数字で見る地球の位置 緯度経度の仕組み ラテロンの話
2025年3月25日
2025年4月1日

グーグルマップで緯度経度(ラテロン)を調べる
グーグルマップで検索窓(赤丸の部分)に緯度経度や施設名などを入力すると地図内にピンを立てて表示します。地図をクリックすることで地図上の位置(緯度経度)が地図左側の赤の四角で囲っている部分に緯度経度が表示されます。
緯度・経度(ラテロン)の使用目的と重要性
緯度・経度は、無人航空機(ドローン)の運航において重要な位置情報を提供します。その主な利用場面には、無人航空機の現在地を正確に示すこと、飛行計画の立案、飛行日誌への記録、DID(人口密集地)エリアの確認、緊急用務空域の公示などがあります。また、複数の緯度・経度でエリアを示したり、緯度・経度から半径〇メートルの円で示したりすることがあります。
緯度・経度は、地球上のあらゆる地点を正確かつ一意に特定できる座標システムであり、航空分野において不可欠な情報源となっています。特に、無人航空機の運航においては、位置情報の正確な把握と記録が安全で効率的な飛行に欠かせません。緯度経度(ラテロン)とは
緯度経度は、地球上の位置を数値的に表現するための重要な座標系です。この地理学的経緯度システムは、南北方向を示す緯度と東西方向を示す経度という2つの要素で構成されています。
緯 度 [Latitude ]
緯度は赤道を基準(0度)として南北に±90度まで広がり、北極と南極がそれぞれ北緯90度、南緯90度となります。この角度は、ある地点に接する線と地球の回転軸(地軸)との角度を表しています。緯度は一般的に「lat」と省略されます。
経 度 [Longitude]
経度は、イギリスのロンドンにある旧グリニッジ天文台を通る本初子午線を基準(0度)とし、東回りを東経、西回りを西経と呼んでいます。東西にそれぞれ180度まで広がります。東経180度と西経180度は同じ場所を示します。東経180度と西経180度は同一地点を示します。経度は「lon」または「lng」と省略され、ある地点を通る子午線と本初子午線との角度を表します。緯度経度を合わせて「ラテロン」(LatLon/LatLong)と呼ぶこともあります。
緯度は北緯(N)が正の値、南緯(S)が負の値で表され、経度は東経(E)が正の値、西経(W)が負の値で表されます。一般的に座標を記載する際は緯度を先に、経度を後に記述します。これらの表記方法の違いを理解することは、表記形式を誤認してしまうと全く異なる場所を示してしまう可能性があるので、非常に重要なことがわかると思います。
アメリカ ニューヨーク 自由の女神像
40.68970421762367, -74.04433341589422
緯度・経度の表し方
緯度経度の表記方法には主に2つの形式があります。
例えば、東京タワーの座標で表現の違いを比較してみます。
ただし、どの地点を基準にするかで緯度・経度は異なります。東京タワーの脚の間隔だけでも約90m四方あるため、一般的に示される緯度・経度も若干異なる場合があります。
余談になりますが、広いエリアの座標を示す際には、単一の座標ではなくエリアの隅にあたるポイントを複数示すことで、範囲全体を表す方法が用いられることもあります。
東京タワーの緯度・経度 北緯35度39分30.9秒 東経139度44分43.5秒 35.65858333333333N,139.74541666666667E
まず、
DMS[Degree Minute Second]表記(度分秒表記)は、度(°)、分(′)、秒(″)を用いる60進法で、分と秒は時間と同じように60進法になっています。1分は1度の1/60、1秒は1度の1/3600であり、1秒は1分の1/60に相当します。緯度と経度の「度(°)」値はそれぞれ±90°と±180°に制限されます。(北緯90°以上は南緯で示し、東経180°以上は西経で示します)分の表記は「′」(プライム記号)、または「分」、秒の表記は「″」(ダブルプライム記号)、または「秒」で表します。ただし、プライム記号の代わりにシングルクォーテーション(')やアポストロフィ(’)、ダブルプライム記号の代わりにダブルクォーテーション(")が使用される場合もあります。
例えば「北緯35度39分30.9秒」、「北緯35度39分30秒9」や「35°39′30″9」のように表します。
もう一つは、
DEG[Degree]表記(DD[Decimal Degrees]表記、十進度表記)で、度のみを用いて10進法で表現します。DDと略される (デシマルとディグリー)はデシマル「.」 ディグリー「°」の通り小数点と度で表現するものだということです。「度(°)」値はDMS表記(度分秒表記)と同様に、それぞれ±90°と±180°に制限されます。
