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ADS-B ADS-C ADSの概要 航空管制と人口衛星 ATCの話2

2024年12月18日  2024年12月18日 

UTMへのADS-B適用に向けた考察

ADS-Bの技術はUTMにも適用可能ですが、無人航空機の特性に合わせた調整が必要です。UTMでは低高度での運用が主となるため、地形や建造物の影響、データリンクの容量と更新レートの最適化が課題となります。また、無人航空機の小型・軽量性を考慮した省電力で軽量なADS-B相当の機器の開発が求められます。

プライバシーとセキュリティの課題もあり、UTMではこれらの問題への対策がより重要になる可能性があります。例えば、ADS-B信号の暗号化やマルチラテレーションによる検証などの技術が考えられます。

現代航空監視システムの展望

航空交通量の増加や無人航空機の普及に伴い、監視システムの高度化と統合化が求められています。現在のレーダーとADS-Bの併用システムから、将来的にはより一貫性のある監視ネットワークの構築へと進むことが期待されています。例えば、ATCとUTMの統合により、有人・無人航空機が同じ空域を効率的に利用できる仕組みが必要です。
このため、ATCの運用手法やシステム設計をUTMに取り入れることは、無人航空機の空域管理においても有益です。特に、ATCの高い信頼性と冗長性の確保、監視の多重化による安全性の向上といった点は、UTMが目指すべき目標となるでしょう。
さらに、国際基準に基づく運用要件の統一と技術的な標準化が進むことで、国境を越えた無人航空機の運用が可能になり、航空交通の効率化と安全性が一層向上することが期待されます。
このように、無人航空機の管制(UTM)についても重要なテクノロジーとなるADSがどのようなものなのかを知ることは非常に有用なことだと思います。


自動従属監視システム(ADS : Automatic Dependent Surveillance)

ADSの概要と2つの主要バージョン(ADS-B と ADS-C)

自動従属監視(ADS : Automatic Dependent Surveillance)

自動と呼ばれるのは、パイロットやオペレーターの操作を必要とせずに勝手に情報を送信するためです。従属とは、位置と速度ベクトルを検出するために GPS またはフライトマネジメントシステム (FMS) などの適切なナビゲーションシステムが必要であることを意味します。航空機やその他の物体の3D位置と識別を決定できるため、監視技術と見なされています。

現在、使用されている主な2つのバージョンは以下の通りです。
  • ADS-B(Broadcast):広域に対して常時データを放送する形での監視、空港近辺や広域航空交通の監視に使用します。
  • ADS-C(Contract):特定の条件下で、航空機と地上システム間の情報を定期的に送信する契約に基づいた監視を行います。

ADS-B と ADS-C

契約型自動従属監視(ADS-C)と、放送型自動従属監視(ADS-B)は、名前は似ていますが、ADS-CとADS-Bは異なるシステムです。  
自動従属監視放送(ADS-B)は、一次監視レーダー(PSR)や二次監視レーダー(SSR)と同様に、ATSの監視システムです。ATCが適切に装備された全ての航空機からデータを自動的かつ反復的にアクセスし、使用するだけでなく、範囲内の適切に装備された他の航空機にも再放送できます。
一方、自動従属監視契約(ADS-C)は、航空機に搭載されたシステムを使って、航空機の位置、高度、速度、航路意図の要素、気象データなどの同様の情報を、監視および/または航路遵守モニタリングのため、1つ以上の特定の航空交通管制施設(ATSU : Air Traffic Services Unit)またはAOC(航空会社運用管理)施設に対してのみ自動送信します。

ADS-B航空機の位置は、ADS-C運用機よりもはるかに高い頻度で更新されます。そのため、ADS-Bは航空交通管制に対してはるかに正確な状況を確認することができます。この高い位置報告精度により、ADS-B位置プロットをレーダーと同様に監視管制として扱うことができます。一方、ADS-Cは約10分間隔で長い周期で位置が更新されるため、主に遠隔地や海洋上空域で使用されることが多くなっています。

送信方式の違い
ADS-Bは航空機のMode Sトランスポンダから送信されるため、通信範囲がより限られています。一方、ADS-CはSATCOM(衛星通信)を介してエーカーズ(ACARS : Aircraft Communications Addressing and Reporting System)ネットワークから送信されるため、ADS-Bのような範囲制限はありません。ADS-CはCPDLC(管制官-パイロートデータリンク通信)と連携して運用されることもあれば、単独で運用されることもあります。  

ADS-B が航空業界に与える影響

これまで、航空路における航空機監視を行うために二次監視レーダー(SSR:Secondary Surveillance Radar)が主に用いられてきました。平行して、ADS-B(Automatic Dependent Surveillance-Broadcast)は世界中の航空業界で20年以上にわたって使用されており、監視システムの近代化を推進する重要な要素となっています。現在、監視性能の向上に向けて、ADS-Bの電波を利用した広域マルチラテレーション(WAM:Wide Area Multilateration)の整備が進められているほか、ADS-Bの導入がすすめられています。これらセンサーからの情報を統合して利用することで、各センサーの長所を取り入れた監視機能を実現することが可能になります。
2020年には、米国と欧州の規制当局が、自国の空域を飛行する航空機にADS-Bの搭載を義務付けました。さらに、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、東南アジアの多くの国々でもこの技術が採用され、国際的な相互運用性を実現しています。ADS-Bはパイロットと航空管制官(ATC)の双方に、空域の状況をより的確に把握できる機能を提供し、航空の安全性を向上させる役割を果たしています。

ADS-B 放送型自動従属監視 (Automatic Dependent Surveillance - Broadcast)

自動従属監視放送(ADS-B:Automatic Dependent Surveillance - Broadcast)の定義
定義:ICAO Doc 4444 PANS-ATMで定義されています。
航空機、エプロン車両、その他のオブジェクトが、データリンクを介して自動的に識別情報、位置情報、その他の適切なデータを放送方式で送受信できる手段。
(出典: ICAO Doc 4444 PANS-ATM)

ADS-Bは、航空機や空港車両が、搭載システム(GNSS等)から得られる識別情報、位置情報、その他の情報を放送する監視技術です。

ADS-BはモードS 1090ESトランスポンダー、全地球航法衛星システム(GNSS)、地上および衛星ベースの監視(受信)システムを用いて機能します。データは国際的に認められた1090MHz周波数を使用し送信され、航空管制官や他の航空機が受信することができます。米国では、18,000フィートMSL未満を飛行する航空機では978MHz(UAT:ユニバーサルアクセストランシーバー)が使用され、TIS-B(Traffic Information Service-Broadcast)やFIS-B(Flight Information Service-Broadcast)の情報も提供されます。

これにより、航空機の3D位置、速度ベクトル、識別情報などが正確に監視されます。FAA(米国連邦航空局)やEASA(欧州航空安全機関)の規制に従い、2020年以降に製造されるすべての新しい航空機は、DO-260B規格に準拠したADS-B Out機能を搭載することが求められています。

ADS-Bは、空対地通信および空対空通信の両方を実現する監視技術で、パイロットが自機の位置情報を他の航空機や航空管制官と共有することを可能にします。このシステムにより、航空機の自動分離が支援され、空域の安全がさらに強化されます。
従来のレーダー技術と比較すると、ADS-Bはより広範囲をカバーすることが可能です。レーダー信号は見通し線の制約を受けるため、山間部や広大な海域では有効に機能しないことが多いですが、ADS-B地上局や人工衛星を活用することで、これらの地域でもより正確な監視が可能です。航空機の位置に関するより正確な情報を、二次レーダーで現在可能な範囲よりはるかに低高度でも、45%広い範囲で提供します。

ADS-Bは自動的に動作するため外部の指示は不要で、搭載システムに依存して監視情報を他者に提供するため「従属型」のシステムです。データは、発信元は受信者を認識せず、問い合わせや双方向の契約もありません。放送型(ブロードキャスト Broadcast)の名称の通り、適切な受信機器を持ってれば、誰とでも情報を共有できることを意味し、したがって、航空機が情報を送信するために特別な操作をすることなく自動的にデータリンクを介して、航空機の識別情報、4次元位置情報(3次元位置情報と時間)、その他の適切なデータを送信する監視することのできる技術です。ADSデータは、レーダー画面を模した画面上で管制官に表示されます。ICAO Doc 4444 PANS-ATMでは、関係航空機の識別が明確に確立できれば、ADSを使用した航空交通管制業務が可能であると記載されています。
航空機や地上車両から、位置、高度、針路ベクトルなどの情報を他の航空機、車両、地上施設に対して放送する機能です。
ADS-Bには2つのモードがあり、ADS-B Outは、航空機の位置、速度、その他の情報を周囲に送信する機能です。これは、2020年以降、米国と欧州の空域を飛行する航空機に義務付けられています。一方、ADS-B Inは他の航空機や地上局からの情報を受信する機能であり、パイロットの状況認識を高める役割を果たします。これにより、パイロットはTIS-BやFIS-Bのデータを活用して、飛行中の空域の状況をリアルタイムで把握できます。ADS-Bは現在、ADSの主要な適用例となっています。

自動従属監視放送(ADS-B)についての詳細は、ICAO Doc 4444 PANS-ATMで示されているように、ADS-Bを使用した場合の最小水平分離基準は、レーダーまたはレーダーとの併用時と同じであると規定されています。
ADS-Bは、航空機が現在位置を測定し放送(送信) する機能と、それを受信する機能が対となって構成されます。放送形式のため、航空機の位置 は不特定の受信機により受信されます。現在ADS-Bは、1,090MHzの 拡張スキッタおよびUATの三つの通信媒体での開発が進められています。

1,090MHz拡張スキッタ
1,090MHzはSSRモードSとTCAS(Trafic Alert and Collision Avoidane System)(衝突防止装置)で使われる周波数で、航空機から発信するスキッタ(Acquisition Squitter)は24bitからなる航空機アドレスです。拡張スキッタ(Extended Squitter)はこれを112bitに拡張し、航空機の位置、速度などの情報を付加し、VDL Mode 4と同様にADS-Bの監視用データ通信を利用することができる物です。

UAT : Universal Access Transceiver ユニバーサルアクセストランシーバー
UATは、978MHzを使用した単一チャネルで伝送速度約1 Mbit/s の小形機に適した米国の放送形データリンクです。送信メッセージ長が最大で3,456 bit なのでモードSと同様に大量の情報の伝送には不向きです。2007年に国際民間航空機関で標準規格化されADS-B などに利用することができます。UATは今のところ米国内での運用に限定されています。

また、ADS-BはACARSのように通信サービスプロバイダを介さず、レーダのような見通し範囲での監視を行います。三つの通信媒体の放送項目は異なりますが、通信サービスプロバイダのネットワーク内の遅延は発生せず、放送(送信)間隔もADS-Cより短く設定できます。監視レーダが、機械的回転部分、大きな送信電波出力と受信能力および受信後のレーダ情報処理を要することに比べ、はるかに安価に監視機能を得られると期待され、実際に一部ではADS-Bの普及に伴い、監視レーダが廃止されています。
ADS-B とレーダーなどの従来の監視技術とのもう 1 つの違いは、より広い範囲をカバーできることです。電波は見通し線に制限されるため、レーダー信号は長距離 (大きな水域など) を移動したり、固体 (山など) を貫通したりすることはできません。このため、従来のレーダー監視を使用する航空管制官には大きな情報ギャップが生じます。ADS-B 地上局と衛星は、はるかに適応性が高く、レーダーが届きにくい場所に配置できるため、地形に関係なくより広い範囲をカバーできます。
ADS-Bの受信機能を航空機に搭載すれば、コクピットの画面上に周囲の航空機を表示(CDTI:Cockpit Display Traffic Information)し、管制官との交通情報の共有が可能となり、ADS-B実施への移行期間に、地上のレーダの監視情報をADS-Bデータに変換して放送す るTIS-B(Traffic Information System-Broadcast)も開発されています。これによりADS-B装備機はADS-Bの装備を持たない航空機の位置情報もCDTIに表示できるようになります。現在ADS-Bの3種類の通信方法の相互運用性の研究が行われています。

交通情報サービス放送 (TIS–B)

交通情報サービス放送(TIS-B)は、ADS-Bの機対機サービスを補完し、管制システムが把握するすべての交通情報をコックピットに提供して、完全な状況認識を実現します。すべての航空機がADS-B情報を送信していない空域では、ADS-Bリンクにとって TIS-Bは重要なサービスです。地上のTIS-B局は、未装備の対象機や他のADS-Bリンクのみで送信している対象機の監視対象情報をADS-Bデータリンクで送信します。
TIS-B上りリンクは、以下の最適な地上監視ソースから導出されます。
一次/二次監視対象のための地上レーダー
空港地表面の対象のためのマルチラテレーションシステム
他のADS-Bリンクを装備した対象のためのADS-Bシステム

