「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」が 更新されました[R7.3.28更新]
2025年4月15日
2025年4月15日
「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」が 更新されましたR7(2025)年 3月28日付
無人航空機に係る規制の運用における解釈について(R7.3.28付)
前回の更新の詳細は以下にまとめていました。
「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」が 更新されました [R6.11.29更新]
変更のポイント
全体の内容は大きく変わっていませんが、以下の太字部分のように文章が追加されています。
無人航空機の多数機同時運航を安全に行うためのガイドライン (第一版)(R7.3.28付)
https://www.mlit.go.jp/koku/content/001880139.pdf
このように同日、同時に公開されたガイドラインの内容を反映させるものですので、このガイドラインがどのようなものか無人航空機の多数機同時運航に関する安全対策の要約をまとめました。
変更のポイント
全体の内容は大きく変わっていませんが、以下の太字部分のように文章が追加されています。
(6)目視の範囲内での飛行飛行させる無人航空機の位置や姿勢を把握するとともに、その周辺に人や障害物等がないかどうか等の確認が確実に行えることを確保するため、航空法第132 条の86 第2項第2号により、目視により常時監視を行いながらの飛行に限定することとしている。ここで、「目視」とは、操縦者本人が自分の目で見ることをいうものとする。このため、補助者による目視は該当せず、また、飛行状況を専らモニターを用いて見ることまた双眼鏡やカメラ等を用いて見ることは、視野が限定されるため「目視」にはあたらない。なお、安全な飛行を行うためにバッテリー残量を確認する目的等で無人航空機から一時的に目を離し、モニターを確認する等は目視飛行の範囲内とする。操縦者が多数の無人航空機を同時運航する多数機同時運航(以下「多数機同時運航」という。)となる飛行においては、「多数機同時運航を安全に行うためのガイドライン」(令和7 年3 月制定)を参考にしつつ、無人航空機の使用者又は操縦者は、航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれることがないよう安全の確保を自主的に行う必要がある。
無人航空機の多数機同時運航を安全に行うためのガイドライン (第一版)(R7.3.28付)
https://www.mlit.go.jp/koku/content/001880139.pdf
このように同日、同時に公開されたガイドラインの内容を反映させるものですので、このガイドラインがどのようなものか無人航空機の多数機同時運航に関する安全対策の要約をまとめました。
無人航空機の多数機同時運航を安全に行うためのガイドライン 第一版 - 要約
ガイドライン(第一版) の対象範囲
運航形態: レベル3飛行(無人地帯での補助者なし目視外飛行)またはレベル3.5飛行での運航
運航方式: 各機体独立形態(各機体が独立した制御下で飛行する形態)、自動操縦機能の活用が前提
機体と操縦者の比率: 最大1:5までの飛行(操縦者1人に対して無人航空機5機、例:操縦者2人で10機など)
カテゴリーⅡ飛行で個別の飛行許可・承認を必要とする運航が対象
対象外とするもの
レベル1または2飛行に該当する(ドローンショー等)や、先導機のみを制御し他機が追随する形態は対象外
背景と目的
国土交通省航空局安全部無人航空機安全課は令和7年(2025年)3月に「無人航空機の多数機同時運航を安全に行うためのガイドライン 第一版」を策定しました。無人航空機は既に農薬散布、空撮、測量、インフラ点検などの分野で広く活用されており、人手不足や少子高齢化といった社会課題の解決や新たな付加価値創造を実現する産業ツールとして期待されています。
2015年以降、航空法改正により飛行の許可・承認制度、機体の登録制度、機体認証制度・操縦ライセンス制度等が整備され、2023年3月にはレベル4飛行(有人地帯での補助者なし目視外飛行)が実現しました。さらに同年12月には、レベル3.5飛行の制度が創設されています。
こうした中で、無人航空機の事業化や社会実装をより一層進めるためには、少人数で多数の無人航空機を効率的に運航できる「多数機同時運航」の普及拡大が必要とされています。しかし航空法の規制体系では多数機同時運航に特化した安全要件が定められておらず、各事業者が独自に安全対策を講じていました。本ガイドラインは、こうした状況を踏まえ、安全確保と事業推進の両立を目的に策定されたものです。
ガイドラインの対象範囲
第一版では、安全かつ実現可能な範囲として、レベル3または3.5飛行(無人地帯での補助者なし目視外飛行)による各機体独立形態での1:5(操縦者1人に対して無人航空機5機、または操縦者2人に対して無人航空機10機など)までの飛行を対象としています。この上限は、実運航に基づく知見から、操縦者の視認を前提とした監視の限界に近いという判断によるものです。