例えば、上記のDEG表記は「北緯35.658584度」または「35.658584°N」のように表されます。この形式は特にインターネットGIS※(WebGIS)やOpenStreetMap、GPSデバイスなどで広く使用されています。
※GIS(ジー アイ エス)とは、Geographic Information System の略称で日本語では地理情報システムと訳されます。これは地理的位置を手がかりに、位置に関する情報を持ったデータ(地理空間情報)を総合的に管理・加工し、視覚的に表示し、高度な分析や迅速な判断を可能にする技術です。
DEG[Degree]表記(DD[Decimal Degrees]表記、十進度表記)で、度のみを用いて10進法で表現します。DDと略される (デシマルとディグリー)はデシマル「.」 ディグリー「°」の通り小数点と度で表現するものだということです。「度(°)」値はDMS表記(度分秒表記)と同様に、それぞれ±90°と±180°に制限されます。
例えば、上記のDEG表記は「北緯35.658584度」または「35.658584°N」のように表されます。この形式は特にインターネットGIS※(WebGIS)やOpenStreetMap、GPSデバイスなどで広く使用されています。
※GIS(ジー アイ エス)とは、Geographic Information System の略称で日本語では地理情報システムと訳されます。これは地理的位置を手がかりに、位置に関する情報を持ったデータ(地理空間情報)を総合的に管理・加工し、視覚的に表示し、高度な分析や迅速な判断を可能にする技術です。
GISと地理空間情報は「システム」と「データ」の関係にあります。地理空間情報は位置情報を持つデータそのものであり、GISはそのデータを管理・分析・表示するためのシステムです。この関係は相互依存的で、質の高い地理空間情報がなければGISは十分に機能せず、逆にGISによる適切な処理がなければ地理空間情報の価値を最大限に引き出すことができません。両者は車の両輪のように補完し合う関係にあり、一方だけでは十分な効果を発揮できないのです。
地理空間情報とは、空間上の特定の地点または区域の位置を示す情報(位置情報)とそれに関連付けられた様々な事象に関する情報、もしくは位置情報のみからなる情報を指します。具体的には、土地利用図、地質図、ハザードマップなどの主題図、都市計画図、地形図、地名情報、台帳情報、統計情報、空中写真、衛星画像など、地域における自然、災害、社会経済活動に関する多様な情報が含まれます。
地理空間情報の特徴は、位置情報をキーにして異なるデータを重ね合わせることで分析等の活用が可能になることです。そのためには、様々な主体によって整備されるデータ間で位置情報の整合性が取れていることが必要です。この整合性を確保するために、地理空間情報を空間上の位置に対応づけるための基準となる基盤地図情報の整備・更新・提供が重要な役割を担っています。
基盤地図情報
基盤地図情報とは、地理空間情報活用推進基本法第2条第3項で定義された電子的な地理空間情報です。具体的には「地理空間情報のうち、電子地図上における地理空間情報の位置を定めるための基準となる測量の基準点、海岸線、公共施設の境界線、行政区画その他の国土交通省令で定めるものの位置情報(国土交通省令で定める基準に適合するものに限る。)であって電磁的方式により記録されたもの」を指します。この基盤地図情報が活用されることで、地理空間情報の相互活用が容易になります。
GISの主な提供形態
デスクトップGIS(スタンドアロンGIS)
デスクトップGISは個々のコンピュータにインストールして使用するアプリケーションで、以下の特徴があります:
- ユーザーのコンピュータに直接インストールして使用
- 高度な分析機能や編集機能を搭載
- 大量データの処理能力に優れている
- オフライン環境でも利用可能
- 代表例:ArcGIS Desktop、QGIS、MapInfo Professional
デスクトップGISは専門的な空間分析や詳細な地図制作など、高度で複雑な処理を必要とするGIS業務に適しています。
WebGIS
WebGISはウェブブラウザを通じてアクセスできるGISサービスで、GoogleマップなどのWeb地図もその一種です。主な特徴は:
- 特別なソフトウェアのインストールが不要
- 複数ユーザーによる同時アクセスと情報共有が容易
- サーバー側での処理によりクライアント側の負荷が軽減
- 一般的にはデスクトップGISより機能が限定的だが近年は高機能化が進行
- 開発基盤例:Google Maps API、ArcGIS Online、Leaflet、OpenLayers