マルチリンクゲートウェイサービス

地上中継局を使ってTIS-Bの相互運用性を補助し、1090ESとUATの異なるADS-B機器間で直接の機対機ADS-Bデータ共有ができない問題を解決します。ターミナルエリアでは双方のADS-Bリンクが使用されているため、ADS-B/TIS-B地上局が地対空放送を使い、1つのリンクで受信したADS-Bレポートを他方のリンクを使う航空機に中継送信します。
しかしマルチリンクには、以下のような潜在的な課題があります。
異なる2つのADS-B周波数を使う大型機と小型機が地上局を介して通信しなければならないため、地上局が単一障害点になります。ただし1090信号は二次監視レーダースキャンに依存しているため(つまり地上局なしでは運用できない)、ADS-B周波数を使う大型機と小型機が同様のシステムを使用しているように見えているが異なっている可能性があるという事です。

1機目から地上局、さらに2機目へと全経路を通過する時間が掛かるため、信号に遅延が生じます。これは2機がUATの自立型ADS-B送受信機を使う場合(直接受信)に比べ、機体が接近するほど遅延が短くなるのとは対照的です。
高度によっては航空機が地上レーダーの範囲外に出ることも多々ありますが、山などで遮蔽されレーダーが使えない場合もあり、空港周辺を除けば通常、有用性は低下します。そのため、進入、離陸、特に航行中や地上運用での活用が困難になります(本システムの主な売り物の1つでした)。このようなマルチリンクの課題から、多くのADS-Bメーカーが双方の周波数に対応したADS-Bシステムを設計しています。

運航情報サービス放送(FIS-B)

FIS-Bはテキスト気象情報、グラフィック気象情報、NOTAM、ATIS、類似の情報を提供します。FIS-BはADS-Bとは本質的に異なり、航空機や放送ユニット以外のデータソースを必要とし、また放送の周期性など、異なるパフォーマンス要件があります。
米国では、FIS-Bサービスは地上監視インフラストラクチャのあるエリアでUATを使用しての通信で提供されています。
他の潜在的な航空機ベースの放送機能として、気象データの航空機測定値の送信が考えられます。


ADS-Bは、北大西洋両側や他の地域における将来の航空交通管理ネットワークの重要な実現要因と見なされており、単一欧州空域(SES)やNextGenのパフォーマンス目標(安全性、容量、効率、環境持続可能性など)の達成に不可欠なものとして導入されました。

地上での交通分離でADS-Bを活用するには、航空機にADS-B Outが装備されている必要があります。航空機間の自己分離には、ADS-B Inと、利用可能な交通情報をパイロットに効果的に表示する手段が必要です。
空港では、空港多局監視、地上移動体レーダー、ADS-Bなどの利用可能な技術を最適に組み合わせることで、高度監視/運用統合システム(A-SMGCS)と空港統合運用が実現できます。これには、飛行デッキや地上車両での動的地図上への統合監視情報表示も含まれます。

ADS-B の環境への影響

ADS-B は航空機の飛行間隔を狭めることも可能にし、より燃料効率が良く経済的なルートを安全に取ることができるようになります。業界がレーダー監視に依存している場合、安全上の理由から航空機同士は一定の間隔をあけて飛行する必要があります。航空機がレーダー信号が届かない地形 (海や山など) を飛行する場合、ATC が受信するデータにギャップがあるため、航空機の正確な位置が把握できません。万が一に備えて、航空機は必要以上に間隔を空けて配置し、衝突を防ぐための緩衝空間を増やす配慮をしています。その結果、パイロットは直線的でない飛行経路を取らざるを得なくなり、より多くの時間と燃料が必要になる場合が多いです。
ADS-Bの導入により、この航空機同士の標準的な分離の必要性が減り、より直接的なルートを飛行できるようになれば、必要な燃料の量を減らすことでき、航空会社はコストを節約できるだけでなく、二酸化炭素排出量も削減でき、より環境に優しい飛行が可能になります。これは、IATA(国際航空運送協会)が掲げる2050年までに航空業界のCO2排出量を2005年レベルの50%に削減するという目標を達成するための大きいな手段になりまます。

ADS-Bデータの国際基準

ADS-Bの導入に際しては、データの整合性と品質が重要です。国際的な相互運用性を確保するために、航空無線技術委員会(RTCA : Radio Technical Commission for Aeronautics) と欧州民間航空電子装置機関 (EUROCAE : European Organization for Civil Aviation Equipment) によって、ADS-Bの技術基準が策定されています。これにより、異なる地域間でもデータの整合性が保たれ、世界中の空域で標準化された監視システムが利用可能になります。
ADS-Bは、国際的に認められた1090MHz周波数を使用し、モードSトランスポンダーやGNSSなどのシステムを基盤に運用されています。これにより、航空機の3D位置、速度ベクトル、識別情報などが正確に監視されます。FAA(米国連邦航空局)やEASA(欧州航空安全機関)の規制に従い、2020年以降に製造されるすべての新しい航空機は、DO-260B規格に準拠したADS-B Out機能を搭載することが求められています。
一方、地域レベルでは、米国で導入されたUniversal Access Transceiver(UAT)システムなど、他のデータリンク技術を検討することもできます。

米国におけるADS-B導入

連邦航空局(FAA)のADS-B導入は3つのセグメントに分かれ、それぞれに対応するタイムラインがあります。地上セグメントの実装と展開は2009年に開始され、米国、アラスカ、ハワイ、グアム、サイパンで、794の地上局の展開が完了しています。機上装備は利用者主導で、認識された利点による自主導入と、FAAによるADS-B義務化(規制措置)は2020年1月1日以降発効し、完了しています。
ADS-B Outを装備するコストは比較的小さく、現在レーダーがカバーしていない地域での監視に役立つと期待されています。FAAはまず第一段階として、レーダーと同等のサービスを全国航空システム(NAS)内で提供する意向です(航路上5nm、ターミナル3nmのレーダー基準(分離基準))。しかし、ADS-B Inこそが、NASの通過能力を改善し、容量を拡大する最も有望な手段と見なされています。
2008年12月、FAAはフロリダ南部でADS-Bの運用開始を承認しました。11の地上局と補助機器で構成されるこのシステムは、米国で最初に認可されたものですが、開発システムはすでに2004年からアラスカ、アリゾナ、東海岸で稼働していました。完成すれば794の地上受信局から成ります。
FAAは、メキシコ湾のATCレーダー不感地域の、油井掘削リグにADS-B(1090MHz)受信機を設置し、ADS-B拡張スキッターを装備した航空機から受信した情報をヒューストンセンターに中継して、監視範囲を拡大・改善しています。
ターミナル空域 - ADS-Bはルイビル(ケンタッキー州)、フィラデルフィア(ペンシルベニア州)の2つのターミナル空域で現在運用中です。

米国の管制空域で飛行するほぼすべての航空機は、WAAS対応のGPSナビゲーションとADS-Bデータリンク機器の導入が義務付けられています。18,000フィート以上を飛行する航空機や国際飛行を行う航空機は、1090MHzのMode S Extended Squitterトランスポンダーを使用しなければなりません。一方、18,000フィート未満の飛行では、978MHzのUATを選択することで、既存のMode CまたはMode Sトランスポンダーを保持しつつ運用できます。さらに、ADS-B「In」機能を備えた978MHz UATを導入することで、互換性のあるコックピットディスプレイで交通情報サービス放送(TIS-B : Traffic Information Service-Broadcast)や飛行情報サービス放送(FIS-B : Flight Information Service-Broadcast information)の情報が表示されます。

二次監視レーダー(SSR)モードSデータリンクは、航空機の動態情報を地上に送信するために利用されており、特にDAPsやADS-Bでの使用が一般的です。モードSは1,030MHzの質問信号と1,090MHzの応答信号を用いており、最大伝送速度は質問信号で4 Mbit/s 及び応答信号で1 Mbit/s と高速ですが、質問及び応答の信号に56 bit ないし80 bit の情報を載せ、最大で1,280ビットのメッセージを送ることができますが、大量のデータを送信するには適していません。それでも、高速なデータ通信能力を活用し、航空機の動態情報を地上側に送るDAPs(Downlink Aircraft Parameters)やADS-B などに利用されています。航空機の位置情報などをやりとりするために広く使用されています。

2010年5月27日、FAAはトランスポンダーを要する現行の全ての空域(クラスA、B、C、特定高度のクラスE)で運航する全機体に対し、2020年までのADS-B Out装備を義務化する最終規則を公布しました。

ADS-Bを、ほぼすべての航空機に特定の空域でADS-B Out機器の使用を義務付けたことです。この技術は、航空交通管制の効率を劇的に改善し、分離基準を3NMまで縮小することを可能にしました。2022年11月の時点では、既に17万3千機以上の航空機がこのADS-Bを装備しており、地上インフラの展開も完了しています。

システムの主な利点には、レーダーインフラの最適化、空港地表面での状況認識の向上、衝突回避能力の強化などが含まれます。FAAは、複数のセンサーからのデータフュージョン技術を活用し、航空安全と運用効率の継続的な改善を追求しています。

現在、FAAはADS-Bの普及に伴い、従来のレーダー管制から置き換え、レーダー縮小プロジェクトを2020年から2035年にかけて段階的に実施しており、新しい監視技術の利点を最大限に活用することを目指しています。周波数混雑の軽減や運用コストの削減も、このプロジェクトの重要な目標となっています。

欧州におけるADS-B

欧州では、単一欧州空域の監視のパフォーマンスと相互運用性に関する要件を定めた規則1207/2011と、その改正規則1028/2014および2017/386が適用されます。EUの規制により、欧州でIFR/GATを運航する全ての航空機はMode S基本監視に準拠する必要があり、最大離陸重量が5700kgを超える、または最大巡航真対気速度が250ノットを超える航空機はMode S高度監視とADS-B Outの要件にも準拠する必要があります。新規製造機と改修機の両方に対し、2020年6月7日までの準拠が義務付けられています。ただし、国営機には特別な規定(例外措置を含む)があります。

アプリケーションについては、ADS-B標準化作業が完了しています。これにより、次の安全性、性能、相互運用性要件が策定されました。

- 無レーダー空域でのADS-B(ADS-B NRA) 
- レーダー空域でのADS-B(ADS-B RAD)
- 空港面監視のためのADS-B(ADS-B APT)   
- 大西洋上の追従間隔遵守手順でのATSAW(ATSAW ITP)
- 進入時の視覚分離でのATSAW(ATSAW VSA)
- 飛行中のATSAW(ATSAW AIRB)  
- 空港面でのATSAW(ATSAW SURF)

加えて、初の間隔維持アプリケーションの標準化も完了し、以下の安全性、性能、相互運用性要件が策定されました。

- 飛行デッキ間隔管理(ASPA-FIM)

さらに、将来のADS-Bアプリケーション(間隔維持、分離、自己分離)に関する作業が、SESAR(欧州)およびNextGen(米国)で進行中または計画されています。将来のアプリケーション規格はEUROCAE/RTCAの共同作業で開発される予定です。

航空機装備
機内の「ADS-B Out」機能は、関連する航法システム(GNSSや気圧高度計など)とインタフェースするトランスポンダーによって実現されます。多くの航空機では、すでにMode S高度監視の導入とあわせてADS-B拡張スキッター機能が装備されています。

「ADS-B In」機能には、受信機、処理システム(トラフィックコンピューター)、HMI装置(一般に交通情報コックピット表示装置(CDTI)と呼ばれる)が必要です。「ADS-B In」システムは前方視界に統合されるか、ElectronicFlightBag(EFB)の形態を取ることができます。

ADS-Bを運用利用するには、規制当局による認証と運用承認が必要で、関連する認証文書には、無レーダー空域でのADS-B用のEASA AMC 20-24、「ADS-B Out」用のCS-ACNSがあります。

地上装置  
航空機や空港車両から送信されるADS-Bデータは、ADS-B地上局で受信されます。
ほとんどの場合、ADS-B地上局の出力は監視データ処理・配信システムに送られ、そこで他の監視センサー(レーダーや多局監視など)からの入力と融合されて、ユーザー向けの交通状況画像が生成されます。

ADS-Bデータ
送信されるADS-Bデータは、関連する規格と認証文書(例えば無レーダー空域でのADS-B用のEASA AMC 20-24、「ADS-B Out」用のCS-ACNS)で定義されています。

監視の近代化
欧州では、EUROCONTROLは監視近代化に関して、欧州ATMネットワークの監視システムの性能に基づく近代化と合理化をサポートしています。これには、地上監視(ADS-B、多局監視、Mode S)と航空機搭載監視アプリケーションの両方が含まれます。短期的な導入と長期的なSESARプロジェクトの両方をサポートしています。

欧州の監視近代化は以下のように進んでいます。
- レーダーが無い空域では、ADS-Bを単独で、または多局監視と組み合わせて導入。数千機の航空機に搭載された現行の認証済み装備を利用。
- レーダー空域では、多局監視とADS-Bを組み合わせたシステムを導入。当初は多局監視を使用し、その後ADS-Bを追加使用。ADS-B利用には、監視性能・相互運用性規則(SPI IR) - EU規則1207/2011とその改正によって求められる、アップグレードされたADS-B avionic が必要。

欧州委員会施行規則(EU) No 1207/2011およびその最初の改正1028/2014は、欧州空域の監視に関するパフォーマンスと相互運用性の義務化を定めています。

