサイルに対してドローンはプロペラ推進で時速100から200キロくらいと圧倒的に遅いことです。このようなスピードの差は飛行中に発見されてしまう危険性が高まることになり、対処を容易にすることにつながります。
コントロールするための電波を受信する必要がないので低高度を飛んで敵のレーダーをかいくぐることができますが、巡航ミサイル対処と同じ機材使用することが出来るので、空中の早期警戒機で探知して戦闘機での撃墜や、パトリオットミサイルのような対空迎撃する方法です。きちんと空中から警戒していれば、ミサイルの5分の1くらいのスピードで、のんびり飛行して来る飛行物体は容易に発見、対処されてしまうでしょう。ただし、飽和攻撃のような一度に多量のドローンが送り込まれた場合には対処が難しくなるでしょう。
またプログラム飛行型ドローンは民間でも活躍しています。医療設備が整っていない発展途上国で遠隔地に医薬品や輸血用の血液などを投下して帰って来る配達ドローンとして、長距離を飛行できる固定翼プロペラ推進のプログラム飛行型ドローンが使用されるなど、すでに無くてはならない存在となっています。
ドローン(Drone)無人航空機の なりたち
徘徊型ドローン
有名なのがナゴルノカラバフ紛争で戦果を挙げたイスラエルIAI社製「ハーピー」「ハロップ」、この戦いでアゼルバイジャンは無人機をアルメニアの対空陣地付近に飛ばし、防空のためにレーダーを使用した陣地を特定して、ハーピーとハロップ(ハーピー2)が自爆攻撃を行いました。レーダーサイトを破壊するのに効果があったと考えられます。
また、中国がハーピーを模倣製造した「JWS01」や、これに台湾が対抗して作った「剣翔」などがあります。これらは全てハーピーとよく似た形状をしています。
自律型
人工知能(AI)を搭載し、人間の判断を介さず自律的に標的を攻撃する「キラーロボット」がリビア内戦で使用されたとの疑いが浮上している。製造したトルコ社は取材に対し疑惑を否定するが、事実なら世界で初とみられる。戦場におけるAIの活用範囲が拡大する中、禁止や制限を巡る国際的な議論は遅れている。米ニューヨーク・タイムズなど複数のメディアは6月、2020年3月に内戦下のリビアでAIを搭載したドローンが、逃げる民兵らを追って攻撃した可能性があると報じた。ドローンは内戦に軍事介入するトルコの軍事企業STM製の「カルグ2」で、人間の手を介さずに攻撃を行ったのが事実なら世界で初めてとなる。疑惑の発端は、3月に公表された国連専門家パネルの報告書だ。報告書はカルグ2などのドローンを「自律的な殺人兵器」と表現し、「オペレーターとのデータ通信の必要なしに標的を攻撃するようプログラムされている」と述べた。キラーロボットとして使われたことを示唆しているが、国連はこれ以上の詳細な見解は明らかにしていない。この疑惑に対し、STMのオズギュル・ギュレルユズ最高経営責任者(CEO)は日本経済新聞の取材に応じ、「オペレーターがボタンを押さない限り、標的を選んで攻撃することはできない」と否定した。同氏によると、AIの能力は航行や標的の種類判別に限られ、攻撃の判断はできないという。「倫理的に(攻撃の)過程には人間が関わるべきだと考えている」とも述べた。カルグ2が完全自律のキラーロボットとして実際に使われたかどうかは専門家の間でも見解が分かれる。だが、多くの国が関与し、地上では民兵らが実際の戦闘を担うリビア内戦ではドローンが飛び交い、次世代型の戦争の「実験場」とも呼ばれてきた。リビア暫定政府を支援するトルコはSTMとは別の軍事企業、バイカル防衛の「TB2」などを投入した。一方、敵対した武装組織「リビア国民軍(LNA)」側はアラブ首長国連邦(UAE)から提供された中国製ドローンを使用したとされる。トルコ製ドローンはリビアでの実戦投入を経てAIの性能を増し、20年秋にアゼルバイジャンがアルメニアを圧倒したナゴルノカラバフ紛争でも力を発揮した。こうした中、キラーロボットを禁止・制限する国際的な合意は遅れている。各国や人権団体などは非人道的な兵器を規制する「特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)」の枠組みで14年から議論してきたが、具体的な成果は上がっていない。途上国などが規制に積極的なのに対し、高い開発能力を持つ米国、中国、ロシアなどが慎重な姿勢を示してきた。キラーロボット 人工知能(AI)を搭載することで自ら攻撃目標を発見し、殺傷する兵器で、「自律型致死兵器システム(LAWS)」とも呼ばれる。完全な自律型キラーロボットはまだ実戦配備されていないとされるが、一定の自律性を持つ兵器の導入は急速に進んでいる。戦場に送り込む兵士の人的被害を減らす期待がある一方、人間が介在しない戦争の倫理性や、誤った攻撃が行われた場合の責任の所在などが問題として指摘されている。
UAS 2018 Roadmap 1 - DocumentCloud
自律型致死兵器システム(LAWS: Lethal Autonomous Weapons Systems)とは