WebGISは一般ユーザーへの情報提供や関係者間での地理情報共有に適しており、自治体のハザードマップや施設案内、不動産サイトの物件検索マップなどがその例です。
GISの利用形態の多様化
業務や目的に応じて、データ作成・編集・高度な分析にはデスクトップGISを、情報公開・共有・簡易な検索・閲覧にはWebGISを使い分けるのが一般的です。
最近ではデスクトップGISの高度な機能とWebGISのアクセシビリティを組み合わせたクラウドGISや、スマートフォン・タブレット向けのモバイルGISも普及してきており、GISの利用形態はますます多様化しています。
DMS表記とDEG表記はそれぞれどちらの値から計算によって求める(変換する)ことが出来ます。計算方法は以下の通りです。
実務上の注意点
度分秒表記を使用する際は、方位の表記(N/S/E/W)を付記し、秒以下の小数点は用途に応じて適切な桁数を設定する必要があります。国際標準(ISO 6709など)に準拠した表記も推奨されています。
座標変換を行う際は、DMS⇔DD変換時の精度維持や、測地系間の変換における誤差に注意が必要です。変換ソフトウェアやツール使用する場合は信頼性の高いものを使用することが重要です。
実務上の注意点
度分秒表記を使用する際は、方位の表記(N/S/E/W)を付記し、秒以下の小数点は用途に応じて適切な桁数を設定する必要があります。国際標準(ISO 6709など)に準拠した表記も推奨されています。
座標変換を行う際は、DMS⇔DD変換時の精度維持や、測地系間の変換における誤差に注意が必要です。信頼性の高い変換ソフトウェアやツールの使用が重要です。
2つの表記の実用的な価値
度分秒表記は、従来の航法装置や地図作製システムとの互換性を保ち、歴史的な測量データとの整合性を維持する役割を果たしています。また、人間が直感的に理解しやすい体系であり、概算位置の把握が容易で、従来の紙媒体の地図との親和性も高いという実用的な利点があります。
近年ではGPSなどのデジタル機器の普及により、計算が容易な十進度表記も広く使用されるようになっていますが、両システムはそれぞれの利点を活かして用途に応じて使い分けられています。GPSやGoogle Mapsなどの現代的なツールは、両方の表記に対応しており、航空、海運、登山など異なる分野での活用に役立っています。
DMS表記とDEG表記の変換アルゴリズム
【DMS表記 → DEG表記】
【例】北緯35度39分30.9秒 東経139度44分43.5秒
「139度44分43.5秒」を10進数に変換する。
「35度39分30.9秒」を10進数に変換する。
「35°39'30.9"」
「度」はそのまま → 35
「分」を60で割ります → 39 ÷ 60 = 0.65
「秒」を3,600(÷60÷60の意味)で割ります → 30.9 ÷ 60 ÷ 60 = 0.00858333…
計算結果を足します。
35 + ( 39 ÷ 60 ) + ( 30.9 ÷ 60 ÷ 60 )
35 + 0.65 + 0.008583 ≒ 35.658583°
「139°44'43.5"」
「度」はそのまま → 139
「分」を60で割ります → 44 ÷ 60 = 0.73333333…
「秒」を3,600(÷60÷60の意味)で割ります → 43.5 ÷ 60 ÷ 60 = 0.01208333…
計算結果を足します。
139 + ( 44 ÷ 60 ) + ( 43.55 ÷ 60 ÷ 60 )
139 + 0.73333333 + 0.01208333 ≒ 139.745417°
したがって北緯 35.658583度 東経 139.745417度
したがって北緯 35.658583度 東経 139.745417度
【DEG表記 → DMS表記】
【例】北緯 35.658583度 東経 139.745417度
「35.658583」を 60進数(度・分・秒)に変換する。
度 = 整数のみを取り出す → 35
分 = 小数点以下を取り出し、60 を掛け、整数部分を取り出す。
0.658583 × 60 = 39.51498 → 39
秒 = 分での計算の小数点以下を取り出し、60 を掛ける。
0.51498 × 60 = 30.8988
度・分・秒を組み合わせる
「35度 56分 30.8988秒」
「139.745417」を 60進数(度・分・秒)に変換する。
度 = 整数のみを取り出す → 139
分 = 小数点以下を取り出し、60 を掛け、整数部分を取り出す。
0.745417 × 60 = 44.72496 → 44
秒 = 分での計算の小数点以下を取り出し、60 を掛ける。
0.72502 × 60 = 43.5012
度・分・秒を組み合わせる
「139度 44分 43.4977秒」