本規則では、IFR/GAT(計器飛行方式/一般航空交通)を運航する航空機に対して、Mode S基本監視(ELS)の搭載と運用を義務付けています。適用時期は2020年6月と設定されています。 
また、本規則はIFR/GATを運航し、最大離陸重量が5700kgを超える、または最大巡航対気速度が250ノットを超える航空機に対し、Mode S高度監視(EHS)とADS-B 1090MHz拡張スキッターの搭載と運用を義務付けています。適用時期はやはり2020年6月と設定されています。

監視は、単一のレーダーのみから、複数の種類のセンサーへと急速に移行しています。25を超える欧州諸国で、数十の多局監視システムと1300を超えるADS-B地上局が導入されています。ADS-Bや多局監視の導入に取り組んでいる欧州諸国には、アルメニア、オーストリア、アゼルバイジャン、ブルガリア、チェコ、キプロス、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ジョージア、ギリシャ、アイスランド、アイルランド、イタリア、ラトビア、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、スペイン、スウェーデン、トルコ、英国、ウクライナなどがあります。導入国の多くが現在、多局監視データを運用ATSに利用しています。並行して、一部の欧州諸国ではADS-Bを運用ATSに使い始めており、アイスランド、ポルトガル、ノルウェー、英国がその例です。

現在はADS-B地上受信機が使用されていますが、2019年以降は宇宙からのADS-B受信も運用利用可能になっています。  

すでに数千機の航空機が無レーダー空域でのADS-B運用に認証を受けています。さらに、2018年5月時点で2500機を超える航空機がSPI施行規則に準拠したアップグレードADS-B Out avionicsを装備していることが観測されています。SPI施行規則に基づくavionics実装はMode SとADS-B拡張スキッターの両方をカバーしており、これにより機内装備が「将来に対応」するものとなり、現在または将来的に使用される全ての監視技術をサポートできます。ADS-B avionicsの要件にはトランスポンダのADS-B v2(ED102A/DO260B)へのアップグレードと、低遅延のGNSSレシーバー-トランスポンダー配線が含まれます。

航空機搭載監視(コックピット内の監視)に関しては、初期の航空交通状況認識 (ATSAW:
Airborne Traffic Situation Awareness)アプリケーションが2012年2月から欧州で運用されています。この時点から、数千便の運用便がATSAWを利用しています。これは任意の実装に基づくものですが、今後ADS-B装備機の増加と、エアライン側に恩恵をもたらす追加の航空機搭載監視アプリケーションの普及に伴い、航空機搭載監視の実装はさらに進むことが期待されています。
監視システムの統合と合理化は、ADS-Bによって促進されています。この良い例として、航空機側ではACASハイブリッド監視、地上側ではADS-Bと多局監視の組み合わせシステムがあげられます。ADS-Bや多局監視の導入を含む監視の近代化は、欧州だけでなく世界中の他の大陸でも進んでいます。

その他のADS-Bの状況

オーストラリアとカナダでは、すでに2009年からADS-Bに基づく運用ATSが提供されています。オーストラリアではIFR運航全てにADS-Bが義務付けられています。カナダでのADS-B導入は、ADS-B装備機に対する運用上の恩恵(ハドソン湾、グリーンランド、大西洋上空域でのADS-B基づくATS提供など)に基づいています。カナダではADS-B義務化を検討中です。

ADS-Bおよび/または多局監視の導入に関する取り組みは、以下を含む世界中の全大陸で行われています。

- アフリカ(コンゴ、エチオピア、ギニア、シエラレオネ、リベリア、ナミビア、南アフリカ)
- 中南米(ブラジル、ペルー、トリニダード・トバゴ)
- アジア(アフガニスタン、中国、香港、フィジー、インド、インドネシア、日本、クウェート、キルギス、マレーシア、フィリピン、カタール、サウジアラビア、シンガポール、台湾、タジキスタン、タイ、UAE、ベトナム)
- オセアニア(ニュージーランド)

ADS-Bのプライバシー

航空機から送信される飛行データを傍受することは、それ自体が法に触れることはありませんし、趣味としてこれらを受信する人もいます。また、世界各国のこのような趣味を持つ人たちから受けとったデータをまとめてリアルタイムに表示させるWEBサービス(Flightradar24)などで誰でもこれらの情報に容易にアクセスできるようになっています。

Flightradar24などのWEBサービスの利用方法などについて以下で詳しく説明しています
ADS-Bを受信するフライト追跡表示サービス 航空機のリアルタイム運行状況 ATCの話3

この技術は悪いことを企む人間にも利用される可能性がありますが、現時点では適切な解決策はありません。悪用の懸念が広がっているため、全米ビジネス航空協会(NBAA)は積極的に技術革命を模索しており、FAAは対象となる航空機のプライバシーを改善するため、プライバシーICAOアドレス(PIA)プログラムを開始しました。

プライベートジェット機を所有する、芸能人、起業家、政治家などのファンやストーカーたちは彼らを追跡する方法を見つけ出したため、セキュリティ上の懸念が増大し、なかには、この問題が原因でプライベートジェット機を売却することにした著名人もいるそうです。
広範な飛行データ追跡に伴う関心の高まりと潜在的な脅威を考慮すると、経営幹部、著名人、および関係者は継続的なセキュリティ リスクを理解し、それに対抗するための装備を備える必要があります。

追跡アプリケーションの操作
航空機データは長い間、公に記録されており、消費者が航空便を追跡することは新しいことではありませんが、テクノロジーの進歩と、有名人や富裕層の生活への関心の高まりにより、それが注目のトピックとなっています。
ジェット追跡アカウントは、自動従属監視放送 (ADS-B) データ、GPS、衛星追跡などのさまざまなテクノロジーを使用して、航空機の活動に関連する情報を収集および公開します。これらのアプリケーションは、メーカー、モデル、登録番号、所有権など、航空機に関する関連詳細を送信します。
アメリカでは、FAA によって義務付けられた ADS-B は、航空管制官に航空機の正確な位置を提供し、空中衝突の防止に役立ち、地上の人々がいつでも航空機の位置を知ることができるようにします。
追跡アプリケーションは、レーダー システム、飛行計画ソース、公開 Web サイトや航空愛好家フォーラムからのデータを統合することもできます。追跡アプリの仕組み、追跡アプリが収集するデータ、および追跡アプリがもたらす潜在的な脅威を理解することで、航空機の所有者と運航者はプライバシーのニーズをより適切に評価し、これらのリスクを軽減するための適切な対策を講じることができます。

潜在的なリスク
ADS-B は、ストーキング、嫌がらせ、または有名人の居場所を盗み見ることを目的としていません。航空機の安全な飛行の為の機器が、人々の安全を危険にさらしてしまう事が懸念されており、そのようなデータを悪用する悪者が常に存在します。データは暗号化されておらず、一般に公開されているため、誰でもデータを入手し、その情報を使って好きなことを行うことができる可能性があるということです。
そこで、FAA は、プライベート ジェットの所有者が匿名の識別コードを申請できるように、プライバシーICAOアドレス(PIA : Privacy ICAO Address)プログラムとして知られるサービスを開始しました。善意とはいえ、これは手間のかかるプロセスであり、コードは 60 日間ロックインされます。FAA はまた、航空機の所有者が公共の追跡から尾翼番号を編集できるようにする、 LADD(Limiting Aircraft Data Displayed:航空機データ表示制限)と呼ばれる無料サービスも提供しています。

オープンソースのフライト追跡アプリケーションは有用な可視化ツールとして機能しますが、十分なリスク管理戦略が実装されていない場合、危険なシナリオにつながる可能性がある重大なセキュリティ リスクももたらします。
リアルタイム追跡により、テロから直接の衝突、窃盗、ストーキング、誘拐に至るまで、航空機や個人に対する標的型攻撃が発生する可能性があります。
それほど危険ではない状況では、風評被害につながる可能性があります。

企業スパイ活動は、あまり議論されていない脅威ですが、競合他社が著名な幹部の出張パターンを監視し、企業活動や戦略についての洞察を得ることができれば、発生する可能性があります。デジタル面では、プライベート ジェット追跡アプリが膨大な量の機密飛行データを収集して保存しているため、システムの脆弱性を悪用しようとするサイバー犯罪者の格好の標的となっているとも言われています。
米国のFAAは、送信されたADS-B情報のプライバシーへの懸念に対処するため、2つのシステムを用意しています。

プライバシーICAOアドレス(PIA : Privacy ICAO Address)プログラム:機体所有者が一時的なICAO航空機アドレスを要求でき、自身の機体が民間航空機登録簿(CAR)に割り当てられることを防ぐことができるプログラムで、航空機のプライバシー向上を目的としています。

LADD(Limiting Aircraft Data Displayed:航空機データ表示制限)プログラム:FAA(連邦航空局)がADS-B Outデータの利用可能性に関するプライバシーとセキュリティの懸念に対応するために開発されました。
機体所有者または指定の代理人が、FAAに対して航空機データの(共有を制限)表示制限(正式には遮断)または遮断解除を要求できます。FAAのデータを利用する飛行追跡サービスは、その情報を遮断することに合意しています。ただし、データは暗号化されておらず、非FAAソースからは入手可能な場合があります。
LADDプログラムは、以前から行われていたプライバシー保護の取り組み(Block Aircraft Registry Request(BARR)プログラム)を発展させ、FAAが第三者に共有するデータに特化しています。このデータは、そのデータがどのような方法で取得されたかにかかわらず、対象となります。

LADDプログラムでは、航空機追跡業者に以下の要件を課しています
  • 公開表示システムで航空機データの表示をブロックできる能力を示すこと
  • FAAが提供するLADDリストに含まれる航空機の登録番号、コールサイン、またはフライト番号を公開表示からブロックすること
  • LADDリストに含まれている航空機について、過去のデータを公開表示しないこと
LADDはまた、プライバシー保護を侵害した第三者に対して、FAAがより厳しい罰則を課すことを可能にします。これには、FAAのフライト追跡データの受信停止や終了が含まれる可能性があります。

LADDはFAAのデータシステムを通じて使用されるデータのみを対象としています。非FAAの第三者データソースは、ADS-B Outの信号から直接ICAO航空機アドレスを取得することが可能です。このデータへのアクセスに関するプライバシーの懸念に対処するため、FAAは「プライバシーICAOアドレス(PIA)」プログラムを作成しました。これは、運航者がCivil Aviation Registry(CAR)に登録された情報に紐づけられない代替の一時的なICAO航空機アドレスを使用できるようにするものです。最大限のプライバシーを確保するためには、LADDとPIAの両方のプログラムに参加することが推奨されていますが、絶対確実にプライバシーを保護できるわけではありません。

LADDリクエストの提出方法
FAAが航空機データを共有することを望まない運航者は、FAAの専用LADDウェブサイトでのオンラインフォーム、メール、郵送の方法でLADDリクエストを提出できます。

LADDリクエストの選択肢
LADDリクエストを提出する際、運航者は以下の3つのオプションから選択できます。
  1. FAAソースブロッキング
    航空機のフライト追跡データは、FAAから航空機追跡業者に送信されなくなります。この設定が有効になると、運航者自身も業者を通じて自分のフライトを追跡することができなくなります。
  2. サブスクライバーレベルのブロッキング
    航空機追跡業者はFAAからフライト追跡データを受け取ることができますが、そのデータを公開することは許可されません。このオプションを選択すると、特定の追跡業者と契約して自分のフライトを追跡できます。FAAは現在、特定の第三者業者にのみデータを共有できるオプションを検討中ですが、この機能はまだ提供されていません。
  3. ブロック解除/ブロックなし
    以前にブロックされていた航空機データのブロックを解除するオプションです。航空機のフライト追跡データはFAAからすべての業者に送信され、業者はそのデータを公開することができます。
FAAは、毎月の第1木曜日に表示ステータスの変更を実施します。毎月15日までに受理されたLADDリクエストは、翌月に反映されるようです。

ADS-B の広範な用途

ADS-Bデータは航空交通管理を超えて、さまざまな分野で利用されています。フライト運用、地理空間情報、国境管理、財務分析など、さまざまな分野での応用が進み、商業用途や政府機関での活用が増えています。
現在、空港面監視装置モデルX(ASDE-X)や高度面移動監視制御システム(A-SMGCS)など、航空機と空港地上車両の両方からトランスポンダー応答を利用して、面運用の安全性と効率性を高めるシステムが導入されています。多くの主要空港では、ATIS放送でタキシング運用時のトランスポンダー運用が指示されています。さらに一部の空港では、空港多局監視、地上移動体レーダー、自動従属監視放送(ADS-B)などの利用可能な技術を最適に組み合わせることで、A-SMGCSシステムと空港統合運用が実現されています。

MLAT(マルチラテレーションシステム)[multilateration system] 

WAM(広域マルチラテレーションシステム) [Wide Area Multilateration]
マルチラテレーション(Multilateration)とは多点測量と言われています。  
航空機のトランスポンダから送信される二次レーダー(SSR)の信号(スキッタ)を空港内の3カ所以上の受信局で受信して、受信時刻の差から航空機等の位置を測定する監視システムです。航空機の位置は、受信局A-B間及び受信局B-C間の距離により計算された双曲線の交点として求められます。夜間・悪天候時など、管制塔からの視界が悪い状況でも航空機の位置を正確に把握することができ、安全かつ効率的な航空管制を行う事ができます。
空港面に存在する航空機や地上の空港内を走行する車両等を対象に監視するマルチラテレーションを広範囲に展開して、空港周辺上空を航行する航空機や、空港に離着陸態勢にある航空機の監視についても立体的に監視可能にしたものを広域マルチラテレーションシステムWAM [Wide Area Multilateration]と呼びます。

