4.6 機体の整備・点検・保管・交換・廃棄【教則学習(第3版)】
2024年3月26日
2024年6月13日
教則の本文を黒色に、独自に追記した補足説明や注釈を別色で記載しています。
4.6.1 電動機における整備・点検・保管・交換・廃棄
(1) 運航者が実施すべき、定期的な整備・点検項目
運航者(無人航空機を運航する者をいう。以下同じ。)は飛行前後だけではなく、無人航空機毎に定められた一定の期間や一定の総飛行時間ごとに整備点検を行う必要がある。そのため、各機体メーカーが設定する整備内容を熟知し、必要なタイミングで修理等の整備を行う必要がある。
(2) リチウムポリマーバッテリーの保管方法
リチウムポリマーバッテリーの保管方法における主な留意点は以下のとおり。
- バッテリーの劣化を遅らせるため、長期間使用しない時は充電 60%を目安に保管すること。満充電の状態での保管又は飛行後の放電状態での保管は、電池の劣化が進みやすく電池が膨らみ、使用不可になることが多いので行わないこと。
- 短絡すると発火する危険があるため、バッテリー端子が短絡しないように細心の注意を払うこと。
- 機体コネクタとバッテリーを接続したままにしないこと。
- 万が一発火しても安全を保てる不燃性のケースに入れ、突起物が当たってバッテリーを傷つけない状態で保管すること。
- 落下させるなど衝撃を与えないこと。
- 水に濡らさないこと。
- バッテリーを高温(35°c 超)になる環境で保管しないこと。
リチウムポリマーバッテリーの保管
リチウムポリマーバッテリーの保管には細心の注意が必要です。このバッテリーは衝撃に弱く、ちょっとした衝撃でも発火する可能性があるため、通常は耐火性の入れ物に入れて保管し、直射日光や高温環境を避ける必要があります。また、バッテリーのコネクター同士が接触してショートしないよう、キャップをつけるなどして絶縁した状態で保管することが推奨されています。
満充電状態で長期保管すると、万が一衝撃や傷、ショートが起これば発火リスクが高まるだけでなく、バッテリー自体の劣化が進み寿命が縮まってしまいます。そのため、安全面と寿命の観点から、充電器のストレージモードなどを使って約60%の容量まで放電させた状態で保管するのが適切とされています。
一方で、過放電した状態、つまり電池が空の状態での保管も避けるべきです。自己放電が進行し、過放電状態に陥ると劣化が進行してしまいます。
保管温度については、一般に-20℃〜50℃が推奨されています。長期保管の場合は、さらに厳しく-20℃〜35℃が望ましいとされています。
メーカーも出荷時は50%〜70%程度の残存容量にしているのが一般的で、これは安全性だけでなく、バッテリーの性能と寿命を維持する上で適切な残存容量の範囲と考えられています。
リチウムポリマーバッテリーの保管では、衝撃や温度環境に加え、残存容量のコントロールが重要となります。発火の危険性を抑えながら、同時にバッテリーの寿命をできる限り長く保つことができるよう、適正な保管方法を守ることが重要です。
バッテリーについて 以下に詳しくまとめました
無人航空機のバッテリー リポ(LiPo) / リチウムイオン【教則学習・詳細】
(3) リチウムポリマーバッテリーの交換
交換時期のチェックが特に重要なものとして、リチウムポリマーバッテリーが挙げられる。 リチウムポリマーバッテリーが膨らんでいる場合は、過充電などでバッテリー内部に可燃性ガスが発生している可能性があるため、早めに交換を行う。
(4) リチウムポリマーバッテリーの廃棄方法
無人航空機の運航で生じる廃棄物は、各地方自治体のルールに従って廃棄しなければならない。事業で用いたリチウムポリマーバッテリーを廃棄する場合は、法律に則り「産業廃棄物」として廃棄する。
リチウムポリマーバッテリー[Lithium Polymer Battery](二次電池)とは
リチウムポリマー二次電池とも呼ばれ、リポ・バッテリー[Li-Po]と略されています。
本質的(化学反応的)には、リチウムイオンバッテリー(二次電池)との違いはありません。