したがって北緯 35度 56分 30.8988秒 東経 139度 44分 43.4977秒
したがって北緯 35度 56分 30.8988秒 東経 139度 44分 43.4977秒
上記の計算でもわかると思いますが、小数点以下6桁目が1違うと変換後の秒の小数点以下の印象が違う感じになります。変換するために掛け算をするのでこのようになります。
循環小数などで四捨五入するか、切り捨てるのかなどでこの位の差が出る可能性があります。
139.745416度 → 139度 44分 43.4976秒
139.745417度 → 139度 44分 43.5012秒
DMS表記とDEG表記の変換をWEBで行う
Web版TKY2JGD
Web版TKY2JGDは、「旧日本測地系」に準拠した座標値を、世界測地系「日本測地系2000」の座標値に座標変換する国土地理院のWeb版のソフトウェアです。本来の使い方ではないのですが、DMS表記とDEG表記の変換を行うことが出来ます。上記の図のようにDMS表記の緯度・経度を入力し、その下の10進法度単位のラジオボタンをクリックしますと、表示がDEG表記の緯度・経度に変化します。逆にDEG表記の緯度・経度を入力し、下の度分秒のラジオボタンをクリックしますと、表示がDMS表記の緯度・経度に変化します。
変換計算できるサイトはたくさんありますが、どの様に計算されているかわからないので、国土地理院のWebという事で信頼出来るものとして利用しています。
緯度経度(ラテロン)表記のバリエーション
353930.9N/1394443.5EN35-39-30.9 E139-44-43.5
35°39'30.9"N/139°44'43.5"E
これらの表記はすべて同じ地点の緯度経度を示しています。様々な公式文書でこのような異なる表記方法が使われていますが、それぞれの表記から同じ位置情報を読み取ることができます。
この緯度経度は北緯35度39分30.9秒、東経139度44分43.5秒を表しています。3つの表記方法を見てみましょう:
「353930.9N/1394443.5E」は数字を連続させた簡略表記で、N(北緯)とE(東経)の記号で方位を示しています。
「N35-39-30.9 E139-44-43.5」はハイフンで度・分・秒を区切り、N(北緯)とE(東経)を先頭に配置した表記です。
「35°39'30.9"N/139°44'43.5"E」は度(°)、分(')、秒(")の記号を使用した最も一般的なDMS(度分秒)表記で、方位をN(北緯)とE(東経)で示しています。
DMS表記とDEG(10進度)表記は小数点の位置で判別できます。DMS表記では秒の桁に小数点が付く(または付かない)のに対し、DEG表記では度の桁の後に小数点が来ます。例えば、上記の位置をDEG表記すると「35.658583N/139.745416E」となり、小数点が「35度」「139度」の直後にあることでDEG表記と判断できます。
どの表記形式を使用しても、必要な情報(度、分、秒、方位)がすべて含まれているため、正確な位置を特定することが可能です。
日本の緯度・経度の基準について
日本の緯度・経度の基準となる「経緯度原点」は東京都港区麻布台の中央官庁合同会議所敷地内にあり、子午環の中心点に位置しています。に位置しています。この場所はかつて東京天文台(元海軍観象台)があり、明治時代から精密な天文観測が行われ、日本における絶対的な位置の基準点として機能してきました。
現在も測量法により、
日本における地理学的経緯度を決定するための基準点であり、測量法施行令(昭和24年政令第322号)第2条第1項においてその数値が法的に公式な原点の一つとして明確に定められています。具体的な位置は以下の通りです
日本における地理学的経緯度を決定するための基準点であり、測量法施行令(昭和24年政令第322号)第2条第1項においてその数値が法的に公式な原点の一つとして明確に定められています。具体的な位置は以下の通りです
- 所在地:東京都港区麻布台2丁目18番1地内
- 標識:日本経緯度原点金属標の十字の交点
- 座標(世界測地系):東経139度44分28秒8759、北緯35度39分29秒1572
測量法施行令 第2条 測量法施行令 | e-Gov 法令検索
(日本経緯度原点及び日本水準原点)第二条 法第十一条第一項第四号に規定する日本経緯度原点の地点及び原点数値は、次のとおりとする。一 地点 東京都港区麻布台二丁目十八番一地内日本経緯度原点金属標の十字の交点二 原点数値 次に掲げる値
イ 経度 東経百三十九度四十四分二十八秒八八六九
ロ 緯度 北緯三十五度三十九分二十九秒一五七二
ハ 原点方位角 三十二度二十分四十六秒二〇九(前号の地点において真北を基準として