マルチラテレーションの特徴
空港面探知レーダー(ASDE)がカバーできない領域(ブラインドエリア) を監視可能です。
○航空機便名を画面表示可能
○悪天候においても性能が劣化しない
○航空機側は追加装備等の改修不要

目標検出から便名表示までの流れ

各目標の検出・測位は以下のフローに沿って行われます。
目標検出 
通常、航空機に搭載されているモードSトランスポンダからDF11(捕捉スキッタ)もしくはDF17(拡張スキッタ)のスキッタが定期的に出力されています。
MLATはまずこの信号を各受信局で受信し測位を行う。この段階では目標はMode-Sアドレスのみで識別されます。
質問信号送出
次に目標の追加情報を取得するため、送信局から各目標毎にUF4とUF5での質問を行います。なおこの質問は、ターミナルSSRモードSレーダーに影響のない頻度(約10sec毎)で定期的に質問されます。
応答信号検出
質問信号に対するDF4(気圧高度)、DF5(識別コード)を受信し測位を行います。
この応答によりMode-Sアドレス、気圧高度、識別コード(DBC)の情報が一元化されます。
便名表示
識別コード(DBC)をフライトプラントと照合することにより、目標に便名を付加します。

MLATで使用するMode-S信号(DF,UFの詳細)
MLATでは既存の他のシステムへの影響を考慮して、必要最小限の信号及び送信出力にてその動作を行っています。
UF (Uplink Format):航空機トランスポンダへの質問信号
UF4:気圧コード要求信号
UF5:識別コード(DBC)要求信号
(UF11:Mode S only all-callは使用しない)

DF (Downlink Format):航空機トランスポンダ等からの応答信号
DF4:気圧コード応答
DF5:識別コード(DBC )応答信号
DF11:捕捉スキッタ
ランダム間隔(約1sec)のMode-Sアドレスを含む自発信号
DF17:拡張スキッタ
ランダム間隔(約0.5sec)のMode-Sアドレス、位置情報、速度情報、航空機便名などを含む自発信号(ADS-B)
DF18:拡張スキッタ(非トランスポンダ)
メッセージ内容はDF17と類似
空港車両、一時的な空港面障害物、覆域テスト・校正ツールなどの用途に使用

ADS-C 契約型自動従属監視 (Automatic Dependent Surveillance - Contract)

航空機の飛行管理システム(FMS: Flight Management ATS System)と地上管制機関(ATSU: ATS unit)の管制システム間でACARS(Aircraft Communication, Addressing and reporting System)のデータリンクを用いて通信を行います。管制システムは航空機側システムに対して位置清報データの送信 を要求します。これをADS情報と呼び、地上管制システムはこのADS情報により、レーダー画面と類似した画像を表示器に出力できます。ADS-Cは通信ネットワークによって情報が得られるため、地球の反対側にいる航空機の位置も表示可能になります。これらの特性からオーストラリアでは、1999年から最も初期のアプリケーションを用いてレーダーのカバー範囲外での航空交通監視に ADS-Cが使用されてきました。最大4か所まで同時送信可能であるため、複数の管制機関および航空会社でも導入され、利用されています。

ADS-Cは、航空機に搭載されたシステムを使って、航空機の位置、高度、速度、航路意図の要素、気象データなどの同様の情報を、監視および/または航路遵守モニタリングのため、1つ以上の特定の航空交通管制施設(ATSU)またはAOC施設に対してのみ自動送信します。
航空機からのデータ提供は、地上システムが保有するADS契約の条件の下で行われる要求に応じて生成されます。この契約では、航空機から送信されるべきレポートの種類と条件が特定されています。一部の情報は全てのレポートに含まれますが、他の情報はADS契約要求で指定された場合にのみ提供されます。航空機はまた、航空機とADS契約を結んでいる任意のATSUに対して、自発的にADS-C緊急レポートを送信することができます。

ADS-Bと同様に、ADS-C(契約型自動従属監視)も航空交通管制へ定期的で高精度な位置報告を送信します。しかし、ADS-Cの「契約」の部分は、航空機と地上局の間で地上局が確立するある種の契約を指します。この契約は地上局によって確立され、管理されます。
この契約には、要求契約、定期契約、イベント契約、緊急契約などがあります。
契約の中で、航空機からの報告の条件(報告の送信頻度、含まれるデータ項目など)が地上局から指定されます。したがって、ADS-Cでは地上局が航空機から受け取る監視データを柔軟にコントロールできます。

ADS情報を提供する航空機と、ADS メッセージの受信を必要とする地上施設間の、交渉された1対1のピア関係に基づいています。例えば、ADS レポートはFANS(Future Air Navigation System)で使用され、通信プロトコルとしてACARS(Aircraft Communications Addressing and Reporting System)が採用されています。レーダー無線圏域(例:海洋上や極域)を飛行中、航空機は定期的に管制空域にレポートを送信します。

ATSUシステムは、単一の航空機に対して、定期契約とイベント契約を含む複数の同時ADS契約を要求できます。さらにその上で、任意の数の要求契約を追加できます。最大5つの別々の地上システムが、単一の航空機に対してADS契約を要求できます。  

ADS契約の種類
ATSUはログオン要求を受信した後、ADS-Cレポートを受け取る前に、航空機とADS契約を確立する必要があります。ADS契約には3種類あります。
a) 定期契約
b) 要求契約
c) イベント契約  

航空機システム上でADS-Cがオフに設定されていない限り、地上システムは運航クルーの操作なしでADS契約を確立できます。運航クルーは、ADS-Cをオフに設定することで全ての契約をキャンセルできます。また、一部の航空機システムでは、特定のATSUとのADS契約のみをキャンセルできます。

定期契約
定期契約では、ATSUが以下を指定できます。
a) 航空機システムがADS-Cレポートを送信する時間間隔
b) 定期レポートに含められる任意のADS-Cグループ。各任意グループには、そのグループが定期レポートに含められる頻度を定義する一意の剰余(例えば剰余5なら、5回に1回の割合でグループが含まれる)が設定可能。
要求契約  
要求契約では、ATSUが単一のADS-C定期レポートを要求できます。要求契約は、航空機に対する他のADS契約をキャンセルまたは変更するものではありません。

ADS-Cアプリケーションは緊急アラートもサポートしています。ADS-C緊急レポートは、「緊急」とタグ付けされた定期レポートで、緊急事態をATCに強調表示します。

ADS-C緊急はクルーにより以下の様々な方法でトリガーされます。
a) 手動でADS-C緊急機能を選択  
b) 間接的に他の緊急アラートシステム(CPDLCポジションレポートの送信やSSR緊急コードの選択など)をトリガー
c) 秘匿的(機種によりその機能の有無は異なる)
一度ADS-C緊急がトリガーされると、通常はアビオニクスシステムが運航クルーがADS-C緊急機能を解除するまで、ADS-C緊急定期レポートの送信を継続します。

イベント契約
イベント契約では、ATSUが特定のイベントが発生した際にADS-Cレポートを要求できます。ATSUは航空機に対して同時に1つのイベント契約しか確立できませんが、そのイベント契約には複数のイベントタイプを含められます。任意のイベントタイプには以下が含まれます。
a) 経路点変更イベント(WCE)
b) 高度範囲逸脱イベント(LRDE) 
c) 横間隔逸脱イベント(LDE)
d) 垂直速度変化イベント(VRE)

イベント契約は、ATSUがそれをキャンセルするか、レポートをトリガーするイベントが発生するまで有効です。経路点変更イベント契約では全ての経路点変更でレポートがトリガーされます。その他のイベント契約では、最初の発生時にレポートがトリガーされ、必要であれば、ATSUは希望するイベントタイプ全てを示した新しいイベント契約を要求する必要があります。

ADS-Cレポート
航空機システムは、ADS-Cレポートの異なるグループに、特定の航空機データを送信します。各グループには異なるデータタイプが含まれています。ADS-Cイベントレポートには一部のグループのみが固定で含まれますが、ADS-C定期レポートには、ATSU 契約要求で指定された任意のADS-Cグループを含めることができます。ADS-Cレポートグループは以下の通りです。
基本グループ
飛行識別グループ 
地球基準グループ
空力基準グループ
機体識別グループ
気象グループ
予測航路グループ
固定予測意図グループ
中間予測意図グループ

ATSUはADS-Cレポートを様々な目的で利用できます。これには以下が含まれます。
- 従来の時間ベースの離隔最小値の設定と監視
- 距離ベースの離隔基準の設定と監視  
- 通過済みの経路点をフラグ付け
- 下流の経路点の到着予想時刻更新
- 航路と高度の遵守状況監視
- ADS-C位置シンボルと関連する外挿の表示更新
- アラートの発生と解除
- ADS-C緊急事態の発生と解除
- 気象情報の更新
- ATSUが保有する運航計画の他の情報の更新

ADS-C の運用原理、機能、長所の詳細については、ICAO GOLD : Global Operational Data Link Document (世界運用データリンク文書) のセクション2.2.6を参照してください。  


SATCOMシステム(衛星通信システム)は、国際民間航空機関(ICAO)によって定義された3つのカテゴリに分類され、それぞれ異なる世代を表し、段階的に厳しい性能要件が課せられています。

**Performance Class C SATCOMシステム**:  
これらはすでに運用されており、現行のSATCOMに関する標準および推奨方式(SARPs : Standards and Recommended Practices)に準拠しています。具体例として、INMARSAT Classic AeroやSB Safety、Iridiumが含まれます。

**Performance Class B SATCOMシステム**:  
これはClass Cの次世代システムで、Baseline 2 ATS(航空交通サービス)の要件をサポートするシステムです。INMARSAT SwiftBroadband/Irisや、Iridium NEXTコンステレーション(Iridium Certusサービス)がこれに該当し、AMS®サービスを提供することが期待されています。

**Performance Class A SATCOMシステム**:  
これは、将来のSATCOMシステムで、Class Bシステムを補完するものです。これらの新しいSATCOMシステムは、将来の航空性能要件(Baseline 3、B3、ATS要件)を満たすことを目指しています。ICAOは、新しいシステムの配備と運用には長期間を要すること、特にSATCOMシステムの設計には長い準備期間が必要であることを考慮しています。

また、**FCI(Future Communications Infrastructure)**の文脈では、SATCOMは地上通信システムとともに、IPS(Internet Protocol Suite)通信とPerformance Class Aをサポートする将来のSATCOMコンセプトを可能にします。これらはSESAR、NextGen、CARATSといった航空交通管理(ATM)近代化プログラムの中で開発されています。特にSESARでは、生命の安全に関わる通信および航空会社運用管理(AOC)のSATCOM通信に焦点が当てられており、これらはAMS(R)S(航空移動衛星(ルート)業務)としてITUによって割り当てられた周波数帯で運用することが許可されています。


航空業界において、ACARS(エーカーズ : Aircraft Communications Addressing and Reporting System)は、航空機と地上局間で短いメッセージを送受信するためのデジタルデータリンクシステムです。このシステムは、航空無線帯または衛星を介して通信を行います。このプロトコルは、ARINCによって設計され、テレックス形式を使用して1978年に展開されました。

ACARSの歴史

航空機にデジタル通信が導入される以前は、すべての通信はVHFまたはHF(長距離)無線を介した音声で行われていました。
航空業界では、飛行乗務員と客室乗務員の給与は、航空機が空中にいるか否か、地上にいる場合はゲートにいるかどうかによって異なっていました。飛行乗務員(パイロット)は、これらの時間(OOOIイベント)を地理的に分散した無線オペレーターに音声で報告していました。航空会社は、偶発的または意図的な不正確さを排除するために、自己申告による時間報告をなくしたいと考えていました。そうすることで、乗務員の作業負担を減らし、報告を受け取る人間の無線オペレーターの削減などコスト削減とデータの整合性を向上させるために、効率化を図ろうとしました。

航空会社は航空機からの正確で最新のデジタル通信の必要性を認識し、1978年にARINCの技術部門によってACARSが導入されました。
ARINC(Aeronautical Radio, Incorporated)は、主要な輸送通信システムプロバイダーで、1929年、主要航空会社4社により、政府外部で無線通信の単一ライセンスと調整者を提供するために組織されました。2013年にRockwell Collinsに売却されました。
ACARSは当初「Arinc Communications Addressing and Reporting System」の略でしたが、後に現在知られている「Aircraft Communications, Addressing and Reporting System」に変更されました。
最初のアビオニクス規格はARINC 597で、これはドア、パーキングブレーキ、オンホイール重量センサーのための個別の入力を持つACARSマネジメントユニットを定義し、飛行フェーズを自動的に判断し、テレックスメッセージとして生成・送信するものでした。また、既存のVHF音声無線を介して報告を送信するために使用されるMSKモデムも含まれていました。ACARSのグローバル標準は、Airlines Electronic Engineering Committee (AEEC)によって準備されました。ACARSの運用初日には約4,000件のデータ処理がありましたが、主要航空会社で広く使用されるようになったのは1980年代になってからでした。