現在の対象はカテゴリーⅡ飛行のうち個別の飛行許可・承認を必要とする運航としており、機体認証と操縦者技能証明により個別許可が不要となる場合については令和7年度以降の検討対象としています。なお、レベル1または2飛行に該当するドローンショーなどは対象外です。
多数機同時運航の形態としては、「各機体独立制御形態」(各機体が独立した制御下で飛行する形態)を対象とし、先導機のみを制御し他機は追随する形態は対象外としています。
機体、操縦者、運航管理の要件
機体の要件
「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)」の審査要領4-1-1(5)および5-4(1)に適合することが求められており、機体特性に応じたリスク対策を実施する必要があります。
操縦者の要件
多数機同時運航では操縦者に特別な知識と能力が求められます。多数機同時運航固有のリスク(複数の不具合が同時発生する、機体同士が想定外の接近をするなど)や増加するリスク(状況把握不足など)についての知識を持ち、異常が発生した機体への対応と他機の運航監視を両立させる能力が必要です。また、段階的に機体数を増加させる訓練や緊急時対応の訓練も求められます。
運航管理の要件
運航管理面では、組織体制や役割分担の明確化、ヒヤリハット情報の共有体制の構築が必要です。また、運航状況の把握や判断を容易にする操作・監視画面の配置も重要な要件となっています。
運航リスクの検証と対策
本ガイドラインでは、ボウタイ分析というリスク分析手法を用いて、3つの主要な不安全事象とその対策が詳細に示されています:
機体や周辺状況の把握不足:複数機を同時に監視することで情報量が増え、状況把握が困難になるリスクです。これに対して、多数機運航訓練の実施、画面配置の最適化、ポップアップや音声通知の活用、作業量の分散などの予防策と、緊急着陸地点の事前設定などの回復策が示されています。
制御不能等の発生:操縦装置の処理能力超過、通信途絶、GNSS途絶、突風などによるリスクです。電波環境調査や通信冗長化などの予防策と、異常発生時の対応手順明確化や緊急着陸地点設定などの回復策が提案されています。
機体同士の想定外接近:同一地域で複数機を運航する際の相互接近リスクです。飛行ルートの重複確認や十分な離隔設定などの予防策と、自動衝突回避システムの導入などの回復策が挙げられています。
追加マニュアル類
多数機同時運航を安全に行うためには、基本的な飛行マニュアルに加え、運航マニュアル、通常時・緊急時対応手順書、安全管理規程、教育訓練・資格管理マニュアルなどの追加マニュアルが必要とされています。
今後の展望
本ガイドラインは第一版として位置づけられており、今後の運航実績や知見を踏まえて随時見直しが行われる予定です。
現在、安全確認方法は主に「機体に取り付けられたカメラによって人間が安全確認」する手法が一般的です。審査要領ではカメラ以外のデジタル技術を活用する手法も認められていますが、カメラ以外の代替手法の実際の運用事例は限定的であり、安全要件の十分な検討段階には至っていません(2025年3月現在)。
将来的には、機体の自動化・自律化技術の向上により、カメラによる人間の監視に依存しない新たな安全確保手段の発展が期待されています。そうした技術の進展と適切なリスク対策の組み合わせによって、将来的には1人の操縦者あたりの運航可能機体数の増加などの可能性があります。
機体の自動・自律化度合いの向上に応じて機体数の段階的な増加を検討し、より高度な運航形態への対応を進めていくことが示されています。
このガイドラインでは現状の技術レベルを踏まえた暫定的な基準を示していますが、技術発展により監視方法や安全確保の手段が多様化することを想定しています。
無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)
無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)改正について
「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)」が、ガイドラインの内の機体の要件について
「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)」の審査要領4-1-1(5)および5-4(1)に適合することが求められていることに関して抜粋して以下にまとめました。
4-1 無人航空機の機能及び性能
4-1-1 全ての無人航空機 全ての無人航空機の機能及び性能について、次に掲げる基準に適合すること。
(5) 自動操縦により飛行させることができる無人航空機の場合には、上記 (1)~(3) の基準に加え、次に掲げる基準にも適合すること。
- 自動操縦システム(自動操縦により飛行させるためのシステムをいう。以下同じ。)により、安定した離陸及び着陸ができること。
- 自動操縦システムにより、安定した飛行(上昇、前後移動、水平方向の飛行、ホバリング(回転翼航空機に限る。)、下降等)ができること。