右回りに測定した茨城県つくば市北郷一番地内つくば超長基線電波干渉計観測点金属@標の十字の交点の方位角)
2 法第十一条第一項第四号に規定する日本水準原点の地点及び原点数値は、次のとおりとする。
一 地点 東京都千代田区永田町一丁目一番二地内水準点標石の水晶板の零分画線の中点
二 原点数値 東京湾平均海面上二十四・三九〇〇メートル
(長半径及び扁へん平率)
第三条 法第十一条第三項第一号に規定する長半径及び扁へん平率の政令で定める値は、次のとおりとする。
一 長半径 六百三十七万八千百三十七メートル二 扁平率 二百九十八・二五七二二二一〇一分の一
日本経緯度原点の歴史的変遷
1892年(明治25年)、東京天文台の子午環の中心が日本経緯度原点として正式に定められました。しかし、1923年(大正12年)の関東大地震により子午環が崩壊したため、原点の位置に金属標が設置されました。
2001年(平成13年)には測量法が改正され、日本は測量の基準として世界測地系を採用することになりました。この改正により、金属標の十字の交点が日本経緯度原点の地点として定められ、その経度、緯度および方位角の数値は、超長基線電波干渉計(VLBI)や全球測位衛星システム(GNSS)などの宇宙測地技術を用いて高精度に決定されました。
さらに、2011年(平成23年)の東北地方太平洋沖地震の影響による地殻変動が観測されたため、同年10月21日に経緯度原点の座標値が改定されました。
しかし、平成13年(2001年)12月に測量法が改正され、2002年4月からは国際標準である「世界測地系」(測地成果2000)へと移行しました。この変更に伴い、経緯度原点の緯度・経度の値も修正されています。
日本独自の旧測地系から国際標準の世界測地系への移行により、古い地図や測量データを使用する際には両者の相互変換が必要となります。これは日本の測地系が世界の標準と統一されることで、国際的な位置情報の互換性が向上し、衛星測位システムなどの新技術との整合性が確保されるためです。
日本測地系と世界測地系の違いと相互変換の必要性
日本測地系と世界測地系の間で相互変換が必要となる根本的な理由は、両者が採用している準拠楕円体(地球の形状を数学的に表現するモデル)が異なるためです。旧日本測地系ではベッセル楕円体を使用していましたが、世界測地系では国際的な標準であるGRS80楕円体(または同等のWGS84)を採用しています。これらの楕円体モデルでは、地球の大きさや扁平率などの基本的なパラメーターが異なるため、同じ物理的位置であっても測地系によって座標値が異なります。
かつては最先端の測量技術で構築された日本測地系ですが、超長基線電波干渉計(VLBI)や人工衛星を用いた高精度な地球規模の観測技術の進歩により、日本測地系が地球全体の形状に十分に適合していないことが明らかになりました。対照的に、世界測地系は最新の観測技術によって明らかとなった地球の正確な形状と大きさに基づいて構築されており、国際的な位置情報の標準として採用されています。
両測地系の違いは実際の位置表示に大きな影響を与えます。例えば、東京付近では、日本測地系の座標を世界測地系で表すと、経度が約12秒減少し、緯度が約12秒増加します。これは距離に換算すると北西方向へ約450メートルものずれが生じることになります。この差異は、GPS等の衛星測位システムを使用する現代において、地図情報と実際の位置情報の不一致という形で問題となります。
このような理由から、古い地図や測量データを現在の世界標準と照合する際には、適切な変換処理が必要となります。測量法の改正により世界測地系への移行が進められ、現在では国際標準と一致した位置表示が可能になっています。
地球の大きさや形状の定義
測地系を構成する重要な要素として、地球の大きさと形状があります。
準拠楕円体
地球の表面には山や谷があり凹凸がありますが、これをそのまま基準にすると測量が複雑になるため、シンプルな形状にモデル化されています。準拠楕円体(地球楕円)は、地球の形状をジオイド面に近い楕円体としてモデル化したものです。
各測地系で採用している楕円体は異なり、日本測地系で採用されていたベッセル楕円体の場合、長半径(赤道半径)は6,377,397.155m、扁平率は1/299.152813です。一方、現在の世界測地系で広く使われているGRS80楕円体では、長半径は6,378,137m、扁平率は1/298.257222101と定義されています。
準拠楕円体 | 長半径 | 扁平率 |
---|---|---|
ベッセル楕円体 | 6,377,397.155m | 1/299.1528128 |
GRS80楕円体 | 6,378,137m | 1/298.257222101 |