初期のACARS
システムは、その後数年間で拡張され、デジタルデータバスインターフェース、飛行管理システム、サーマルプリンターを搭載した航空機をサポートするようになりました。

システムの説明と機能
ACARSは、機上装置、地上装置、およびサービスプロバイダーで構成される完全な空地システム全体を指す用語です。
機上ACARS装置は、空地サブネットワークを通じてメッセージをルーティングするルーターを備えたエンドシステムで構成されています。
地上装置は、AFEPS(Arinc Front End Processor System)と呼ばれる中央サイトコンピューターによって管理される無線トランシーバーのネットワークで構成され、メッセージの処理とルーティングを行います。一般的に、地上ACARS装置は、連邦航空局などの政府機関、航空会社の運航本部、または小規模航空会社や一般航空向けの第三者サブスクリプションサービスのいずれかです。通常、政府機関は許可を担当し、航空会社の運航部門はゲート割り当て、整備、乗客のニーズを処理します。

地上処理システム
地上システムの提供は、参加する航空航法サービスプロバイダー(ANSP)または航空機運航者のいずれかの責任です。航空機運航者は、しばしばこの機能をデータリンクサービスプロバイダー(DSP)または別のサービスプロバイダーに委託します。航空機からのメッセージ、特に自動生成されたメッセージは、メッセージタイプに応じて事前に設定することができ、適切な受信者に自動的に配信されます。地上発信のメッセージも同様に、正しい航空機に届くように設定することができます。

航空機上のACARSシステムは、DSPによって地上のシステムとリンクされています。ACARSネットワークはポイントツーポイントのテレックスネットワークをモデルにしているため、すべてのメッセージは中央処理場所に来てルーティングされます。ARINCとSITAが主要な2つのサービスプロバイダーで、一部の地域では他の小規模な運用も行われています。複数のサービスプロバイダーがある地域もあります。

ACARSメッセージの種類
ACARSメッセージは、大きく3種類に分類されます:
  1.  航空交通管制メッセージ:許可の要求や提供に使用されます。
  2.  航空運航管理メッセージ
  3.  航空会社管理メッセージ
管理メッセージは、航空機とその基地局との間で通信するために使用され、ARINC Standard 633に従って標準化されているか、ARINC Standard 618に従ってユーザー定義されています。このようなメッセージの内容には、OOOIイベント、飛行計画、気象情報、機器の健全性、接続便の状況などが含まれます。

OOOIイベント
ACARSの主要な機能の一つは、業界でOOOIイベントと呼ばれる主要な飛行段階(ゲートアウト、離陸、着陸、ゲートイン)を自動的に検出し報告することです。これらのOOOIイベントは、ドア、パーキングブレーキ、支柱に取り付けられた航空機センサーからの入力を使用して検出されます。各飛行段階の開始時に、ACARSメッセージが地上に送信され、飛行段階、その発生時刻、および搭載燃料量や飛行の出発地と目的地などの他の関連情報が記述されます。これらのメッセージは、航空機と乗務員の状況を追跡するために使用されます。

飛行管理システムインターフェース
ACARSは飛行管理システム(FMS)とインターフェースし、飛行計画や気象情報を地上からFMSに送信するための通信システムとして機能します。これにより、航空会社は飛行中にFMSを更新することができ、飛行乗務員は新しい気象条件や代替飛行計画を評価することができます。

機器の健全性と整備データ
ACARSは、航空機のさまざまなシステムやセンサーの状態に関する情報をリアルタイムで地上局に送信するために使用されます。整備上の不具合や異常事象も、詳細なメッセージとともに地上局に送信され、航空会社が機器の健全性を監視し、修理や整備活動をより適切に計画するために使用されます。

Pingメッセージ
自動化されたPingメッセージは、航空機と通信局との接続をテストするために使用されます。航空機のACARS装置が事前に設定された時間間隔より長く沈黙している場合、地上局は航空機に対してPing(直接または衛星経由で)を送信することができます。Pingへの応答は、ACARS通信が正常であることを示します。

手動で送信されるメッセージ
ACARSは、コックピット内の対話型ディスプレイユニットとインターフェースしており、飛行乗務員はこれを使用して、気象情報や許可の要求、接続便の状況などの技術的なメッセージやレポートを地上局との間で送受信することができます。地上局からの応答も、ACARSを介して航空機で受信されます。各航空会社は、自社のニーズに合わせてACARSをこの役割にカスタマイズしています。

ACARSの仕組み

ACARSは、航空機と他の局(例えば、航空会社の運航管理部門や整備部門)との間でテキストベースのメッセージを送受信することを可能にします。これには、OOOI(Out, Off, On, In)メッセージの送信や、飛行中の最新の気象情報の要求などが含まれます。

メッセージの送受信は、SITAやARINCなどのデータリンクサービスプロバイダー(DSP)が担当します。

航空機でのACARSメッセージの受信方法は以下の3つがあります:
  1. VHF(超短波):見通し線内の短距離通信用。VHFデータリンク(VDL)とも呼ばれます。
  2. HF(短波):HFデータリンク(HFDL)とも呼ばれ、海上や極地域を含む長距離通信に機能します。
  3. SATCOM(衛星通信):人工衛星(インマルサット)を利用して通信するため極地域を除く地球上のほとんどの場所で利用可能です。

ACARSメッセージは3種類あります
  1. 航空交通管制(ATC):最も一般的な使用例は、出発前許可(PDC)や洋上許可(OCX)などの許可取得です。また、D-ATIS(デジタル自動ターミナル情報提供システム)もATC機能に含まれます。
  2. 航空運航管理(AOC):通常のフライトでパイロットが頻繁に使用する機能で、出発前のロードシート受信、飛行中の最新気象情報の取得、遅延の報告、更新された飛行計画の要求などに使用されます。また、ダイバージョンや緊急時に運航管理部門に即時に情報を提供する手段としても機能します。さらに、エンジンの健康状態やECAM(電子集中航空機監視装置)警告の自動報告、飛行時間(OOOI)の報告、ゲート割り当てなども含まれます。
  3. 航空会社管理(AAC):旅客情報リスト(PIL)など、関連する管理情報を提供する機能です。PILには乗客の接続便情報や空席情報などが含まれます。
Multi-Function Control and Display Unit (MCDU) 
FMCの入出力装置、CDU(Control Display Unit)
飛行管理コンピュータ(FMC:Flight Management Computer)
通常、メッセージが操縦室で受信されると、センターコンソールのプリンターに自動的に印刷されます。パイロットはFMS(Flight Management System)(ボーイング機)またはMCDU : Multi Function Control Display Unit(エアバス機)を使用して返信や追加情報の要求を行うことができます。

フライトでのACARSの使用例:
  1. プレフライト段階:最新のATIS(D-ATIS)を要求し、予想される出発を計画し、離陸性能を計算します。また、目的地の最新の天気予報を要求することもあります。
  2. 最新のATISを入手後、出発前許可(PDC)要求を航空機タイプ、受信したATIS、ゲート番号と共にATCに送信します。
  3. 最終的な燃料量を決定後、その数値とともにロードシート要求を荷物計画部門に送信します。
  4. フライト中、自動化されたメッセージ(OOOIメッセージ、整備管理への自動報告など)が航空会社の運航部門に送信されます。
  5. 空中では、定期的な航路上および目的地の天気予報の要求以外に、ACARSは運航管理部門への位置と到着予定時刻の更新、整備部門へのECAM/EICAS(エンジン表示および乗務員警報システム)の警告や注意事項の報告を行います。
  6. 洋上横断点に近づくと、OCX(洋上許可要求)を送信し、要求する巡航高度を伝えます。
  7. 目的地に近づくと、運航管理部門への更新情報の送信、予想駐機位置の要求、移動制限のある乗客(PRM)の支援要求などの情報を送信します。
  8. 最後に、ゲートで降機する際に飛行時間を印刷し、飛行記録に記入します。

ACARSのOOOIシステム

OOOIデータ(Flight Event Data Store: FEDS)
航空機の4つの重要なイベント時刻の測定源の精度を比較しています。これらのイベントは、出発ゲートからのプッシュバック、出発滑走路からの離陸、到着滑走路への着陸、到着ゲートへの到着を指し、一般的に(gate) Out, (wheels) Off, (wheels) On and (gate) In
(ゲートアウト、車輪オフ、車輪オン、ゲートイン、略して「OOOI」と呼ばれています。OOOIタイムは、予測の基礎や遅延の計算に使用されるため、非常に重要です。そのため、OOOIデータの完全性と正確性が十分であることが重要です。

OOOIは「Out(出発)」「Off(離陸)」「On(着陸)」「In(到着)」の略称とも言えます。これらは航空機の動きを示す重要なイベントの時間を表しています。
  1. Out(出発):The out of gate 航空機がゲートを離れる時間(「ブロックアウト」とも呼ばれます)。通常、最後のドア(客室ドアまたは貨物室ドア)が閉まり、パーキングブレーキが解除されたときにセンサーが記録します。
  2. Off(離陸):The time of take-off 離陸の時間。航空機が滑走路を離れる際に作動する「車輪離地」センサーによってトリガーされます。
  3. On(着陸):The on time is the landing time 着陸の時間。航空機が地面に接地したときに「車輪接地」センサーによって記録されます。
  4. In(到着):The in time is the time of arrival at the gate ゲートに到着した時間。パーキングブレーキがセットされ、エンジンが停止されたときにトリガーされます。

OOOIシステムの仕組み
  1. 航空機の各種センサーが関連する時間をトリガーし、機上のコンピューターシステムに記録します。
  2. 時間はUTC(協定世界時)または「ズールータイム」で記録され、ACARSを通じて航空会社の運航部門に送信されます。
  3. パイロットは、FMS/MCDU(飛行管理システム/多機能制御表示装置)の ATSU:Air Traffic Services Unit(航空交通業務ユニット)セクションを通じて、機上でOOOI時間にアクセスできます(これは飛行記録の記入の際に役立ちます)。
OOOIの用途
航空業界で各飛行フェーズの正確な時間を記録することは極めて重要です。その理由は以下の通りです:
  1. 整備部門:航空機の飛行時間と「サイクル」(離着陸回数)を把握し、必要な整備点検を計画するために使用します。
  2. 運航部門:空港、乗客、サービスプロバイダーなど、さまざまな関係者に航空機の動きを更新するために必要です。
  3. 乗務員管理部門:乗務員の飛行時間を記録し、さまざまな制限時間を超過しないようにするために使用します。
このように、OOOIシステムは航空機の運航管理において非常に重要な役割を果たしていますが、元々は、航空業界の地上と上空での賃金体系が異なるなるため、勤務時間を厳格に計算する目的で、これらのデータの計測記録をする必要があったことが導入の背景にあるようです。

航空管制と宇宙機(人工衛星)

比較的導入の早かったADS-Cと比較的新しく導入されているADS-Bの順にまとめています。

宇宙ベースADS-C【ADS-Cで使用されている人工衛星】

インマルサット(INMARSAT)

SATCOMと呼ばれる航空用の通信を担う人工衛星、インマルサット(INMARSAT)
海上の安全を確保するため静止衛星を利用して、海事用途の音声通話とデータ通信サービスを提供するために設立された国際機関で、国連の海事機関である国際海事機関(IMO)の要請により、1976年に28カ国が署名した「国際海事衛星機構(インマルサット)に関する条約」の発効に合わせて、国際海事衛星機構 (INMARSAT:International Maritime Satellite Organization)として 1979年7月に設立された非営利の政府間組織です。

小型の通信装置が開発されたのを受けて、1980年代に国際民間航空機関と調整して、INMARSATを規定する条約は、特に公共の安全のための航空通信の改善を含むように改正されました。サービスの対象を陸上・航空機へも拡大したため、1994年12月に機関の名称を国際移動通信衛星機構(IMSO:International Mobile Satellite Organization)に変更しましたが、インマルサット(INMARSAT)の名称はそのまま使い続けられています。

インマルサット衛星は赤道上空36,000kmの位置に配置された4機の静止衛星で、極地を除く全世界をカバーしています。
4つのエリアに1機づつ、I6F1(IOE)インド洋、I4F2(APAC)アジア太平洋、
I4F3(AMER)アメリカ、I4F4(EMEA)ヨーロッパの4つのエリアで、全世界をカバーし通信の中継を行っている。また、それぞれの海域に予備衛星が配備され、現用衛星に何らかの障害があった場合に備えています。

衛星データ通信は、IMARSAT衛星を利用したアメリカ航空無線協会(ARINC:Aeronautical Radio Inc)とヨーロッパの国際航空通信機構(SITA:Sociate Internaional de Telecommunications Aeronauliques)により開発、提供されおり、航空用の衛星データ通信は1990年から運用されています。
航空機にアナログ音声/FAX/データをClassic Aeroという名称のサービスで提供しています。端末には 3 つのレベルがあり、Aero-L (低ゲイン アンテナ) は主にACARSおよび ADS を含むパケット データ用(600bps)、Aero-H (高ゲイン アンテナ) は中品質の音声および FAX/データ (9.6kbps)、Aero-I (中ゲイン アンテナ) は低品質の音声および FAX/データ (4.8kbps) 用です。Inmarsat-C および mini-M/M4 の航空機定格バージョンもあります。電話、FAX、Data、ISDN64k、MPDS を航空機提供する通信システムはSwift 64 と呼ばれるサービスもあり、データ転送速度(64kbps)で運用されています。