リチウムイオンバッテリーでは、電解質に液体を利用しています。しかし液体を扱う以上、パッケージングや形状が自由にならないのが難点でした。この難点を解消する為に、液体の代わりに電解質にポリエチレンオキシドやポリフッ化ビニリデンからなるポリマーに、電解液を含ませ、ゲル化した、導電性のポリマーを利用したフィルムを層状にする方法が考案されました。この構造にすることにより、リチウムポリマーバッテリーは小型軽量化が可能になり、また薄型化も可能になりました。外装容器として缶ではなく袋状のアルミラミネート・フィルム外装容器を用いているものが多い為、単にその外観上の特徴を指してリチウムポリマーバッテリーと呼ばれる場合もあるようです。
またエネルギー密度も高い為(同じ体積のリチウムイオンバッテリーのおよそ1.5倍程度)、同じ容量のバッテリーを比べるとリチウムポリマーバッテリーの方が小型にすることができます。
バッテリーの廃棄とリサイクル
資源の有効活用の社会的気運や法律によって、リサイクルの取り組みが求められています。
バッテリーに関しても、資源有効利用促進法によって指定再資源化製品に指定され、製品の製造事業者及び輸入事業者は、自主回収及び再資源化に取り組むことが求められています。小形二次電池については密閉形蓄電池を部品として使用している製品の製造事業者及び輸入事業者も、当該密閉形蓄電池の自主回収に取り組むことが求められています。
この様なこともあり、小型充電式電池メーカーや同電池の使用機器メーカー、それらの輸入事業者等などが会員として集まる一般社団法人JBRCで、一括して、バッテリーの回収・リサイクルをしています。一般の個人は、「協力店・協力自治体」に設置された回収ボックスで回収されています。事業者の場合は、事前に排出者登録をして、回収依頼をすれば回収してくれるようです。ただし、全てのバッテリーを回収してくれるわけではなく、一般社団法人JBRCの会員企業の製造販売したバッテリーに限られること(会員企業外品やメーカー不明品は回収対象外)や、電池種類(ニカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池のいずれか)が明確であること、破損、水濡れや膨張等の異常のある電池や、外装なしのラミネートタイプの電池ではないことなど、の条件があります。
詳しくは「一般社団法人JBRCのオフィシャルサイト 」から確認してください。
また、JBRCの会員企業かどうかは、オフィシャルサイトの会員一覧から調べることができます。会員になっているメーカーは多義にわたり、パソコン、カメラ、通資機器(トランシーバー)、ハンディクリーナー、電動アシスト自転車、電動工具、などだけでなく、非常灯や誘導灯など防災設備のメーカーまであります。
参考までに、ドローン関連に関連がある、もしくはあったメーカーなどを中心にまとめました。
JBRCの会員企業のドローン関連メーカ
SB C&S株式会社、TIアサヒ株式会社、エアロセンス株式会社、
ソニーグループ株式会社、ヒロボー株式会社、ヤマハ発動機株式会社、
ヤンマーアグリ株式会社、株式会社キーエンス、株式会社タミヤ、株式会社トプコン、
株式会社バンダイ、株式会社丸山製作所、京商株式会社、双葉電子工業株式会社
回収に該当するものかどうかなどは一般社団法人JBRCへ直接問い合わせてみることをおすすめします。
廃棄する場合
各自治体の廃棄物のルールに則って処分します。その際、バッテリーを放電させ、エネルギーが残っていない状態にし、端子がショートしないよう、絶縁処理をして処分しないと、発火などのトラブルを起こす危険性があります。充電器に放電機能がある場合は、そのような機能や専用の放電器などを利用して、放電させてから、廃棄します。
放電器などを利用せず、様々なところで、一般的に言われている3~5%の塩水に漬けて強制的にショートして放電をさせることはあまりお勧めできません。自己責任で。
4.6.2 エンジン機における整備・点検
エンジン機においては、飛行前後以外に一定の期間又は一定の総飛行時間毎に、メーカーが定めた整備項目を整備手順に従って実施する。運航者のエンジンの整備に関する知識及び技能が不足している場合は、専門の整備業者に依頼する。
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