- LAWSの定義(特徴)
現存しない兵器であるLAWSを、どのように定義するか。また、LAWSはどのような特徴を持っているか。 - 人間の関与の在り方
LAWSの使用には、一定の人間の関与が必要であることは、国際的に共通の認識であるが、何に対して、どのような方法で関与するべきか。 - 国際人道法との関係
LAWSの使用に当たって国際人道法を守るべきことは、国際的に共通の認識(不必要な苦痛の禁止、攻撃対象を戦闘員及び軍事目標に限定(区別原則)、損害と軍事的利益との比較(均衡性原則)等)であるが、どのように国際人道法の遵守を確保するか。 - 既存の兵器との関係等
人工知能(AI)等の自律化技術を搭載した既存の兵器システム全てを規制することが適当か。また、民生用技術と兵器用技術の境界をどのように画定するか。 - 規制の在り方
LAWSを規制する枠組みとして、法的拘束力のある文書、政治文書又は行動規範、成果文書、議論の継続等のうち、いかなる形式が適切か。
(a) 国際人道法は、致死性自律兵器システムの潜在的な開発および使用を含む、すべての兵器システムに完全に適用され続ける。
(b) 兵器システムの使用に関する人間の責任は保持され続けなければならない。なぜなら説明責任は機械に移譲できないからである。これは兵器システムのライフサイクル全体で考慮されるべきである。
(c) 人間と機械の相互作用は、様々な形態をとり、兵器のライフサイクルの様々な段階で実装できるが、致死性自律兵器システム分野の新興技術に基づく兵器システムの潜在的使用が、特にIHLを含む適用可能な国際法に準拠していることを確実にするべきである。人間と機械の相互作用の質と程度を決定するにあたって、運用環境や兵器システム全体の特徴と能力など、様々な要因を考慮すべきである。
(d) CCWの枠組みにおける、新興兵器システムの開発、配備、使用に関する説明責任は、適用可能な国際法、特に責任ある人間指揮統制の下でのこれらシステムの運用を通じて確保されなければならない。
(e) 国家の国際法上の義務に従い、新しい兵器、手段、戦争方法の研究、開発、取得、採用にあたって、その使用があるか全ての状況下で国際法によって禁止されるか否かの決定が行われなければならない。
(f) 致死性自律兵器システム分野の新興技術に基づく新しい兵器システムを開発または取得する際、物理的セキュリティ、適切な非物理的安全対策(ハッキングやデータ偽装へのサイバーセキュリティを含む)、テロ組織による取得のリスク、拡散のリスクを考慮すべきである。
(g) リスクアセスメントとリスク軽減対策は、新興技術を用いた兵器システムの設計、開発、テスト、配備サイクルの一部とすべきである。
(h) IHLとその他の適用可能な国際法上の義務の遵守を支持するため、致死性自律兵器システム分野の新興技術の使用について検討すべきである。
(i) 潜在的な政策対策を策定する際、致死性自律兵器システム分野の新興技術は人間化されるべきではない。
(j) CCWの文脈における議論や潜在的な政策対策は、知的自律技術の平和的使用の進歩やアクセスを妨げるべきではない。
(k) CCWは、軍事必要性と人道的考慮のバランスを求める条約の目的と目標の文脈において、致死性自律兵器システム分野の新興技術の問題を扱う適切な枠組みを提供する。
国連委がAI兵器に「戦時国際法適用」を決議 露印反対、中朝棄権
ニューヨーク 国連総会(193カ国)の第1委員会(軍縮)は1日、高度な人工知能(AI)を搭載して、人間の判断に基づかずに攻撃目標を設定し、人を殺傷する自律型致死兵器システム(LAWS)に国際人道法(戦時国際法)が適用されることを確認する決議案を採択した。国連総会でのLAWS関連決議は初めて。決議案はオーストリアが提出し、採決で日本や米国など164カ国が賛成した。反対はロシアとインド、ベラルーシなど5カ国。中国と北朝鮮、イラン、イスラエル、トルコ、サウジアラビアなど8カ国が棄権した。決議はLAWSについて、国連憲章や国際人権法を含めた既存の国際法が適用されることを確認したうえで、軍拡競争や開戦に踏み切る敷居の低下、テロリストらへの拡散に対する懸念を表明した。決議はまた、グテレス国連事務総長に対し、武力行使における人間の役割などを含むLAWSの課題について見解をまとめ、来年9月に始まる次期会期に報告書として提出するよう求めている。決議は年内に国連総会の全体会合で採択される見通し。グテレス氏はLAWSを禁じる法的枠組みの2026年までの交渉妥結を求める。決議に賛成したオーストラリア代表は「まず既存の国際人道法がどう適用されるのかを明確にしなければならない」と述べた。
国連委がAI兵器に「戦時国際法適用」を決議 露印反対、中朝棄権 - 産経ニュース (sankei.com)
https://www.sankei.com/article/20231102-GIKZJ2AJ6RLU7A46SRA53CYBRQ/