INMARSAR-3
Inmarsat-3
Störfix, Public domain, via Wikimedia Commons

第3世代(Inmarsat-3衛星)
1996-1998年に打ち上げられたもので、赤道上空35,786kmの静止軌道上に位置し、4基(太平洋、インド洋、大西洋-西、大西洋-東)で世界をカバーしていました。
第4世代(Inmarsat-4衛星)
Lバンド(アップリンク1.6GHz、ダウンリンク1.5GHz)を使用する静止衛星で、割当/通信帯域幅は共に34MHzで、アップリンク、ダウンリンク共に、432kbpsの通信に対応しています。2016年現在、提供サービスはBGAN及びIsatPhone(GSPS)で、2006年以降、3基(太平洋、インド洋、大西洋)打ち上げられている。2020年には衛星の寿命を迎えるため、運用終了し、後継機の第6世代(Inmarsat-6衛星)に運用が引き継がれていく予定です。地上局との通信にはCバンド(アップリンク6GHz、ダウンリンク4GHz)を使用している。地上局は全てインマルサットの直轄設備となっている。
第5世代(Inmarsat-5衛星)
Kaバンド(アップリンク30GHz、ダウンリンク20GHz)を使用し、割当帯域幅は3500MHz、通信帯域幅は100MHzでアップリンク5Mbps、ダウンリンク50Mbpsの高速通信に対応しています。提供サービス名は、Global Xpress(GX)。第4世代のLバンドとは互換性がありせん。Lバンドに比べて周波数が高くなるため、高速通信が可能ですが、降雨による影響と衛星追尾の必要精度が上がってしまいます。
第6世代(Inmarsat-6衛星)
2015年末にエアバス・ディフェンス・アンド・スペースに2機発注され2021年から打ち上げられました。第4世代はLバンド、第5世代はKaバンドしかサービスしていませんでしたが、第6世代ではLバンド・Kaバンドの両方をサービスし、既存のBGANおよびGlobal Xpressの通信容量が拡張されます。シリーズの初号機が2021年12月23日に三菱重工業のH-IIAロケットで打ち上げられました、4世代1号機の運用を引き継ぎましたが、2023年02月18日に2月にファルコン9で打ち上げられた2号機は定軌道に向かう途中で電源系のトラブルに見舞われ、サービスを開始できませんでした。
これらの衛星と地上設備(端末)の間で、音声通話、FAX通信、データ通信、テレックス、インターネット等の送受信が可能で、この場合の地上設備とは、船舶電話、陸上可搬電話、航空機電話などを指します。これらの端末はアンテナの大きさや利用出来る機能によりインマルサットA/B/C/D/M/ミニM/Fleet/Aero/BGAN/GXの10種類に分類されています。

軌道上昇に電気推進のみを使用するエアバス ディフェンス アンド スペースのユーロスター プラットフォームのE3000e型をベースにしています。衛星は、この電気推進技術によって可能になる質量削減を活用し、次世代のデジタル処理ペイロードを極めて大型化したデュアル ペイロード ミッションを実現します。

Inmarsat-6 F1(I-6 F1) と Inmarsat-6 F2(I-6 F2) は、太陽電池パネルの展開時全幅47メートル、重量 5470kgの大きさで、9mの大型 Lバンドアンテナと 9つのマルチビーム Kaバンドアンテナを搭載し、高い柔軟性と接続性を備えています。新世代のモジュラー デジタルプロセッサは、最大8000チャネルのルーティングの柔軟性と、Lバンドの200を超えるスポットビームへの動的な電力割り当てを提供します。Kaバンドスポットビームは、ビームへの柔軟なチャネル割り当てにより、地球全体にわたって操縦可能です。

I-6 は、従来の Inmarsat-4 (I-4) 世代の L バンド衛星に比べて、ビームあたりの容量と出力が2倍になります。つまり、同じ帯域幅でより多くのデータを伝送できるということです。

インマルサット
衛星名国際衛星識別符号
NSSDCA/
COSPAR ID
衛星カタログ番号
catalog number/
NORAD ID
打ち上げ日
Inmarsat-3 シリーズ
Inmarsat-3 F11996-020A238391996-04-03
Inmarsat-3 F21996-053A243071996-09-06
Inmarsat-3 F31996-070A246741996-12-18
Inmarsat-3 F41997-027A248191997-06-03
Inmarsat-3 F51998-006B251531998-02-04
Inmarsat-4 シリーズ
Inmarsat-4 F12005-009A286282005-03-11
Inmarsat-4 F22017-003D419202013-12-08
Inmarsat-4 F32008-039A332782009-01-07
Inmarsat-4 F4
(AlphaSat)
2013-038A392152013-07-25
Inmarsat-5 (GX) シリーズ
Inmarsat-5
F1 (GX-1)
2017-003D419202013-12-08
Inmarsat-5
F2 (GX-2)
2017-003B419182015-02-02
Inmarsat-5
F3 (GX-3)
2017-003F419222015-08-28
Inmarsat-5
F4 (GX-4)
2017-003E419212017-05-15
Inmarsat-5
F5 (GX-5)
2017-003A419172019-11-26
Inmarsat-6 シリーズ
Inmarsat-6 F1
I6 F1
2021-128A503192021-12-22
Inmarsat-6 F2
I6 F2
2023-022A556832023-02-18


宇宙ベースADS-B【ADS-Bを搭載している人工衛星】

Spire, Iridium NEXTなど

航空管制にかかわりのある衛星で馴染み深いのは、インマルサットやMTSAT(運輸多目的衛星: Multi-functional Transport Satellite)などが思い浮かぶと思いますが、これらの衛星にはADS-Bを受信するための設備が搭載されていません(いませんでした)。
衛星の ADS-B 受信機は、航空機の ADS-B トランスポンダーからの送信を受信します。現在、ほとんどの政府で ADS-B の装備が義務付けられているため、ほとんどの航空機は改造や追加機器なしで宇宙ベースの ADS-B をすぐに利用できることになります。
2014年に起きたマレーシア航空機消失事件を機に導入が進められ、北アメリカとヨーロッパでは2020年に義務化されています。

衛星ベースのADS-B技術

衛星利用型ADS-B (SBA:Space-Based ADS-B)技術は、従来の地上ベースの監視システムではカバーしきれない広大な海域や僻地、山岳地帯でも航空機を追跡することが可能な技術です。これは、従来のADS-Bが持つ利点をさらに拡張し、地上局に頼らずとも、衛星を通じて世界中の航空機の位置をリアルタイムで監視できる点が特徴です。

従来の地上ベースのレーダーシステムでは、海上や山岳地帯、極地などの広範囲をカバーすることが難しいという制約がありました。しかし、衛星ベースのADS-B技術を使用することで、これらの地域でも正確な航空機の位置を把握することが可能になりました。これにより、従来は難しかった地球全域の24時間監視が実現され、世界中の航空機の動向を一元的に管理することができるようになります。
現在、飛行する航空機の位置情報は航空機運航者が使用している既存の衛星群(インマルサット)を使用する ACARS データリンク メッセージを介して従来の位置レポートを受信して​​おり、今後もこの方法を継続します。ただし、航空会社の航空機のうち衛星データリンクを装備しているのは一部であり、ACARS データリンクを提供するインマルサットは、現代の航空機が頻繁に利用するルートである北極では機能しませんし、航空機をこれらの衛星群で追跡するには、高価なハードウェアと高額な利用料が必要です。一方、宇宙ベースの ADS-B は、カバレッジ ギャップのない位置情報を得る為に、通常は追加の機器を必要としません。

衛星の ADS-B 受信機は、航空機の ADS-B トランスポンダーからの送信を受信します。現在、ほとんどの政府で ADS-B の装備が義務付けられているため、ほとんどの航空機は改造や追加機器なしで宇宙ベースの ADS-B を利用することができます。

安全性と効率性の向上
衛星ベースのADS-Bは、特に洋上のルートを利用する航空機にとって非常に重要です。例えば、北大西洋や太平洋のような広大な海域では、従来のレーダーによる監視範囲の制限がありましたが、衛星技術を用いることで、これらのエリアを飛行する航空機の安全性が大幅に向上しました。また、これにより航空機の飛行経路の最適化が可能となり、燃料の節約やCO2排出量の削減にもつながります。
従来の地上ベースの監視では、地理的制約によって空白が生じることがありましたが、衛星ベースのADS-B技術では、そうした監視の空白が解消されます。これにより、より一貫性のある航空機の追跡が可能となり、特に長距離国際便において信頼性の高い運航が可能です。

捜索救難(SAR)と緊急事態対応

衛星ベースのADS-Bは、捜索救難(SAR : Search And Rescue)活動においても大きな利点をもたらします。航空機が地上局の範囲外でトラブルに見舞われた場合でも、衛星を介してリアルタイムで位置情報を把握できるため、迅速な救助活動が可能となります。特に、海上や遠隔地での緊急事態対応において、この技術の存在は非常に重要です。
レーダーカバー域と同様、行方不明機の位置情報の履歴が得られるようにもなります。

衛星(宇宙)ベースのADS-B収集
ADS-B信号を人工衛星で受信することは、ADS-Bの重要な前進となります。2013年にESAのPROBA-Vで初めて試験され、Spire Globalなどの企業が低コストの小型衛星を使って導入を進めています。もともと地球上のどこでも電話/データ通信を提供するために作られた低軌道(LEO)の衛星ネットワークを利用しています。また、Iridiumを使ってスペースベースADS-Bに取り組んでいます。衛星の下を飛行する航空機からADS-B位置データを取得することで、以下の機能が可能となります。
監視ベースの分離基準を使った管制が、現在レーダーがカバーしていない海上や地域でも可能になります。現在、大洋上や遠隔地ではより大きな間隔の航法分離基準を使用しています。
このシステムは1090MHzで送信されるADS-Bしか受信できないため、一般的に航空会社機やビジネス機に限定されます。しかし小型機は低高度で山により信号が遮られ、レーダーの範囲外になることが多いと考えられます。また、腹部専用アンテナを備える小型民間機では、機体が信号を遮ってシステムが機能しない(上空の衛星まで電波が届かない)恐れがあります。

FAAの衛星利用型ADS-B (SBA:Space-Based ADS-B)の背景

• 2017年以降、FAAは既存の衛星利用型ADS-B(SBA)実装の広範かつ厳密な評価を、機関の義務付けられた取得管理システム(AMS)プロセスの下で実施してきました。
• 評価には、洋上分離の削減を可能にするためのSBAの分析、ならびに他の領域や分離以外のアプリケーションでの使用が含まれていました。
• このレビューに基づき、FAAは既存のSBA実装にいくつかの制限があることを特定しました。

SBA導入の決定

• 慎重な検討の結果、FAAは現時点で利用可能なSBA実装を進めないことを決定しました。
  - 米国が管理するICAO空域での使用において、限界的な利点に対するコストが高すぎる
• FAAは、この技術に関する業界との関与に資源を再集中し、市場の能力を再評価し、将来の投資検討のために他の実装アプローチが実行可能かどうかを判断しています。
• FAAは、モントリオールで開催された最新のICAO航空監視作業部会会議で最終SBAレポートを提供しました。
このような理由で今のところはFAAがATCへのSBA実装を控えるようです。

SBAに関するFAAの業界関与

• 2023年4月、FAAは将来のコスト効率の良い技術的に受け入れ可能なSBA展開の潜在的オプションを特定するために市場調査を実施しました。
• FAAは関心のある複数のベンダーから回答を受け取りました。
• ベンダーの回答には、技術的能力、準備状況、資金調達、および市場調査の要件に基づくFAAとのパートナーシップの可能性に関する情報が含まれています。
• FAAは現在、ベンダーの回答を検討中です。

Iridium衛星は非常に低い軌道を飛行するため、(地上受信用に設計された)トランスポンダーやADS-Bの出力を確実に受信できます。
より低い高度で大気抵抗が大きいため、Iridium衛星は比較的頻繁に交換されます。つまりこのシステムをIridiumに早期導入できます。Iridium衛星は軌道が赤道上に固定されていない為極域を含む全世界をカバーすることができます。

2016年9月、Aireon社は FlightAwareと提携し、この宇宙ベースADS-Bデータを航空会社に提供し、マレーシア航空370便の事案を受けてICAOが義務付けた世界規模の航空無線遭難時システム(GADSS)の航空会社側監視要件を満たせるようにしました。2016年12月、Flightradar24はGomspaceと2016年の宇宙ベース追跡に関する契約を結びました。
その後、SpaceXは2017年1月14日から2019年1月11日にかけて8回の打ち上げで、稼働66機と予備9機のIridium衛星を軌道に投入しました。さらに6機の予備衛星が地上にあります。