WGS84 | 6,378,137m | 1/298.257223563 |
ジオイド面
ジオイド面とは、地球の表面が海洋に覆われており、その水が重力や遠心力に逆らわずに地球を覆ったと仮定した場合の海洋面の形状を指します。簡単に言えば、凹凸のある地球の形状を滑らかにモデル化したものです。
日本では、ジオイドと東京湾平均海面は一致すると考えられており、東京湾の平均海面を標高0mと定義して日本の土地の高さ(標高)が測定されています。この東京湾平均海面を地上に固定するために設定された日本水準原点は、東京湾の平均海面上24.3900mと定義されています。
ジオイド面自体にも不規則な起伏があるため、さらにシンプルなモデルとして準拠楕円体が考案されました。
測地系と座標系の違いと日本で使用される世界測地系
測地系と座標系の違い
測地系と座標系は密接に関連していますが、異なる概念です。測地系は地球上の位置を緯度・経度・標高を使って示す基準であるのに対し、座標系は平面や空間での位置を示す際に、原点や座標軸などによって位置を定める基準を指します。座標系では「原点をどこに設定するか」「座標の単位をどうするか」といったルールに従って位置を表現します。
代表的な座標系には以下のようなものがあります。
緯度経度座標系
地球上の特定の位置を緯度と経度で表す地理座標系です。緯度・経度は地球中心からの角度を「度・分・秒」の単位で表現します。
平面直角座標系
地球を2次元の平面上に投影し、XY座標で表現する投影座標系です。日本では公的測量で広く使用されており、特に狭い範囲の測量や大縮尺地図の作成に適しています。国土地理院によって日本全国が19の区域に分類されており、それぞれの適用区域ごとに計番号が異なる特徴があります。
測地系について
測地系とは、地球上のある地点の位置を緯度・経度・高さで表すための座標基準です。地球の形状、大きさ、座標原点などの要素から構成され、基準点からの測定座標が測地系に該当します。各国には独自の基準点があり、日本の場合も時代とともに変化してきました。測地系は位置情報の基盤として、大規模工事、測量、土地管理、地図制作など様々な分野で活用されています。
測地系の種類
測地系は大きく分けて世界測地系と日本測地系の2種類があります。
世界測地系
世界測地系は国際的に定められた測地系で、地球全体に適合性があることから日本でも採用されるようになりました。現代では人工衛星や超長基線電波干渉計(VLBI)などを用いて、地球規模での高精度な観測が可能です。例えばVLBIでは天体からの電波を利用して、数千km離れたアンテナ間の位置を数mmの誤差で測定できるほど精度が高くなっています。こうした高度な観測データに基づいて測量されるのが世界測地系です。
日本測地系
日本測地系は日本独自の基準点で構成された測地系で、2002年の測量法改正まで日本の測量の基準として使用されてきました。この測地系では、地球の形をベッセル楕円体としてモデル化し、天文観測によって定められた緯度・経度原点と原方位角を基準に測定しています。
ベッセル楕円体はドイツの天文学者ベッセルが定義した楕円体モデルで、地球が自転による遠心力で楕円形になっているという考えに基づいています。また、明治時代に正確な地形図作成を目的として全国に緯度経度の基準点網が整備され、東京天文台(現在の旧国立天文台跡地)の位置が日本測地系における経緯度原点と定められました。
日本で用いられる世界測地系の種類
世界測地系は各国で採用されていますが、国ごとに使用されている種類が異なります。日本では主に以下の3種類の世界測地系が使用されています。
現代では、WGS84(World Geodetic System 1984)が国際標準の測地系として広く採用されています。日本ではJGD2011などの独自の測地系も使用されています。
度分秒表記における距離の目安として、1度は赤道上で約111.32km、極地方で約111.13kmです。1分は約1.85km、1秒は約30mとなります。ただし、経度の距離は緯度によって変動し、緯度が高くなるにつれて短縮します。
地球は完全な球体ではなく扁平な楕円体であるため、緯度による距離の変化や高度による補正が必要です。WGS84では赤道半径約6,378km、扁平率1/298.257223563と定義されています。
日本測地系2000(JGD2000)
測量法と水路業務法の一部改正に伴い、2002年4月から使用が開始された世界測地系です。準拠楕円体としてGRS80楕円体を採用しており、座標系については日本独自の基準だった旧日本測地系から国際的なITRF94座標系へと移行しました。
日本測地系2011(JGD2011)