自律型致死兵器システム(LAWS)について|外務省 (mofa.go.jp)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/dns/ca/page24_001191.html
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100111543.pdf#page=10
日本でのドローンの運用状況
米軍で配備されている主なUAS(無人航空機)とグループシステムでの分類
米軍UAS(無人航空機)グループ米軍で配備されている主なUAS(無人航空機)とグループシステムでの分類です。米国防総省は、戦術、作戦、戦略の各レベルで無人航空機(UAS)を採用し、あらゆる作戦を支援しています。これらのUASは、サイズと機能に基づき、「グループ」と呼ばれるカテゴリーに分類されています。以前は各軍で別々に「ティア」や「クラス」といった分類が使われていましたが、2010年以降、分類の統一化を図るため「グループ・システム」が導入され、グループ1からグループ5の5つのカテゴリーが設けられました。数字が大きくなるほど能力が高くなるようになっています。
UAS Group | サイズ | 最大重量 (lb) (MGTOW) | 標準作戦高度(ft) | 速度 (kn) | 代表的なUAS Representative UAS |
Group 1 | Small | 0–20 | < 1,200 AGL | 100 | RQ-11 Raven, WASP, Puma |
Group 2 | Medium | 21–55 | < 3,500 AGL | < 250 | ScanEagle, Flexrotor, SIC5 |
Group 3 | Large | < 1,320 | < 18,000MSL | V-BAT, RQ-7B Shadow, RQ-21 Blackjack, Navmar RQ-23 Tigershark, Arcturus-UAV Jump 20, Arcturus T-20, SIC25, Resolute ISR Resolute Eagle, Vanilla | |
Group 4 | Larger | > 1,320 | Any airspeed | MQ-8B Fire Scout, MQ-1A/B Predator, MQ-1C Gray Eagle | |
Group 5 | Largest | > FL 18,000 | MQ-9 Reaper, RQ-4 Global Hawk, MQ-4C Triton |
UAS(Unmanned Aircraft System)
UASの命名規則
無人航空機も米軍用機の命名規則に従い命名されています。NATOでの主なUAS(無人航空機)とグループシステムでの分類
クラス | カテゴリー | 通常時運用高度 | 通常任務半径 | 機体例 |
クラスⅢ ( >600 kg) |
打撃/戦闘 | 65000フィート以下(MSL) | 無制限(BLOS) | Reaper |
HALE | 65000フィート以下(MSL) | 無制限(BLOS) | Global Hawk | |
MALE | 45000フィート以下(MSL) | 無制限(BLOS) | Herson | |
クラスⅡ (150~600 kg) |
戦術的 | 18000フィート以下(AGL) | 200km(LOS) | Watchkeeper |
クラスⅠ (< 150 kg) |
小型 (15 kg以上) |
5000フィート以下(AGL) | 50km(LOS) | Scan Eagle |
ミニ (15 kg未満) |
3000フィート以下(AGL) | 25km以下(LOS) | Skylark | |
マイクロ (66ジュール未満) | 200フィート以下(AGL) | 5km以下(LOS) | Black Widow |
(2016), MCWP 3-42.1 "Unmmaned Aicraft System Operations"
https://www.marines.mil/portals/1/Publications/MCWP%203-20.5%20(Formerly%20MCWP%203-42.1).pdf
NATO ATP-3.3.8.1 "MINIMUM TRAINING REQUIREMENTS FOR UNMANNED AIRCRAFT SYSTEMS (UAS) OPERATORS AND PILOTS",
Global Security Organization, "Unmanned Aerial Vehicles (UAVs) Classes"
Unmanned Aerial Vehicles and OSH - EU-OSHA
https://osha.europa.eu/en/file/144459/download?token=Y8-WWg4s
https://irp.fas.org/program/collect/uas_2009.pdf