ICAOは宇宙ベースADS-Bを発展途上国にとっての空域監視能力の均等化技術と位置付けています。2020年までに34の国がこのシステムを導入予定で、アフリカのAsecna加盟17か国、中米のCocesna航空管制機構などが含まれます。北大西洋航路の更新頻度が上がり、経度方向の分離を40nmから14nm(74kmから26km)に、そして横方向の分離を23nmから19nm(43kmから35km)に縮められました。FAAはカリブ海空域で2020年3月から2021年まで評価を実施し、信頼性の低いグランドターク島レーダーに代わって、分離を30nmから5nm(55.6kmから9.3km)に縮小する計画です。
参考:
DO-242A — ADS-B MASPS. Describes system-wide operational use of ADS-B.
Satellite (space-based) ADS-B Collection
最小航空システム性能基準(MASPS:Minimum Aviation System Performance Standards)

スパイア・グローバル社
Spire社は、多目的ナノ衛星群を利用した世界規模のフライト追跡データを提供するプロバイダーです。航空業務をサポートするために、過去およびリアルタイムのフライト追跡データと気象データの両方へのアクセスを提供しています。衛星(Lemur-2)の受信機により、広大な水域や山脈など、地上データ サービスでは不可能な遠隔地でも、ADS-B 信号を介してデータを取得できます。つまり、24 時間年中無休で、より完全な世界規模のカバレッジを提供できるのです。

人口衛星「Lemur-2」の受信機データは、航空会社、他の航空機運航会社、および一般の人々も、飛行中の民間航空機の現在位置をリアルタイムに知ることができるウェブサイトFlightradar24(フライトレーダー24)と提携して、データを提供しているようです。

2018年初頭、合計7回の打ち上げミッションを行い、28機の新規衛星を運用スタートさせました。従来の地上レーダーではカバーできない孤立した地域や海域を飛行する航空機を管制官や企業が常時監視することを可能にするため、現代の航空業界の新たな標準としてますます認識されつつあります。
2018年5月21日、アンタレス230ロケットに搭載されたシグナスCRS-9に搭載された4機の衛星が打ち上げられ、シグナスがISSを離れた後に展開されました。ADS-B信号を受信できる最初のLemur-2衛星ででした。

Lemur-2 (Low Earth Multi-Use Receiver-2)
最大 175 基の飛行ユニットを維持するように設計された軌道高度400~600kmの低軌道
ナノ衛星 (3U CubeSat)コンステレーションです。重量は4 kgと衛星としては超小型です。
キューブサットの3Uサイズは、縦10cm×横10cm×高さ30cmです。
1U = 10cm立方,1kgを基準とした規格で、2U(10*10*20cm), 3U(10*10*30cm), 6U(10*20*30cm), 12U(20*20*30cm)

2018年、最初に打ち上げられた Lemur-2衛星
衛星名国際衛星識別符号
NSSDCA/COSPAR ID
衛星カタログ番号
catalog number/
NORAD ID
打ち上げ日
Lemur-2 78
 (Lemur-2 TomHenderson)
2018-046H435612018-05-21
Lemur-2 79
(Lemur-2 Yuasa)
2018-046G435602018-05-21
Lemur-2 80
(Lemur-2 Alexander)
2018-046F435592018-05-21
Lemur-2 81
(Lemur-2 Vu)
2018-046E435582018-05-21

2018年に打ち上げられたユニットは、2023年2月には運用終了しています。このように衛星の寿命が短いおよそ5年という事がわかります。

イリジウムの衛星ベンチャーのエアリオン社の航空機追跡サービス
Iridium Communications社 の Iridium NEXT 低軌道通信衛星群に Aireon ペイロード(ADS-B受信機)を搭載しています。

Iridium Next 衛星は、地球から780 km離れた軌道に配置されています。
サイズは、3.1m × 2.4m × 1.5mです。ソーラーパネル展開時の翼長が9.4mです。
打ち上げ質量: 約860kg 搭載ペイロードは最大50kgです。
2017年1月に、Aireon社は最初のADS-BペイロードをIridium Next衛星に搭載して打ち上げ、展開しました。最初の打ち上げに続いて7回の打ち上げが行われ、2019年1月の8回目の最後の打ち上げで衛星コンステレーションが完成し、軌道上のAireonペイロードの総数は75個(運用ペイロード66個、予備ペイロード9個)になりました。

2017年1月、最初に打ち上げられた Iridium Next衛星
衛星名国際衛星識別符号
NSSDCA/
COSPAR ID
衛星カタログ番号
catalog number/
NORAD ID
打ち上げ日
Iridium 1022017-003D419202017-01-14
Iridium 1032017-003B419182017-01-14
Iridium 1042017-003F419222017-01-14
Iridium 1052017-003E419212017-01-14
Iridium 1062017-003A419172017-01-14
Iridium 1082017-003H419242017-01-14
Iridium 1092017-003C419192017-01-14
Iridium 111 2017-003K419262017-01-14
Iridium 1122017-003J419252017-01-14
Iridium 1142017-003G419232017-01-14

Aireon の受信機データは、航空会社、他の航空機運航会社、および一般の人々にデータを提供するために Aireon と提携している FlightAware(FlightAware.com) を通じて、Aireon の宇宙ベースの ADS-B データを処理し、API と Web ベースの製品を通じて配信しています。
Web サイトやモバイル アプリを通じて包括的な無料のフライト追跡を提供しています。
FlightAware の地上 ADS-B ネットワークの拡大を継続するために、FlightFeeders の生産とPiAware ソフトウェアの開発をして、2020年現在、世界中に 27,000 台以上の受信機が稼働しています。

装備された航空機向けのADS-B とレーダー、およびデータリンク接続の包括的なネットワークを備えていますが、Aireon の宇宙ベースの ADS-B は、高価な衛星アップリンク機器を備えていない航空機も含め、すべての航空機に高頻度の飛行追跡を提供し、海洋、ジャングル、砂漠、極地でのカバレッジギャップを解消します。宇宙ベースの ADS-B は、これらのサービスを即時かつ世界中で提供します。

航空管制サービスプロバイダー(ANSP)に初めて、海洋、極地、遠隔地を含む世界中のどこでも航空機をほぼリアルタイムで継続的に追跡する機能を提供する合弁会社であるAireonによって使用されます。

Aireon サービスは、Iridium NEXT 衛星に組み込まれた宇宙対応の自動従属監視ブロードキャスト (ADS-B) 受信機を使用しています。現在のレーダーベースの監視システムは、世界の 10% 未満しかカバーしていませんが、Iridium NEXT 衛星を利用することで、航空交通監視および管理機能を地球全体に拡張できます。相互接続された衛星の低軌道 (LEO) システムである Iridium NEXT コンステレーションは、コスト効率の高い方法で ADS-B カバレッジを世界中に提供するシステムです。

グローバル コントロール- 世界中のどの空域でも、ADS-B を搭載した航空機の正確なほぼリアルタイムの可視性を航空管制官に提供します。
グローバル カバレッジ- ADS-B の機能を、一般的に使用されている地上航空路を超えて、地球上のあらゆる場所の海洋、極地、遠隔地、レーダー システムのない広大な未開発地域にまで拡張します。
グローバル セーフティ- あらゆる飛行経路の航空交通を正確かつほぼリアルタイムで表示できるようになり、世界中の安全性が向上します。
グローバル最適化- 飛行経路と高度の最適化、効率と燃費の向上、遅延と混雑の削減を可能にすることが可能になります。


余談:ADS-B、ADS-C、それ以外のADS

~航空監視技術の名称にまつわる興味深い考察~

航空監視技術の世界では、ADS-Bの「B」は「Broadcast(放送)」の頭文字で、航空機から広く情報を放送する性質を表しています。ADS-Cの「C」は「Contract(契約)」の略で、航空機と地上局の間で事前に合意された契約に基づいてデータ交換の方式を意味しています。この2つの方式がよく知られています。

面白いことに、これらの技術方式名の頭文字「B」と「C」が偶然にも並んでしまったがゆえに、私たちの頭の中で自然とアルファベット順の連想が働いてしまいます。「ちょっと待って、『B』と『C』があるなら、『A』はどこにいったの?」「『D』や『E』もあるのかな?」といった具合に、想像してしまうのは、人間の思考の面白いところです。このような疑問も自然なものです。航空技術の世界は真面目で厳格なイメージがありますが、このような「命名の偶然」が、ちょっとしたユーモアと空想の余地を与えてくれるのは、たいへんもおもしろいのではないでしょうか。
ADS-B、ADS-C以外のADS、特にADS-A、ADS-D、ADS-Eについて少し掘り下げて考えてみることにします。

ADS-Aの謎

興味深いことに、ADS-Aという用語がごく稀に使用されることがありますが、これはADS-Cの別称として使用される場合で「A」は「Addressed(アドレス指定)」を意味し、特定のアドレス(受信者)に向けてデータを送信する性質を表しています。これは、「C」の「Contract(契約)」の特徴を別の視点で表現ものであるということができます。
しかし、これは公式な呼称ではなく、混乱を招く可能性があるため、公式文書では一般的にADS-Cが使用されます。航空関連の学術論文や技術文書を調査すると、ADS-BとADS-Cに関する多数の言及が見つかりますが、ADS-Aに関する独立した記述はほとんど見られません。これは、この用語が一般的に使用されていないことを示唆しています。このことからも、ADS-Aは、むしろ私たちの「アルファベット順連想ゲーム」に油を注ぐような存在かもしれません。

名前の由来と想像上の新技術

※実際には存在しませんが、もし新たな技術でADSの新しい規格が出来るとしたら、それがたまたま「D」や「E」が頭文字の特徴を持ったものであれば「ADS-D」や「ADS-E」が出てくるかもしれません。
想像上のADS-D:「D」を「Dynamic(動的)」と仮定してみましょう。例えば、この技術は航空機の周囲の環境に応じて動的にデータ送信レートや内容を変更する能力を持つかもしれません。混雑した空域では詳細な情報を高頻度で送信し、空いている空域ではデータ量を減らすといった具合です。
架空のADS-E:「E」を「Enhanced(強化)」と想像してみましょう。この技術は、現在のADS-BとADS-Cの機能を統合し、さらに機械学習アルゴリズムを用いて航空機の将来の位置や意図を予測する機能を持つかもしれません。

未来の技術

航空業界の研究開発は、既存のシステムの改良や、これらを補完する新技術の開発に焦点を当てています。私たちが想像したADS-DやADS-Eのような技術が、実際に開発される日が来るかもしれません。例えば、ADS-Dの動的データ送信技術は、増加する航空交通量に対応しつつ、通信帯域を効率的に利用するのに役立つかもしれません。一方、ADS-Eの予測機能は、航空管制官の業務を支援し、より安全で効率的な空域管理を実現する可能性があります。
結論として、ADS-BとADS-Cの命名は、偶然にもアルファベット順に見えてしまう面白さがありますが、実際にはシステムの性質を即座に理解できるように各技術の主要な特性や運用方法を反映した命名なのです。

ATC(航空管制)関連を詳しくまとめました。
UTMとATC (航空交通管理) の現状と将来の展望 ATCの話1
ADS-Bを受信するフライト追跡表示サービス 航空機のリアルタイム運行状況 ATCの話3

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人口集中地区 DID(Densely Inhabited District) ドローンを飛行させる場合の許可が必要な飛行なのかどうかを判断する為の重要な基準になっている統計データの人口集中地区(DID)データが、 2022年6月25日から これまで利用していた平成27年版から、新しい 令和2年版 に、変更になりました。 これまで人口集中地区でなかった場所でも新たに人口集中地区とされている場合や、逆にこれまでDID地区であった場所でも除外されている場所など、変更されている場合があるので注意が必要です。 日本の国勢調査において設定される統計上の地区で、 人口密集地区の英語"Densely Inhabited District"の頭文字を取って「DID」とも呼ばれています。 市区町村の区域内で人口密度が4,000人/ km² 以上の基本単位区(平成2年(1990年)以前は調査区)が互いに隣接して人口が5,000人以上となる地区に設定されます。ただし、空港、港湾、工業地帯、公園など都市的傾向の強い基本単位区は人口密度が低くても人口集中地区に含まれています。都市的地域と農村的地域の区分けや、狭義の都市としての市街地の規模を示す指標として使用されます。 令和2年の国勢調査の結果に基づく人口集中地区は、国土地理院が提供している「地理院地図」、および政府統計の総合窓口が提供している、「地図で見る統計(jSTAT MAP)」を利用して確認可能です。 情報の内容はは同じですので使いやすいお好みの物を利用すると良いと思います。 国土地理院 地理院地図    ・  人口集中地区令和2年 (総務省統計局)    e-Stat 政府統計の総合窓口  ・  地図で見る統計 (jSTAT MAP)    国土地理院 地理院地図  人口集中地区令和2年(総務省統計局) 確認方法 人口集中地区令和2年 (総務省統計局)    国土地理院 地理院地図  人口集中地区令和2年(総務省統計局)のキャプチャ

二等無人航空機操縦士 学科試験問題 模擬試験

無人航空機操縦者技能証明 学科試験(二等無人航空機操縦士)の学科試験とサンプル問題 新しいライセンス制度と詳細の発表が航空局よりありました。 無人航空機操縦士 学科試験のサンプル問題は下記PDFです。 操縦ライセンス制度 学科試験(二等)サンプル問題 https://www.mlit.go.jp/common/001493224.pdf <実施方法> 全国の試験会場のコンピュータを活用するCBT  (Computer Based Testing) <形 式> 三肢択一式(一等:70問 二等:50問) <試験時間> 一等:75分 二等:30分 <試験科目> 無人航空機に関する規則、無人航空機のシステム、無人航空機の操縦者及び運航体制、運航上のリスク管理 ※令和6年(2024年)4月14日(日)より、 学科試験の内容は、「無人航空機の飛行の安全に関する教則 (第3版)」に準拠します。 と発表されました。 詳細は「 【重要!!】無人航空機操縦士・学科試験の内容が、変わります 」にアップしました。 無人航空機の飛行の安全に関する教則 新しくできた無人航空機操縦者技能証明の制度で「一等無人航空機操縦士」「二等無人航空機操縦士」の国家試験の学科の教科書の基になるものです。この教則の内容や範囲から試験問題も作られるています。 令和5年(2023年)4月13日に改訂された、 無人航空機の飛行の安全に関する教則(第3版) は以下にリンクします。 https://www.mlit.go.jp/common/001602108.pdf 無⼈航空機操縦士の学科試験のための教則について詳しく解説を、以下でご覧ください。 「無人航空機の飛行の安全に関する教則」(第3版) 令和5年(2023年)4月13日【教則学習】 教則の読み上げ動画を作成しました 詳しくは 無人航空機の飛行の安全に関する教則 第3版 読み上げ動画 二等無人航空機操縦士 学科試験 模擬試験 「二等無人航空機操縦士」のサンプル問題に基づいて模擬テストを作りました。 回答終了後に 「送信」 をクリックして続いて出てくる 「スコアを表示」 をクリックすると採点結果が表示されます。発表によるとCBT式試験というコンピュータを利用した試験になるようですので、似た雰囲気ではないかと思います。メールアドレスの情報は収集しておりません...