東日本大震災による地殻変動の影響を受け、国土地理院が2011年10月に新たな測地成果を発表したことから構築された測地系です。2012年の測量法改正に伴い、日本測地系2000から日本測地系2011への移行が行われました。
準拠楕円体は2000と同様にGRS80を採用していますが、座標系については大きな変更がありました。東日本と北陸地方はITRF2008を、それ以外の地域はITRF94座標系を採用しています。また、ジオイド面の基準も「日本のジオイド2011」に更新されています。
WGS84(World Geodetic System 1984)
WGS84はアメリカで構築された世界測地系で、主にGPSの運用に使用されています。準拠楕円体としてWGS84楕円体を採用しているのが特徴です。
座標系については海域の測地系ではWGS84が標準とされていますが、陸地を精密に測量する場合はITRF系の使用が推奨されています。日本測地系2011とWGS84は、準拠楕円体や座標系の種類に違いがありますが、その差はわずかであるため、実用上はほぼ同じものとして扱うことができます。
測量基準が日本測地系から世界測地系に改正された背景
日本では長期にわたり独自の測地系が使用されてきましたが、2002年4月から測量法が改正され、基本測量や公共測量では世界測地系を用いることが義務付けられました。この改正の主な背景には以下の要因があります。
- 基準点網のひずみ:明治時代から現代にかけて測量技術や機器の性能が向上し、より正確な測量が可能になりました。また、約100年間の地殻変動の影響で日本列島の位置にずれが生じています(例:東京から見た札幌は西に約9m、福岡は南に約4mずれている)。
- GPS・GISの普及:位置情報測定や利用技術の急速な普及により、世界共通の基準での高精度な測量が求められるようになりました。
これらの技術進歩や時代変化に対応するため、測量法が改正され日本測地系から世界測地系への移行が行われました。
日本測地系と世界測地系の相互変換について
準拠楕円体のパラメーター定義の違いにより生じる経緯度のズレは、適切な相互変換によって補正することができます。この相互変換には、簡易計算式と高度計算式という2つの方法があります。
簡易計算式による変換
簡易計算式では、日本測地系と世界測地系の経緯度の差を数式で表し、その値を加減することで相互変換を行います。ただし、この方法はあくまで簡易的なものであり、数メートル程度の誤差が生じるため、高精度を要求される場面での使用には適していません。
日本測地系から世界測地系への変換式
世界測地系緯度 = 緯度(日本測地系) - 0.00010695 × 緯度(日本測地系) + 0.000017464 × 経度(日本測地系) + 0.0046017
世界測地系経度 = 経度(日本測地系) - 0.000046038 × 緯度(日本測地系) - 0.000083043 × 経度(日本測地系) + 0.010040
世界測地系から日本測地系への変換式
日本測地系緯度 = 緯度(世界測地系) + 0.00010696 × 緯度(世界測地系) - 0.000017467 × 経度(世界測地系) - 0.0046020
日本測地系経度 = 経度(世界測地系) + 0.000046047 × 緯度(世界測地系) + 0.000083049 × 経度(世界測地系) - 0.010041
これらの計算式を用いることで、一般的な用途においては十分な精度での測地系間の変換が可能となります。ただし、測量や建設など高い精度が求められる専門的な場面では、より複雑な高度計算式を用いる必要があります。
高精度計算式による測地系変換
より高い精度での日本測地系と世界測地系の相互変換が必要な場合は、高精度計算式を使用する方法があります。この高精度な変換を簡単に行えるツールとして、国土地理院が提供している「Web版 TKY2JGD」が利用できます。
このオンラインツールの使い方は非常に簡単です。ユーザーは以下の手順で変換を行うことができます。
- 変換の方向(日本測地系から世界測地系へ、または逆方向)を選択します。
- 変換したい地点の座標を入力します。入力方法は2種類あります。
- 経緯度または平面直角座標を直接入力する方法
- ツール下部に表示される地図上で位置を直接クリックして自動入力する方法 - 「計算実行」ボタンをクリックすると、自動的に変換結果が表示されます。
このツールを利用することで、専門的な測量知識がなくても、高精度な測地系間の座標変換が可能になります。測量や建設、地図作成など精密な位置情報を必要とする業務において特に有用です。
グーグルマップなどの地図サイトで緯度経度(ラテロン)を調べる
フライトプランの作成時、DIDの確認などの作業と一度に行う事が多いのでこちらにメモしておきます。
マップ下部(赤カコイの箇所)の数字(緯度経度)をコピペすると