- あらかじめ設定された飛行プログラムにかかわらず、常時、不具合発生時等において、無人航空機を飛行させる者が機体を安全に着陸させられるよう、強制的に操作介入ができる設計であること。ただし、飛行中に不具合が発生した際の対応も含め操作介入等を必要としない機能を有する設計であり、かつ、その機能に関しては十分な信頼性(例:飛行のリスクに応じたDAL レベルに相当する信頼性)を有することを製造者が証明できる場合はこの限りではない。
5-4 目視外飛行を行う場合は、次に掲げる基準に適合すること。ただし、無人航空機の機能及び性能、無人航空機を飛行させる者の飛行経歴等、安全を確保するために必要な体制等とあわせて総合的に判断し、航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないと認められる場合は、この限りでない。(法第132条の86第2項第2号関係)
(1) 機体について、次に掲げる基準に適合すること。
a)自動操縦システムを装備し、機体に設置されたカメラ等により機体の外の様子を監視できること。
b)地上において、無人航空機の位置及び異常の有無を把握できること(不具合発生時に不時着した場合を含む。)。
c)不具合発生時に危機回避機能(フェールセーフ機能)が正常に作動すること。 当該機能の例は、以下のとおり。
- 電波断絶の場合に、離陸地点まで自動的に戻る機能(自動帰還機能)又は電波が復帰するまで空中で位置を維持する機能
- GPS等の電波に異常が見られる場合に、その機能が復帰するまで空中で位置を保持する機能、安全な自動着陸を可能とする機能又はGPS等以外により位置情報を取得できる機能
- 電池の電圧、容量又は温度等に異常が発生した場合に、発煙及び発火を防止する機能並びに離陸地点まで自動的に戻る機能若しくは安全な自動着陸を可能とする機能 等
d)補助者を配置せずに飛行させる場合には、a)~ c)の基準に加え、次に掲げる基準にも適合すること。ただし、4-3-2 (3) b)に示す方法により、第三者の立入りを制限することが可能な場合は、この限りではない。 なお、機体認証又は型式認証を取得した無人航空機であって、使用条件等指定書又は無人航空機飛行規程の範囲内で飛行させる場合であっても、次項 イ)以降に掲げる基準への適合性を示す書類を提出すること。
ア)航空機からの視認をできるだけ容易にするため、灯火を装備すること又は飛行時に機体を認識しやすい塗色を行うこと。
イ)地上において、機体や地上に設置されたカメラ等により予定している飛行経路において他の航空機及び無人航空機の状況を随時把握できるものであること。ただし、5-4 (3) c)キ)に示す方法により航空機の確認を行う場合は、この限りでない。
ウ)第三者に危害を加えないことを製造者等が証明した機能を有すること。ただし、5-4 (3) c)オ)に示す方法により立入管理区画を設定した場合で、次のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
(ⅰ)5-4 (3) c)カ)に示す方法により第三者が立ち入らないための対策を行う場合。
(ⅱ)地上において、進行方向の飛行経路の直下及びその周辺への第三者の立ち入りの有無を常に検知できる場合。
(ⅲ)機体に取り付けられたカメラにより進行方向の飛行経路の直下及びその周辺への第三者の立ち入りが無いことを確認できる場合。 なお、設置する地上設備(モニター等)、カメラ及び通信装置等の構成において、カメラからの映像を表示し、進行方向の飛行経路の直下及びその周辺に第三者の立ち入りが無いことを確認できることを事前に確認すること。また、各構成を変更する場合についても、同様の事前確認を行うこと。 加えて、機体に取り付けられたカメラによる進行方向の飛行経路の直下及びその周辺の確認においては、以下の体制を確保すること。
- 使用する機体の性能、取り付けるカメラ装置や地上のモニター装置等の特性、横断する道路等の状況、周囲の地形や障害物件から想定されるリスクを十分に考慮の上、飛行を実施するにあたっての地上及び飛行視程、視程障害、道路等の上空を通過して飛行する際の速度及び高度、通過を決心する際の位置及び高度、通信速度、場所及び飛行の方法に応じて生じるおそれがある飛行のリスクと対策等の運航条件等を事前に定め、設定した運航条件に基づき飛行させる。
エ)地上において、無人航空機の針路、姿勢、高度、速度及び周辺の気象状況等を把握できること。 無人航空機周辺の気象状況等の把握の例は、以下のとおり。
- 無人航空機の制御計算機等で気象諸元を計測又は算出している場合はその状況を操縦装置等に表示する。
- 飛行経路周辺の地上に気象プローブ等を設置し、その状況を操縦装置等に表示する。等
オ)地上において、計画上の飛行経路と飛行中の機体の位置の差を把握できること。
カ)想定される運用により、十分な飛行実績を有すること。なお、この実績は、機体の初期故障期間を超えたものであること。
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