世界の時間とタイムゾーン・JST、UTCとズールータイム【教則学習・周辺知識】

協定世界時(UTC)、日本標準時(JST)、グリニッジ標準時(GMT)、国際原子時(TAI)、世界時(UT) 時間を表現するための基準が複数あります。これは、世界各国で、それぞれに昔から使用されていた、それぞれ文化にも深くかかわる時間の基準があり、これらを一度に切り替えることが難しかったためで、そのため、しばしば混乱が生じる場合がありました。人、物、そして、情報が世界を行きかう事により、徐々に世界中で統一した基準を用いるような流れになりました。また、科学技術の発展によって精度を増した基準の観測・利用方法が進みましたが、やはり全ての時刻を統一することは困難なため、複数の基準が存在しています。 観測データなど扱う場合必ず「何時(いつ)、when」測定した物なのかという情報は測定値とセットで扱われる大切な要素です。この要素が抜けたり、正しくなければ、データの価値がなくなってしまう場合もあります。 気象観測や、航空機の運航、コンピュータの時間など、昔より世界が狭くなってしまった現代、正確な時刻は当然、必要ですが、その時刻が、どの基準で示されているものなのかを意識しなければならいことも増えてきています。 Samuel P. Avery, 129 Fulton St, NY (wood engraving); Centpacrr (Digital image) ,  Public domain, via Wikimedia Commons 世界時が採用される前の「すべての国」の相対的な時間を示す1853年の「ユニバーサルダイヤルプレート」 グリニッジ標準時(GMT) G reenwich  M ean  T ime グリニッジ標準時(GMT)は、ロンドンのグリニッジにある王立天文台の平均太陽時で、真夜中から数えたものです。(真夜中が午前0時という事)過去には正午から計算されるなど、様々な方法で計算されていたようです。そのため、文脈がわからない限り、特定の時刻を指定するために使用することはできません。(時代によって時間が異なることがあります。)GMTという用語は、タイムゾーンUTC+00:00の名称の1つとしても使われ、イギリスの法律では、イギリスにおける市民時間(ローカルタイム)の基準となっています。 英語圏の人々はしばしば、GMTを協定世界時(UT...

フォネティックコード「アルファー・ブラボー・チャーリー」通話表【教則学習・周辺知識】

アルファベットや数字を無線通信・電話(口頭)で正しく伝える方法 「アルファー」「ブラボー」「チャーリー」このような、暗号のような、呪文のような言葉を航空業界では使用されることが比較的多いので耳にする機会があるのではないでしょうか。これは、フォネティックコード(Phonetic Code)と呼ばれるアルファベットや数字を正しく伝える為の工夫です。スペリングアルファベットとも呼ばれ、アルファベットにどのような言葉を当てはめるかは、国際規格として定められています。ですから、通常は世界どこに行っても通用するものとされています。通信で使用されるだけでなく、共通の知識として前触れなくあられることがありますので、知っておいて損はないと思います。 第一次世界大戦後、音声を利用する双方向無線が開発され、普及する以前、低品質の長距離電話回線での通信を改善するために、電話のスペルアルファベット(Spelling Alphabet)が開発されたました。 アルファベットの「B」ビーと「D」ディーや「M」エムと「N」エヌのように、発音が似ているものを聞き間違えることなく伝えることを目的として、定められたアルファベットの通話表での置き換えます、航空機や船舶などの通信で主に利用されています。また、コールセンターなど対面できない際の電話での通話の間違いを防ぐためにも、利用されているようです。航空業界に関わり合いのある、旅行業界やホテル業界などでも利用されることがあるそうです。 このフォネティックコードを用いると、BとDは「ブラボー」と「デルタ」、MとNは「マイク」と「ノベンバー」になりますので、発音が似ているアルファベットも間違えずに伝えることが出来ます。 フォネティックコード表 アルファベット 読 み A ALFA アルファ B BRAVO ブラボー C CHARLIE チャーリー D DELTA デルタ E ECHO エコー F FOXTROT フォックストロット G GOLF ゴルフ H HOTEL ホテル I INDIA インディア J JULIETT ジュリエット K KILO キロ L LIMA リマ M MIKE マイク N NOVEMBER...

「無人航空機の飛行の安全に関する教則」(第3版) 令和5年(2023年)4月13日【教則学習】

無人航空機操縦者技能証明の「一等無⼈航空機操縦士」と「二等無⼈航空機操縦士」の学科試験の土台となる教則 無人航空機の飛行の安全に関する教則が令和5年(2023年)4月13日に改訂 され(第3版)が公開されました。 無⼈航空機操縦士の学科試験のベースになる教則ですが、これまで、学科試験の内容は「無人航空機の飛行の安全に関する教則(第2版)」に準拠していましたが、 ※令和6年(2024年)4月14日(日)より、 学科試験の内容は、「無人航空機の飛行の安全に関する教則 (第3版)」に準拠します。 と発表されました。 詳細は「 【重要!!】無人航空機操縦士・学科試験の内容が、変わります 」にアップしました 教則の読み上げ動画を作成しました 詳しくは 無人航空機の飛行の安全に関する教則 第3版 読み上げ動画 試験の予約・実施スケジュールなど詳しくは下記、指定試験機関の日本海事協会サイトで確認してください 【重要!!】「無人航空機の飛行の安全に関する教則」の改訂に伴う無人航空機操縦士試験における学科試験の内容変更についてのお知らせ – 無人航空機操縦士試験案内サイト  令和6年(2024年)4月14日(日)より 以前に受験される方 については引き続き以下でご覧ください。 「無人航空機の飛行の安全に関する教則」 令和4年(2022年)11月2日第2版【教則学習】 令和5年(2023年)4月13日に改訂された(第3版)については以下にリンクします。 無人航空機の飛行の安全に関する教則(第3版) https://www.mlit.go.jp/common/001602108.pdf 第2版からの変更履歴【参照用】 https://www.mlit.go.jp/common/001602110.pdf 無人航空機の飛行の安全に関する教則(第2版)から(第3版)への変更内容 細かな表現の変更とともに、 「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅢ飛行)」及び「安全確保措置検討のための無人航空機の運航リスク評価ガイドライン」(公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構 福島ロボットテストフィールド発行)の発行に伴う カテゴリーⅢ飛行におけるリスク評価に関する記述の見直し が行われました。5章と6章が大きく変更されています。変更箇所は下記の項目です。 (第 ...

無人航空機(ドローン)のノータム[NOTAM] の 読み方・見方【教則学習・周辺知識】

ノータムとは ノータム【NOTAM ( Notice to Airmen)】:航空従事者への通知 国が管理する航空当局(日本の場合は国土交通省航空局)が、航空従事者に対して発行する情報で、航空機の運航のために必要な情報を提供しています。 「NOTAM」ノータムは、 NO tice T o A ir M en の略称で、日本語に訳すなら「航空従事者へのお知らせ」という事です。航空情報の一つで、飛行場、航空保安施設、運航に関連する業務方式の変更、軍事演習のような危険の存在などについての情報で、書面による航空情報では時宜を得た提供が不可能な(端的にいえば間に合わない)場合にテレタイプ通信回線(CADIN及びAFTN)により配布されるものです。 ノータム【NOTAM (Notice to Air Mission)】:航空任務への通知 アメリカ連邦航空局(FAA:Federal Aviation Administration)は2021年12月2日から、NOTAM の頭字語を、Notice to Airmen から Notice to Air Mission に変更しました。この変更は名称によるジェンダー中立性を保つとともに、より広範囲な分野を包括する事を見据えてより正確な名称にするためのもので、小型無人航空システム (sUAS) 、無人気球など、他のいくつかの分野も含まれるためです。 女性もたくさん活躍している事や、無人機には人間が乗っていません(当然ですが)ので、旧名称の「Airmen」はないだろうという事です。したがって、航空任務への通知( Notice to Air Mission )という名称は、より実態に即した正確な名称に変更されたという事になります。 航空法で定められている「飛行に影響を及ぼすおそれのある行為」と、ノータムへの掲載について詳しい説明を説明しています。 飛行に影響を及ぼすおそれのある行為とノータム(NOTAM)【教則学習・周辺知識】  もよろしければご覧ください。 NOTAM の歴史 NOTAM は、附属書 15:国際民間航空条約(CICA)の航空情報サービスで指定されたガイドラインに基づいて、政府 機関および空港運営者によって作成および送信されます。1947年4 月4日に発効した CICA の批准に伴い一般的に使用されるようになり...

無人航空機の飛行形態「カテゴリーⅢ、Ⅱ、Ⅰ」 と 飛行レベル「レベル1~4」

無人航空機の法改正が続きドローンの規制や、操縦資格など、新しい制度が、作られる過程で、様々な飛行ケースを表す言葉として、「カテゴリーⅢ、Ⅱ、Ⅰ」や「レベル1、2、3、4」といった用語を目にすることが、多くなりました。「ドローンを「レベル4」で初飛行」とニュースで大きく報じられました。このように「レベル4」がなぜ画期的な事なのか、またそもそもこのレベルとは、何を表しているのか、改めて整理してみたいと思います。余談になりますが、法改正のタイミングで、ニュースなどでも、同じタイミングで取り上げられていたこともあり、全く別なのですが、自動車の自動運転に関する自動運転レベル(こちらはレベル0~5で表される)などと、混同してしまいそうです。 無人航空機の飛行レベル は飛行する条件をリスクに合わせてレベル分けしたカテゴリで、レベルが上がるほど、安全性リスクが増すものです。そのため、飛行レベルの高い飛行を行う場合は、より安全性に配慮した飛行が求められることになります。したがって、自律飛行(自動運転)もリスクを伴うものですが、自動車の自動運転ほどの精密な位置制御が必要ないであろうドローンの場合、他のリスク要因(目視外の飛行)と比較してさほど高くならないという事でしょう。したがって、この飛行レベルは自律飛行(自動運転)について語られている物ではく、自律飛行(自動運転)についての要素は入っていません。きわめて極端に言えば、空には道路もなく、歩行者もいない。(落とさなければいいだけ)という事ができると思います。また、有人航空機では、オートパイロットなど自動操縦の技術がすでにあることも、自動運転のリスク認識が、高くない一つの要因かもしれません。 2023年3月24日に日本国内で初めてレベル4飛行が実施されたニュースが流れましたがこれらのニュースの見出しでも「自動ドローン」や「自動飛行」などの見出しがいくつかありました。確かに、あらかじめルートや高度をプログラムして飛行させれば、自動と言えるのでしょうが、レベル4飛行を報じるのにはやや適切でない印象をうけました。手動だろうが自動だろうがレベル4の飛行はあるわけですし、ましてやドローンが状況判断をして自律飛行しているわけでもないですし。問題にすべきポイントがズレて伝わってしまう可能性があると思います。改めて、 無人航空機の飛行レベルは、自動操縦の...

自己紹介

ノーマン飛行研究会
2015年 首相官邸ドローン事件があった年、トイドローンを手にして以来ドローンと関わっています。JUIDAの無人航空機安全運航管理者、操縦技能証明とドローン検定協会の無人航空従事者試験1級 を取得しております。無線関連の第1級陸上特殊無線技士も取得しております。 できるだけ正確に学んだことを綴って行きたいのですが、もし間違いなどありましたらご指摘いただけると嬉しいです。 このサイトはリンクフリーです。報告の必要ありません。リンクして頂けると喜びます。
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