比較的容易に希望場所を厳密に設定することができます。
比較的容易に希望場所を厳密に設定することができます。
左上のマップの検索エリアに緯度経度を入力することで表示できます。
無人航空機の「飛行日誌」の作成と記載方法 書式のダウンロード(令和4年12月5日施行)
DIDエリアの確認の際、ラテロンが必要になる場合があります。
人口集中地区(DID)の新しいデータの確認方法(令和4(2022)年6月25日~)
【余談】緯度経度の度分秒(DMS)表記:歴史的背景
古代バビロニアの60進法
度分秒表記の基礎となる60進法は、古代メソポタミア文明において発展しました。紀元前3000年頃、シュメール人がこの数体系を考案し、バビロニア人に受け継がれました。楔形文字による記録から、バビロニア人が紀元前2000年頃までに60進法を確立し、数学や天文学の分野で使用していたことが確認されています。
60という数字が選ばれた理由は、その約数の多さにあります。1、2、3、4、5、6、10、12、15、20、30、60と多くの整数で割ることができ、分数の計算に非常に便利だったため、日常的な取引や測量にも活用されました。また、天文学では天体の位置や時間の測定においても有用で、特に12という数字が1年の月数や黄道十二星座と関連付けられ、重要視されました。
プトレマイオスの体系化
2世紀頃、古代ギリシャの天文学者クラウディオス・プトレマイオスは、著書『アルマゲスト』で円周を360度に分割する方式を体系的に使用しました。360度という分割は、バビロニアの数体系との整合性に加え、当時の太陽暦が約360日であったこととも関連しています。さらに、天文学や地理学における観測精度を向上させる目的で、度をさらに60分割して「分」、さらに60分割して「秒」とする概念が徐々に発展しました。
ただし、プトレマイオス自身が現代の「分・秒」という単位名称を使用していたわけではありません。当時は単に60進法の補助単位として使用されていたに過ぎず、現在の度分秒表記が確立したのは後の時代のことですが、このプトレマイオスの天文学は、コペルニクスやガリレオの登場までの天文学の基盤となりました。
『アルマゲスト』の影響
『アルマゲスト』は地球中心モデルの宇宙論を詳細に記した画期的な天文学書であり、1,200年以上にわたって西洋およびイスラム世界で天文学の基準として受け入れられました。元々の書名はギリシャ語で「数学大全(Syntaxis Mathematica)」でしたが、その後『大編纂』(Megale Syntaxis)という名で知られるようになります。後にアラビア語に翻訳され、「アルマゲスト」という名称が定着しました。
この書物は全13巻から成り、地球中心説に基づく天体の運動や星の位置を計算する方法を示しています。第1巻では地球中心の宇宙論や球面三角法、第3巻から第6巻では太陽と月の運動や日食・月食の予測方法が詳述されています。また、第7巻と第8巻では恒星のカタログや歳差の概念が紹介されており、これらの知識は中世の天文学の基盤となりました。
緯度経度表記の発展
緯度経度による位置表示の概念は、古代ギリシャの地理学者エラトステネスや天文学者ヒッパルコスの研究に由来します。紀元前3世紀、エラトステネスは地球の円周を測定し、地理的な位置を特定するための基礎を築きました。
さらに、紀元前2世紀のヒッパルコスは、恒星の位置を角度で表した恒星カタログを作成し、これが後の緯度経度表記の先駆けとなりました。彼は天文観測の結果を元に経度と緯度を用いて位置を記録し、現在の地理学の発展に貢献しました。
プトレマイオスは、地理学の著書『地理学』において緯度経度システムを導入しました。彼は既知の地点を緯度と経度で表記し、地図を作成しましたが、精密な秒単位の測定は当時の技術では困難でした。そのため、現代のような精密な緯度経度表記が普及するのは、さらに後の時代になりますが、プトレマイオスの『地理学』における緯度経度の使用は、地球儀や地図作成の進化に重要な役割を果たしました。
大航海時代と度分秒表記の普及
15〜16世紀の大航海時代には、海洋航行における正確な位置測定の必要性が高まり、度分秒表記が実用的に用いられるようになりました。六分儀や天測航法の発展により、天体の高度を測定し、緯度を求める技術が向上しました。経度の測定はより困難でしたが、クロノメーター(精密時計)の開発により、経度の計算精度も飛躍的に向上しました。
このようにして、度分秒表記は航海や海図や地図作製における標準的な表記法として広く採用され、精密な位置表示の基盤が確立されました。海図の精度向上や航海の安全性向上に寄与したました。現代に至るまで、度分秒表記は測量や天文学、航空航法など幅広い分野で使用され続けています。